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ワールズダスト ~現世に現れし黒き森~  作者: Hekuto
第二章 異界浸食

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第百九十一話 アメリカドーム爆発

 修正等完了しましたので投稿させてもらいます。楽しんで頂けたら幸いです。



『アメリカドーム爆発』


 とあるドーム内で、任務後に行く予定のラーメン店を思い浮かべ笑みを浮かべる女性自衛隊員に、忍者たちが戦々恐々とした表情を浮かべて、逃げ出す様に異世界調査を始めている頃、遠く離れた東京の一室では、椅子に座った石木が操作していたスマホを机の上に置き、目の前の秘書に目を向けていた。


「対馬沖でのかん・・・不審船に関する報告が上がってきました」


「おうご苦労さん」

 彼女が持ってきた報告書には、忍者たちも感じた騒がしさの原因が記載されているらしく、不審船と言い直され、何の旗も上げてない軍艦の写真が印刷された書類を、石木は礼を言いながら受け取るとうんざりした表情で流し見る。


「・・・」


「ふん、予想通りだな」

 どこか怒っているような険しい表情を浮かべる姪の前で、終始呆れた表情を浮かべ書類を見ていた石木は、最後まで書類を捲り終わると机の上に放り投げてしまう。頭が痛そうに眉間を歪めた石木は呆れを通り越して哀れみすら感じる声で呟き、秘書に目を向けると彼女の表情に肩を竦めて見せる。


「この後の緊急記者会見の資料はこちらです」


「ん・・・しかし、どう考えても侵略行為なんだが、隣国はこの後の展開を考えてるのかね?」

 書類を読み終えるとさらに書類が追加された石木は、めんどくさそうに目を細めながら受け取ると、今回の騒動に対する記者会見用の台本を読みながら疑問を口にし始めた。それはとある国の船と思われる軍艦が日本の領海付近まで近づいたことに対する純粋な疑問である。


「私に聞かれても・・・」

 他国であれば撃沈されてもおかしくない行動を堂々と行うとある国の思考など、秘書の女性に解るわけもなく、石木の誰に問うでもなく呟かれた言葉に彼女は困った様に眉を寄せて見せた。


「ロシアとの関係改善は急激に進んでいる。馬鹿な議員が問題行動を起こしても揺るがないレベルまで行けそうなくらい順調らしい。まぁ若干の問題もあるんだが・・・」

 今回の騒動により急激に悪化する隣国との関係、一方で今までの不仲が嘘の様にロシアとは急接近し、アメリカともこれまでに無いほど良好な関係が構築されている。若干ユウヒからのお願いで頭の痛い石木は、書類から顔を上げると窓の外を見上げ、自分の心とそっくりな空模様に溜息洩らす。


「外務省が忙しそうでしたね」


「アメリカも今回の件でかなり好印象だ。自衛隊の派遣に夕陽の派遣まで行う効果は大きい。まさかこっちの要請を即答してくるとは思わなかった」

 そんな石木の視線を追いかけ同じく空を見上げた女性は、何とも言えない表情で少し前に見てきた会議室の状況を思い出し思わず呟く。現在日本の中枢は良くも悪くも大忙しであり、やらなければいけないことが多い状況で、余計ないざこざは本当に勘弁してほしいと言うのは、皆の共通認識である。


「日本に夕陽さんが居てくれてよかったですね」

 今の状況はユウヒが齎した幸運であり、思わず笑みの浮かぶ女性は彼に感謝し、石木もその呟きに振り返ると笑みを浮かべて見せた。


「あぁ、赤狐と言う爆弾を抱えても余りある・・・まぁ、万が一にでも扱いを間違えれば傭兵団以上に危険ではあるだろう」


「そんなこと」

 日本にとって、ユウヒは代えの効かない最重要人物となっており、明華の様な爆弾をダース単位で抱えてでも必要な人材である、だがしかし、それは明華達傭兵団に匹敵、それ以上に危険な存在でもあることは、石木も理解している。一方、秘書は以前話したユウヒの姿を思い出し否定しようと口を開くも、石木に見詰められ言葉を止めた。


