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ワールズダスト ~現世に現れし黒き森~  作者: Hekuto
第二章 異界浸食

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第二百十話 撃墜 前編

 修正等完了しましたので投稿させてもらいます。楽しんで頂けたら幸いです。



『撃墜 前編』


 アメリカでの巨大ドーム被害救援を終えたユウヒは、余計な騒動を経て余計な波風を受けながらも、なんとか帰路についていたのだが、彼は日本へ向かう旅客機の機内にて嫌な予感をひしひしと感じていた。


「・・・誰ですか」

 その為いつも以上に警戒していたユウヒの目は、とある危険物所持者を見つけてしまい、ユウヒの護衛を行う三人は一瞬のうちにその表情を変える。


「あっちの黒髭男性、装弾数は2発ですね」


「駄目でしょうね」


「特製かな? 薬莢まで樹脂だな」

 【探知】の魔法が効果を示す視界で周囲を見渡すユウヒが見つけたのは、アジア系統の顔に真っ黒な髭を生やした男性で、その懐には一切金属が使われていない樹脂製の拳銃に、同じく樹脂で作られた薬莢の銃弾が二つ装填されており、いつでも撃てる準備がされている様だ。


「・・・感付かれない様に注意を払え」


「了解」

 小隊長はユウヒから聞いた内容に何か思い当たる節があるのか目を細めると、後ろの席から身を乗り出す様に耳を向ける二人に静かな声で指示を出し、男性は頷き女性は小さな声で返事を返す。


「嫌な予感はこれかなぁ?」


「予感ですか・・・もしかしたらアメリカ政府側の人間かもしれませんが」

 不穏な情報に警戒レベルを上げる自衛隊員達の一方、ユウヒは未だに納得のいかない表情を浮かべ首を傾げる。そんなユウヒの言動に、小隊長は可能性の一つとしてアメリカ政府の護衛の可能性を示唆した。実際に旅客機に警護の人間が乗り込むことはあるので、可能性としておかしくはない。


「それなら普通に銃所持してそうですが? 実際持ってる人いますし、あっちは明らかに警護っぽいけど」


「・・・夕陽さんの魔法の前じゃ隠れて警護できませんね」

 しかし今回の場合は明らかに不審な銃器を所持しており、警護と思われる者達の方に目を向けたユウヒは、金色の瞳でじっと視線を逸らす男女を見詰める。どうやら後方の席に座る男女のアメリカ人も銃を所持しており、その他にも複数の武器所持者がいる様でユウヒの視線をあちこちにふらつく。


「普段は使わないですよ? 今日は不安だから使ってるだけで」

 いつもと変わらぬやる気の抜けた表情で何でもない事の様に話していたユウヒは、三人からの視線を感じて目を瞬かせると、首を軽く振って普段は今みたいに警戒してないと話し苦笑いを洩らす。


「ほかに何か気が付いたことはありますか?」


「ちょっと調べてみます」


「お願いします」

 怪しく感じ始めれば際限なく怪しく思えてくる状況に、小さく息を吐いた小隊長の依頼により、探知の魔法を周囲に広げていくユウヒ。彼の傍らでは自衛隊員達が今後の方針について小声で話しており、とても日本に着くまで一眠りと言った雰囲気ではない。しかし、ユウヒはそんな状況以上に、自分の中で未だ拭えない違和感に不満そうな表情で首を傾げるのであった。





 異常な勘で迫りくる危機を感じるユウヒと違って、こちらは日本に住む本家本元の異常な勘の持ち主。


「・・・ふふふ」


「どうしたのお母さん?」

 二キロ先からの狙撃も撃ち落とす彼女は、自らでは無くユウヒに迫りくる危機を明確に感じ取っているのか、不敵な笑い声を漏らしながら明日のお弁当用のリンゴを握りしめリンゴジュースに変えていた。そんな母の姿を不思議そうに見ていた流華は、寝間着の襟元を暑そうに緩めながら不思議そうに問いかける。


「ちょっとね・・・」


「何か良い事でもあった?」

 どこか機嫌よさげにも見える母の姿に小首を傾げた流華が、何か良い事でもあったのか問いかけると、明華はニコニコとしたいつも通りの表情でリンゴ汁まみれになった手を拭きつつ、静かな足取りでキッチンからリビングに出てくる。