「俺も思わん・・・だが大切な者の為なら躊躇しないだろ? 夕陽にはそれを成す力がある。核兵器を超える力を欲しがる連中何てごまんといるからな・・・守ってやらんとな」

 当然石木もユウヒが敵に回ると真剣に考えているわけではない、しかし世の中にはどんなに強い力を持っていても、どうしようもない状況に追い詰められることなどざらである。大切なものが増えれば増えるほど、力ある者は動きづらくなり、最後にはその判断を誤ってしまう。


 そんな現実からユウヒを守るのは、親だけの仕事ではなく、今の状況に追いやってしまった自分たちの義務であると、姪を見上げた石木の笑みが語っており、その笑みに女性は表情を引き締め嬉しそうに頷くのであった。





 そんなに守られるユウヒは、ロシアの地でも秘密裏に守られている。一般的には存在すらほぼ知られていない異世界専門家ユウヒも、各国の上層部には知られているらしく、彼に接触を図る者は少なくない。


「これで何人目だ?」


「丁度十人目ですね。やはりさっさと出て行った方が無難なのでは?」

 その訪問者は、ユウヒが傷を癒すために泊まるホテルの正門からは入らず、裏口や従業員用の出入り口を用いて直接接触を試みている様で、出し抜かれたくないロシア側と利害が一致している自衛隊は、ホテルの人間と連携してそれらの不届き者を次々と捕縛しては、ロシア軍に引き渡していた。


「しかし夕陽さんの怪我もあるし」

 しかし、いくら協力があるからとは言え、こうも不要な来客が多いと自衛隊員達も疲労を感じはじめ、安全を考えるとユウヒをもっと安全な場所へと移動させる必要があるだろう。だがそのためには一刻も早くユウヒの体調を整える必要があるわけで、重症のユウヒを動かすのは常識的に考えてありえないと呟く小隊長。


「俺がどうかしました?」


「え?」

 小隊長の言葉に神妙な表情を浮かべる自衛隊員であったが、そんな彼らの耳に予想もしない声が聞こえてくる。それは怪我人とは思えない軽い足取りで部屋を訪れたユウヒ。


 付き添いを誰一人と付けずに現れたユウヒに慌てて立ち上がる自衛隊員たちは、少し前までほぼ全身に包帯を巻いていたはずのユウヒを見詰め、その体に包帯一つ見当たらないことに目を見開く。


「体の方は、大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ、イトスギさんの舌打ちもさっき貰ってきました」

 信じられないものを見た表情で自衛隊員が固まる中、小隊長は絞り出すような声でユウヒの体を心配し、そんな彼にユウヒはニコリと笑い大丈夫だと言う。どうやらイトスギの診断もパスしたようで、その際に彼女は心底不服そうな舌打ちを残した様だ。


「はは、そうですか・・・なるべく早く移動しようと思うのですが大丈夫でしょうか?」


「はい、今からでもいいですよ?」

 ユウヒの魔法を散々見てきた彼等であるが、その力が傷の治療にも大きな効果を示すとは思っていなかったらしく、小隊長の問いかけに対して小首を傾げながら答えるユウヒに、隊員たちは思わず目を見合わせながら妙な半笑いを浮かべる。


「流石にフライトの予定がとれないですよ、早くて二日後ですかね」


「了解です。それまでに準備しておきます」

 自分たちの心配など、ユウヒにとっては大した意味がないのだと打ちのめされている彼らを他所に、苦笑を漏らす小隊長と話すユウヒは、下手な敬礼で返事をすると左脇を撫でながら妙に軽い足取りでその場を後にした。


「よろしくお願いします・・・」

 笑みを残し去るユウヒに声をかけた小隊長は、その後ろ姿に違和感を感じながらも、何の問題も感じさせないユウヒを信じて部下に目を向ける。そこには一様に珍妙な表情が浮かんでおり、その可笑しな状況を見て困った様に頭を掻いた小隊長は、小さく咳を一つ零して口を開く。


「それではその方向で動くとしよう。第二小隊にも伝えないとな・・・言いたいことは解るが現実だ。大臣からも言われただろ? 自分たちの常識で彼を計るなと、しかし心配することは止めなくていいからな」

 小隊長の言葉で立ち上がった隊員たちは、しばらく複雑な表情を浮かべていたがすぐに姿勢を正すと表情を引き締め、小隊長の付け加えた言葉に小さく苦笑を洩らすと気合を入れ直した表情で敬礼する。その動きはユウヒのどこかふわふわした動きとは違い、空気を切るような気迫を伴っていた。





 大丈夫とは言ったものの、まだ脇の怪我は治りきっていないので力を入れると痛かったりするユウヒです。今は【飛翔】の魔法を使ってあまり腹筋に力を入れないようにして歩いているが、盛大に魔法を使った影響か今は細かい制御が効き辛く少しふらついてしまう。


「と言うわけで近々ここを離れる。日本政府とアメリカが動いてくれるのでそのうち人が来ると思うから何とかなるだろ」

 そんなふわふわとした足取りでやってきたのは、出入り口の無いホテルの屋根の上。鋭角で特徴的な屋根の陰に腰を下ろした俺の目の前には、真っ暗な空に溶け込むようなフード付きの黒いローブを来たジュオ族のお姫様が立っている。


 小隊長さんたちの部屋に寄った時、【探知】の魔法が彼女の姿をホテルの屋根の上に捉えたのだ。どうやってこの場所を見つけたのか知らないが、彼女に丁度渡したい物もあったので屋根の上に上がり、これからの予定について話した。


「やはりユウヒは最高の救世主」

 正直このキラキラとした目で見詰められることには未だ慣れないのだが、やはり大きな国の支援は彼女たちの安心に繋がるようで、彼女の後ろで控えている側付きらしい女性達も嬉しそうに頬を綻ばせている。


「あとはその呼び名を改善してくれるとありがたいんだがな、あとこれ」

 せめて救世主と呼ぶのを改めてくれたらまだ構えなくていいのだが、小首を傾げる姿からは理解してもらえそうにない。まぁそれならそれでいいけど、とりあえずは当初の目的の物を渡すことにしよう。


「なにこれ・・・すごいまりょく、なのだけど」


「日本語相手限定の翻訳魔道具だよ」

 彼女に渡したのは日本語限定の相互翻訳魔道具である。簡易魔力活性の効果を仕込んだタロットカードほどの板の中央には、効果を限定化したことで翻訳機能を高めた【意思疎通】が封じ込めてある魔結晶の丸い板がはめ込まれている。透明な結晶自体に魔力収集効果があるため、今も周囲の活性魔力を集めており、翻訳時だけその溜め込まれた大量の魔力を消費していく。


「これは鉄の木と魔結晶・・・こんな高純度の物は珍しい」

 そんな薄い板が入った木の箱を恐る恐る開けたお姫様は、魔道具を手に取るとキラキラと星を映し込む瞳を見開き、星空にかざしながら笑みを浮かべる。どうやら気に入ってもらえたようで、お付きの女性にも渡しながら木の箱に入っていた板状の魔道具を取り出していく。


「光の精霊とか水の精霊が拾ってきてくれてな、中々有意義な一時だった」


「精霊を・・・いやなんでもない」


「ん?」

 木箱と魔道具の材料は、例の如く魔力を対価に精霊たちから拾ってきてもらったもので、流石は精霊なのか物の目利きは大したもので、若干偏りはあるものの品質の良い素材を採取して来てくれた。それらを使った合成は非常に有意義なものであったのだが、どうしてお姫様は俺の事をジト目で見ているんだい? いやいや、そのまま生暖かい視線に変えられても俺はMじゃないので、どっかの忍者みたいにゾクゾクはしないよ?