「そうねぇ? ・・・どうかしらね」


「え、悪い事? ・・・やだなぁ」

 いつもと変わらない雰囲気のはずなのに、どこか冷たい印象のある声で話す母の姿に、流華は予想と逆であると察すると、リビングに置かれた箱からリンゴを取り出す母の背中に、思わず不満と不安の混ざった声を零した。


「悪いとは言わないけど、ちょっとおこかな?」


「・・・・・・!?」

 しかし、流華の言葉に苦笑を洩らした明華は、悪い事とは言い切れないと話しつつも、怒りを覚えるような事態が起きていると話し、どこか古めかしいギャル言葉を口にする。


 そんな若干古くも比較的今どきの若者の様な口調を口にする母の姿に、思わず心の中でツッコミを入れる流華は、次の瞬間母から向けられる鋭い視線に慌てて逃げ出し、リビングと廊下を繋ぐ扉に身を隠すと、そっと不安そうにリビングの方をのぞき込む。


「おかあさんまだ若いわよ?」


「な、なにも言ってないよー!」

 誰にも聞こえるはずのない心の声を明確に言い当ててくる母親の言葉に、このままこの場に居ては怒られると言う未来を感じ取った流華は、否定の言葉を残し慌てて階段を駆け上っていくのであった。


「失礼しちゃうわ、ぷんぷん! ・・・もしもし?」

 リンゴを小脇に抱えてかわいらしく怒りを露わにする明華は、エプロンのポケットから取り出したスマホを耳に当てると、丁度通話を開始した相手に話しかける。


「こっち来る前に一仕事お願いできない?」


「お願いって姐さんのお願いは強制でしょうに・・・」

 明華が仕事をお願いすると、スマホの向こうからはどこか疲れたイケボが聞こえて来た。その声は最近までユウヒと一緒に行動していたものの、アメリカで別れる事となったパイフェンの声であった。


「うふふ」


「・・・それで何するネ?」

 明華のお願い=命令である事は傭兵団にとっての常識の様で、楽しそうに笑う明華の声に溜息を洩らしたパイフェンは、不承不承と言った感情を隠す気のない声で何があったのか問いかける。


「ちょっと羽虫がうるさいからね? ちょちょっと落としてきてほしいのよ」

 ユウヒに最後まで着いて行くつもりだったパイフェンであるが、実のところ彼女はアメリカに行くと逮捕される可能性があり、ユウヒに着いて行くことが出来なかったのだ。しばらくは影から見守っていた彼女であるが、諸事情により一足早く日本に来ており、そんな彼女を夜中に叩き起こしてまで頼みたい事と言うのが羽虫退治だという。


「どこの羽虫です? 殺虫剤ですか? それとも蚊取り線香?」

 内容について特に突っ込むことのないパイフェンは、メモをを取っているのか紙の擦れる音を鳴らしながら羽虫の場所や殺虫方法について問いかける。


「ジェットの効いた殺虫剤でサクッと宜しく、中東の羽虫だけど住んでたのはお隣かしら? いやよねぇ目が覚めたからってブンブン飛び回って」


「えぇ・・・今から間に合うかな? 詳細送ってくれますよね? 場所分からないと殺虫剤も撒けないよ?」

 殺虫内容なんて普通問う必要なく実際に作業を行うものが考えればいいことであるが、当然物騒な彼女たちがただのは虫について話しているわけがない。もし本当には虫が鬱陶しいのであれば専用業者か毒ガス兵器でも散布するところだ。


 そんな彼女たちの話す中東から来た近所の羽虫が何なのか解らないものの、最近目を覚まして急に飛び回り始めたことが鬱陶しいとのことで、これからパイフェンはその羽虫をジェットの効いた殺虫剤で処理しなければいけないらしい。


「ジェニから送らせるわ・・・あともう一つ」


「もう一つ?」

 そんな殺虫作業にはじぇにふぁーも巻き込まれるようで、必要なものは彼女? が送ってくれるようだ。そんな指示を出されたパイフェンが電話口で苦笑していると、明華は少し声を低くしてもう一つと付け加え、付け加えられた言葉よりその声色に嫌な予感を感じた女傭兵は、神妙な声で問い返す。