「姫様すごいですよ、この鉄木ぴかぴかです。顔が映ります」


「加工跡も無いです」

 そんなお姫様の後ろでは鉄木とか言うらしい異世界産の木で作った板を町の光にかざしている女性たちが、揃いの真っ黒ローブをひらひらと翻しながら嬉しそうな声を上げている。そこまで喜んでもらえると鏡の様に磨き込んだ甲斐があると言うものだ、硬くて密度が高いので磨いたら綺麗になると思い、時間をかけてじっくりと加工したら本当に鏡のようになったのには俺も驚いた。


「全部で二十枚作ったからカウルス達と分けてくれ・・・ちょろまかすなよ?」


「・・・なんで考えた先からバレるのだ」

 そしてチラチラとお付きの女性に視線を送っているお姫様? その懐に入れようとしている魔道具は箱に戻そうね。そんな驚いた目で見られてもな、明らかにわかりやすい行動だったからには突っ込まずにいられない、と言うかカウルス達の分も入っているので独り占めは困る。


「姫いけません」


「わかっておる」

 お付きの女性から注意され、目を逸らしているお姫様率いるジュオ族は元々カウルス達と同郷であるらしく、今も合流して一緒に行動しているらしい。それならとまとめて箱ごと上げたのだが、そんなに気に入ったのだろうか。


「それじゃな」

 それから数分かけて外に出されていた魔道具は箱に仕舞われ、お付きの女性が胸の前で襷掛けにされたバッグの中へと、そっと丁寧に入れられていく。一枚だけ取り出された板は、どうしてもお姫様の手から離れない様で、ここまで喜んでもらえると作り手冥利に尽きると言うものである。そんなこんなで渡す物も渡せたので、そろそろ部屋に戻るためゆっくり立ち上がり腰を伸ばすと、ふわりと体を宙に浮かす。


「ん、また会おう」


「おう」

 もう少しの間、楽しそうに笑い魔道具を見詰めるジュオ族達を眺めていたいが、あまり長い事誰の目にも留まらないと騒ぎになりそうな予感がするのでしょうがない。またそのうち会えると思うので、軽い挨拶を残し俺は下の階の窓にゆっくり降りて行くのであった。





 ホテルの中に帰るユウヒを見送ったジュオ族達は、熱の籠った瞳でユウヒを見送り、その視線をそのまま姫の手の中にある魔道具へと向ける。


「・・・我が一族の新たな秘宝だ。すべての秘宝は此度で失ったが、ここからまた皆で集めるとしよう」


「「はい!」」


 ユウヒから受け取った魔道具を空にかざしながらうっとりとした目を浮かべるジュオ族の姫と、その言葉に元気よく返事を返すお付きの女性達、彼女たちジュオ族は、その性質により高い魔力を帯びた魔道具を収集する習性があった。今回の戦いで彼女たちは自らの命を守るため全ての魔道具を失っており、そんな彼女たちにとって今手に中にある魔道具は、新たな門出を祝福する秘宝と言っても過言ではないのであった。





 ジュオ族の中でユウヒの救世主度がワンランクアップしている頃、アメリカの巨大ドームがその牙を剥き始めていた。


「すべての観測装置でも同じ現象が出てます」


「観測装置、さらに十台一斉に通信途絶」

 窓の無い一室で複数のモニターを前にしたアメリカ大統領は、豪華な椅子にどっしりと座りながら中継で送られてくる巨大ドームの映像と音声、さらに軍人の解説を耳に入れながら低く唸っている。


「頑なに避難を拒否していた一部住人が逃げ出している様です」


「今更遅いだろ・・・しかし何だこの湿度は」


「気温もゆっくり低下しています」

 縮小を止めた巨大ドームの周囲では、乾燥地帯に設置されていた観測装置が次々停止していく、すでに漏れ出していると思われる不活性魔力の影響なのか、乾いた大地は急激に湿度を上げている様だ。観測データーの見方を聞いていた大統領は、ドームを中心に急激に上がっていく湿度を見て眉を顰め、停止していく観測装置の最終データがどれも湿度100%であることに薄ら寒いものを感じる。


「近接撮影に向かわせたグレイイーグルが一機通信途絶、墜落したものと思われます」


「無人機にしていてよかったと言うべきか・・・」

 ドーム周辺に設置されていたカメラも次々機能停止に追いやられ、ついには上空からドーム周辺を監視していた無人機の映像まで消えてしまう。安全を考慮して有人機ではなく無人機で上空からの監視を行っていたのだが、無人でよかったと呟く大統領の表情はその言葉に反して優れない。


「ドーム周辺で発光現象! ドームが・・・割れてます」


「始まったか・・・これがドームの爆発」

 しかしそれまでの異常現象は序章にすぎず、到頭黒いドームがその破壊の光を外に漏らし始める。近距離中距離のカメラの中に機能する物はすでに無く、オペレーターによりモニターの画面が整理され、最も大きく表示された遠方から撮られたドームは、複数の光る罅割れを世界に晒していた。


「中距離までの観測装置すべてが通信途絶しました。残りも通信状況が悪くなっています」


「ドーム周辺だけでなく州全体でも雲が発生」

 罅割れが発生すると同時に、辛うじて生きていたカメラが一気に通信途絶し、残っているのは最も離れた場所に設置されたカメラだけになる。さらに高高度観測機から送られてくる画像には、ドームを中心に広大な雲が発生していく姿が映し出された。


「くそ、これでは何も見えないな衛星からの映像をスクリーンに出してくれ」


「了解」


「・・・これはなんだ? 台風の目か?」

 急激に広がる雲に目を見開いた大統領は、周囲の人々が息を呑む中、衛星からの映像を大きなスクリーンに表示するよう指示し、すぐに表れたその映像に驚き絞り出すような声を漏らすと言葉を失う。


「ドームのあった場所で異変、これは・・・水です! 大量の水が噴き出してます」


「一部で雲が晴れて、日本の吸収装置が雲を吸っているようです」


「あの雲が不活性魔力と言う謎のエネルギーなのか?」

 大統領が無言で見つめる先では、分厚い雲がドームを中心にゆっくり渦を巻いており、その姿はまるで巨大な台風の目のようでもあった。そんな台風の目にあるドームからは、衛星から見てもわかるとてつもない高さの水柱が吹きあがっており、さらにはドームの周辺では勢いよく雲が地面に吸い寄せられ何十何百と言う竜巻が生まれている。


 ドームの爆発と言われる現象をまざまざと見せつけられ、その滅亡と言う言葉を形にしたような光景に言葉を失っていた大統領たちは、無言の時間を過ごすことでどうにか話ができるまでにその心を持ち直していた。


「・・・これはいつまで続く」


「予想も出来ません・・・」

 それでも、画面の端に表示された時計を見るに三十分以上は何の指示も出来なかったようで、最初に聞こえて来たのは大統領の小さな問いかけの様な声と、陸軍の将官が返した小さな声である。


「直ぐに水質を調べさせろ、どれだけの水が出るか解らんが最悪、周辺どころか隣の農地まで使い物にならなくなるか・・・」

 冷静さを取り戻しつつもまだ指示が出せるまでに至っていない大統領の代わりに、軍人たちはドーム爆発の余波に対する備えに動き出す。勢いよく噴き出し続け留まることを知らないような水柱は、あっという間に乾燥した大地の地形を破壊しながら水没させており、水量はそれほどなくとも、止まらなければ何時か隣の州まで水没させかねない。


「大統領、ヒーローの到着には早くても四日ほどかかるとのことです」


「もう少し早くならないか問い合わせろ、なるべく早く詳細が知りたい」

 一気に水があふれ出て、瞬く間にアメリカの国土を侵食する様な事態にはならなかったものの、じわじわと進む水の浸食に、まるで首を真綿で締められる様な息苦しさを感じた大統領は、そっとそばに寄り報告をする男性の声に顔を上げると、少し希望を見出したような表情で指示を出す。


「分かりました」

 中国は砂嵐に呑まれ、ロシアは森と大亀の光に呑まれ、アメリカは雲に呑まれ今まさに大量の水に国土を飲み込まれようとしている。果たしてユウヒは浸食されていくアメリカを救うことが出来るのか、と言うか現状では間に合うのかすらわからない。



 いかがでしたでしょうか?


 ロシアの地で傷を癒すユウヒの心配は、まるでフラグの様にアメリカのドームを爆破した様です。果たしてアメリカはどうなるのか、ユウヒは彼の地を助けることが出来るか、次回もお楽しみに評価感想残していただいた方に感謝しつつ・・・。


 今回もこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー

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