「ユウちゃんに怪我させたら折檻だからー」


「え! ちょっとどう言うことネ!?」

 聞かされた内容はユウヒについて、まさか今の会話にユウヒが関わってくるなど思いもしなかったパイフェンは、それまでの低い声と違う明るく高い声で話す明華に慌てて問い質したが、時すでに遅く。


「ばいばーい」


「ちょ!? 姐さン? あねさー―――」

 話しはすべて終わったと言った調子の明華は、問答無用とスマホを耳から放して画面をタップする。それまでの声と明らかに違う慌てた声で叫ぶ友人を無視して通話を終わらせた明華は、ニコニコとした目の奥で冷たい光をギラつかせる。


「ユウちゃんだけでも大丈夫だと思うけど、やっぱり親心よね! 帰ってきたらいっぱい甘えさせてあげるからねユウちゃん! うふふフフ・・・」

 彼女が何を感じ取って今の様な状況になっているのか分からないものの、いつも浮かべている笑みが思わず崩れ、その奥から冷酷な表情が現れそうになるのを慌てて取り繕う辺り、相当癪に障る様な何かを視た様だ。


 わざとらしく科を作った彼女は、またもその手でリンゴを握り潰すと、何も見なかったことにして新しいリンゴを用意するのであった。





 一方、遠く日本の地から贈られてきた電波を感じ取ったユウヒは、前方から後方に向かって圧力が増す機内で顔を大きく上げると、


「えっぷし!」

 慌てて顔を手で覆いクシャミを洩らしている。


「寒いですか?」

 上空へ向かって加速と上昇を行う旅客機の機内は、じわりとその気温を下げ、冷房の効いた機内はさらに涼しくなっていく。その事に気が付いた小隊長は、クシャミを洩らすユウヒに声を掛け、毛布を一枚手に取る。


「・・・嫌な予感が増しました」


「え・・・」

 しかし、ユウヒから返ってきた言葉に、小隊長は思わずその毛布を手から取りこぼしてしまう。ユウヒとの短い付き合いの中で、彼の勘の正答率がどれだけ高いか理解せざるを得なかった小隊長にとって、ユウヒの洩らした言葉は聞きたくない部類の予言であり、後ろの座席に座る二人の自衛隊員も、気持ちは同じの様で表情を引きつらせている。


「もう引き返せないですよ?」


「万が一機内で戦闘の場合は我々で取り押さえますけど・・・」

 後ろの座席から身を乗り出す男性が、椅子と椅子の隙間からもう引き返せないと話すと、小隊長は無言で頷き最悪の場合は自衛隊員が動くと約束した。


 この中で最も戦闘能力が高いのは当然魔法が使えるユウヒであるのだが、目立ちたくない、目立たせたくないと言う思いがある彼等にはユウヒを投入する意思は無く、寧ろ過剰戦力なのでもしもの場合が怖いと言い感情が優先されていた。


「・・・機内じゃない気がしてきたんですよね」


「・・・」

 だが、そんな彼らの覚悟を嘲笑うかの様に、ユウヒの勘は斜め上の危機を感じ取る。


「あと、今のところ機内に怪しい物は無いですね」


「そうですか・・・」

 機内で無ければ機外しか考えられず、それは万が一の場合何も出来ないことを示していた。それ故、ユウヒから機内に怪しい物は無いと聞かされた小隊長達は、まったく明るい前向きな気分にはなれないのであった。


「ただ・・・」


「ただ?」

 そんな意気消沈しかけた自衛隊員達の事に気が付かないユウヒは、彼等にさらなる追い打ちかけるかの様に、眉を寄せて妙な表情で口を開く。


「手荷物にパラシュート入れてる人が何人か・・・」


『・・・・・・・・・』


 手荷物にパラシュートを持った人間がいる。もしかしたらスカイダイビングが趣味の人間が手荷物に入れた可能性も無くは無いが、普通に考えてそんな事あり得るわけもなく、使用用途は脱出用であろう。そんな事は考えるまでもなく理解した自衛隊員達は、閉口するとその表情を険しく、そして蒼くする。


「隊長、私まだ死にたくないです。せめて彼氏が欲しかった・・・」


「縁起でもねぇ・・・」

 女性はぶつぶつと悲壮感の伝わる声で呟き、同じくパートナーがいない隣の男性は何かを拝む様に縁起でもないと呟くと頭を抱えた。急にどんよりと曇り始めた後ろの席に目を向けたユウヒが小首を傾げる中、この場唯一の既婚者は困った様に笑い胸ポケットを摩る。


「そうだ! 夕陽くんは年上のお姉さんなんてどう?」

 一様に暗い雰囲気が立ち込める中、何かひらめいた女性は勢いよく顔を上げるとその勢いのまま立ち上がり、独り身であるユウヒの頭上から顔を覗かせると、彼の頭を撫でながら猫なで声で語り掛け始めた。


「やめとけ夕陽がかわいそうだ」


「んだとごら!」


「いで!?」

 ユウヒの背後関係を知っていれば自殺行為に近い行動であるが、切羽詰まった感のある女性にとってそれはどうでも良い事の様だ。そんな女性の隣で話を聞いていた男性は、蒼かった顔を真顔に戻すと、真面目な口調でユウヒが可哀そうだと呟くも、即座に脇腹を蹴られ痛みに思わず叫ぶ。


「・・・はぁ、しかし外部から来ると言う事ですか」

 周囲を気にして静かに取っ組み合いを始める部下に目を向けた小隊長は、どこか安心したような、しかしひどく疲れたようなため息を漏らすと、真剣な表情でユウヒを見て彼の感じた脅威について話し始める。


「んー・・・母さんが何かした気がするので任せてもいいような、いや・・・でも何か起きそうな?」


「困りましたね・・・」

 状況から考えるに、現在旅客機は何者かに狙われており、その攻撃は内部の人間ではなく外部から行われる可能性が高い様だ。知らぬものが聞けば何をと馬鹿にしそうな話し合いだが、この場に居るユウヒの関係者にとって、この話を馬鹿にすることはできなかった。


「まぁ最悪出ますので、機体がバラバラにならなければ大丈夫じゃないですかね?」


「はは・・・」

 いくら目立ちたく無いなどと言っても、死んでは元も子もないわけで、自衛隊員達で対処不可能になればユウヒは構わず動き出すだろう。現在旅客機はアメリカの大地を見下ろし大海原に向けて飛んでおり、そうなればユウヒの行動は特にどこかの国に縛られることもなくなるため、別の意味の危険性も感じて小隊長の口からは乾いた笑い声を洩らしてしまう。


「本当に最後の手段は深き者に助けてもらいますかね? 彼等ならバラバラでも回収出来そうですし」


「・・・・・・」

 さらに最後の手段は深き者達へ救援を送る方法で、その方法をとれるユウヒは気軽に話すが、その結果は大惨事どころでは済まない事は明白であり、出来ればそんな結末は訪れてほしくないと、なぜかニコニコとした笑みを浮かべるユウヒを見詰めた小隊長は、お腹の奥に僅かな痛みを感じるのであった。





 一方、ユウヒが嫌な予感を感じる原因の一つは、着々と準備を進めていた。


「はぁ・・・こんなもんまで置いてたのかよ」

 どこかの飛行場の滑走路で、明華からお願いと言う名の命令を受けたパイフェンは、投光器によって照らし出される巨大な影に呆れた声を洩らしている。そこに鎮座していたのは、全体的に三角形に近い大きな固定翼を持った大型の輸送機で、真っ黒な機体装甲は艶消しの肌が投光器の光を鈍く映す。


「ふふ、イイ女はもしもの為に色々用意しておくものよぉん」


「イイ女関係なくね?」

 呆れる彼女の後ろから現れたじぇにふぁーは、妖艶に笑いながら楽しそうに話し、そんな彼女? の言葉にパイフェンはげんなりとした表情で呟く。人が豆粒に見えそうな飛行機の後部に開いた大きなカーゴドアを見上げる二人は、対照的な表情を浮かべて肩を竦め合う。


「ママー! エンジンおっけーよ!」


「せん・・・殺虫剤の準備もいいよ、薬剤もガスも注入完了」

 そんなカーゴドアの奥から軽い足音を上げて現れたのは、ユウヒを兄と慕う元気な少女と少女にしか見えない少年の二人。太陽の様な笑みを浮かべ駆けてきた褐色少女ファオは頬に黒いオイル汚れを付けて準備完了を知らせ、可憐な少女にしか見えない男の娘であるコニファーは、汚れ一つ見当たらないメイド服を揺らしながら駆けてくると、妙な言い回しで準備の完了を伝える。


「スマートスレンダーねぇ・・・何を想定?」


「中東のコンテナⅢですって、あの国にも参るわよねぇ?」

 コニファーの言う殺虫剤とは、カーゴドアの奥から尾翼をのぞかせる戦闘機の事であり、薬剤と言うのは滑走路にも予備として置かれている細長いコンテナ。その中には小型のミサイルが大量に詰め込まれており、連続してミサイルを打ち出すことが出来る。


 そんな一発の威力より手数を重視したミサイルを使わないといけない相手は、彼等の使うコードネームでコンテナⅢと言う相手の様で、それはじぇにふぁー達プロの傭兵をもってしても困り顔になる相手の様だ。


「最新機じゃないですかやだー」


「やだって言っても仕方ないじゃない? 来るんだものん♪」

 何故困り顔になるのかと言えば、コンテナⅢと言う相手は現行兵器の中でも新しい、所謂最新鋭機に分類されるからである。


「だってあれ避けんじゃん、めんどくさいんだヨ!」

 最新であれば当然搭載される機器も高性能であり、相手取るのも大変と言うわけだ。


「だからスマスレなんでしょ? 数撃てば当たるってね」

 それでも軽口を叩ける辺り嫌だと言いつつもまだ余裕がありそうである。


「誤射の確率も上がるじゃんか、やだやだやだ」


「ユウヒ君ならなんとかしてくれるわよ」

 実際に戦闘を行うパイフェンは、どうも武装と遂行する任務の相性が悪いことに不満があるらしく、本当に大量のミサイルを撃ちだすスマートスレンダーは反面誤射の確立が高いらしく、明華から念押しされた彼女は誤射の危険に頭を悩めている様だ。


「・・・ユウヒ、遠くに行っちまって」


「ほぉんとね、寂しいわぁ」

 しかし、現在のユウヒの事を考えれば万が一誤射したとしても何とか出来そうな気がする二人は、少年少女に見上げられながらどこか遠くを見詰めるような表情で寂しそうに呟く。


「強いあんちゃんかっこいいと思うけど・・・ね?」


「かっこいいアニキ・・・良い」

 一方、少年少女には二人の悲しむ理由が解らないらしく、不思議そうに見つめ合うと首を傾げ頷き合う。


「あらあら」


「ちび共にはぜってぇやんねぇよ」

 そんな彼女たちに対する反応は正反対で、じぇにふぁーが微笑まし気に笑う一方で、パイフェンはライバルを見るような目で歯をむき出しにして威嚇する。


「んだとこの絶壁!」


「てめぇが言うな!」

 年齢故かそれとも性別故か異なる反応を見せる大人の二人であるが、すぐに喧嘩腰しでいがみ合う二人を見るに、どちらかというとファオとパイフェンの精神年齢が近い所為と言うのが正解であろう。


「・・・」

 いがみ合う二人を見詰めるコニファーは、じっと二人の局所を見詰めたかと思うとそっと両手を胸に当てて眉をへの字に寄せる。


「大丈夫まだまだ成長期だから」


「それはない」

 何を思っての不機嫌顔なのか手に取る様に解るコニファーの姿に、じぇにふぁーはそっと肩に手を置き励ますが、その言葉は即座に否定された。それも当然であろう、なにせ見た目は美少女そのものであるコニファーはしっかり付く物の付いた男であるからだ。


「はぁ・・・なにやってんだか」

 その後も胸を大きくする方法を伝授するじぇにふぁーであるが、まったく聞く気のないコニファーはジト目を向け続けるばかり。一向に準備が進まず連絡の付かない四人を探しに来た黒い肌が鈍く輝くスキンヘッドの男性は、カーゴドアの向こうで繰り広げ荒れる混沌とした状況に大きな溜息を洩らすと、力なく肩を落としてつるつるの頭を抱え、ぺちりと言う寂しげな音を奏でるのであった。


 果たしてこんな調子でユウヒを助けに行けるのか、そしてユウヒはこの困難を無事乗り切れるのか、何も起きていない今はまだ誰にもわからない。



 いかがでしたでしょうか?


 ユウヒの勘は今日もその力をいかんなく発揮し、ユウヒの予想に合わせたような展開を引き寄せる。そんな彼は無事日本の空港に降り立つことが出来るのか、次回をお楽しみ。


 それではこの辺で、読了評価感想に感謝しつつ、またここでお会いしましょう。さようならー

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