第十七話 異世界の食べ物とボッチの出発
どうもHekutoです。
修正等完了しましたので投稿させて頂きます。皆様に楽しんで頂ければ幸いです。
『異世界の食べ物とボッチの出発』
青々とした異世界の巨木が鬱蒼と茂る森の、少しだけ開けて空が見える倒木の目立つ岩場には、リンゴがメロンを揉みしだき、メロンはリンゴから逃げようと必死にもがき、その度に上下する果実を濁った目で追う流華、そして何処か寂しそうにお腹を押さえて背中を丸めるパフェと、四人の女性が存在した。
「もどったぁ・・・なんだ、一段と空気が悪くなってるな」
一人姿が見えなかった唯一の男である球磨が戻って来たのは、そんな、異世界に足を踏み入れて最も悪いのではないかと思われる空気が溢れる時であった。背中に蔦で作ったと思われる即席の背負い籠を背負った球磨は、戻って早々嫌でも感じる空気の重さに何とも言えない声を洩らすと、揺れる果実を目で追いながら引き攣ったような苦笑を浮かべる。
「あ、球磨さんお帰りなさい」
疲れを感じる球磨の声に最も早く反応したのは流華だったようで、目の色を元に戻した彼女は、小走りで球磨に駆け寄り労うような声をかけた。
「ノンノン、クマさんなルカちゃん」
「あはは、はいクマさん、何か食べれそうな物ありましたか?」
しかしイントネーションが駄目だったのか、大して変わらない修正を入れると流華の事をルカと呼んだクマは、彼女の返事に頷き背中の荷物を下ろし始める。このやり取りの理由は、ドームに入る為の下準備として、ルカがクロモリオンラインの公式サイトからプレイヤー登録をしたことに由来していた。
ドーム内にプレイヤー以外が入った場合、もれなく全裸になると言う現象が確認されていた為、後からでもプレイヤー登録を行えば、こちらも不思議現象と確認されている服装の変化起きるのではないかとパフェ達は閃いたのだ。結果は大当たりで、念の為にドームへ最後に入ったクマの目に映ったのは、深い森林の中で一際目立つピンク色に、斜めの黒いラインが入ったクロモリ初期装備を着た四人の美女、美少女の姿なのであった。
「ふむ、ルカちゃんもすっかり食いしん坊キャラだな」
クロモリジャージ姿で期待に満ちた目を向けてくるルカの姿に、思わず苦笑を洩らしたクマは、籠から大きな葉を取出すと平たい岩の上に敷いて行く。
「ほらクマさっさと出す! こっちは腹空かして待ってたんだから!」
「・・・こっちはどうしてこう偉そうなのか」
どうやらそれらは収穫物を並べる為の敷物として使うようだが、待ちきれないリンゴの催促に残念なものを見る様な表情を浮かべるクマ。
「そして姉さんは目が獲物を狙うライオンの目になってるから、メロンさんもじりじりと寄ってこられるとあた、うれ・・・怖いよ?」
また、籠から木の実や果物などの植物を取り出す度に鋭くなっていくパフェの視線と、ジリジリと近づいてくるメロンに表情を引き攣らせた彼は、若干本音を洩らしそうになるも、ルカの視線に気が付き慌てて言い直している。
「何か食べ物ありました?」
巨乳好きのクマが一体何を言いそうになったのか気が付かないルカは、テーブル代わりの岩の上に並べられた色とりどりの植物を覗き込むと、見上げる様な姿勢でクマに問い掛けた。
「ああ、今パッチテスト中だが・・・うんむ、いまのところ大丈夫ぽいな」
「球、クマさんってそういうの慣れてますよね」
所謂上目使いであるが、お姉さんと巨乳を愛する戦士にはこれと言って効果は無かった様で、微笑ましげな表情で見つめ返した彼は、果物などの汁が付いた二の腕を見せながら頷く。
これはパッチテストなどと呼ばれるもので、サバイバルにおける毒物の判定方法などに使われ、他にもアレルギーの判定にも使われたりする検査方法である。そんな検査方法を知っていたクマに、少し前に説明されていたルカは改めて感心した表情で、特に腫れてもいないクマの二の腕を見詰めるのだった。
「まぁ仕事柄な、このくらいならユウヒも出来るぞ? まぁ・・・あいつの場合はテストする前から勘で見分けっちまうけどなぁ・・・」
仕事柄この程度のサバイバル知識は当然だと言うクマ曰く、信じられないのはユウヒの方だと、勘で完璧に食べれる物と食べれ無い物を選り分けて見せたユウヒの姿を思い出し、何とも言えない表情を浮かべる。
「・・・毒々しいまでに紅い実ね」
「トマトと桃の間位の感触ですねぇ」
「まだ食べんなよ?」
そんなルカとクマのやり取りの間も、リンゴとメロンは空腹を我慢しながら恐る恐ると言った仕草で並べられた物を触っており、その様子を見たクマはジト目で二人を制止するのだった。
「緑のバナナ? ふむふむ、あーんもぐ・・・もぐもぐ」
しかしそんな忠告は、既に限界を超えてしまい思考が空腹に犯されたパフェの耳には届いていなかった様で、彼女は手に取って弄っていた果物らしき植物を手で半分に引き千切ると、徐に口を開き豪快に頬張り咀嚼を開始する。
「・・・は、早!? 姉さんちょっとは躊躇しようよ!? まだテスト中だって言ったじゃん!」
あまりの出来事に呆ける一同の中で最初に覚醒したのはクマ、彼は慌ててパフェに近づくと、しかしどうしたものかと手を彷徨わせながら、パフェの行動に大きな声でツッコミを入れるのだった。
「ん? もぐもぐ、もぐもぐもぐ、んー<ごくん>・・・ふむ、薄味だがほのかに甘い、種は多いがそこまで固くなく、咀嚼する事で次第に滑らかな舌触りに・・・バナナとアボガドを足して割ったあとに柔らかいチアシードを入れた様な感じかな? うまかたぞ?」
「いや・・・もう、無駄に行動的なところにひやひやするわぁ」
目を白黒させて慌てるクマに対して、パフェはキョトンとした表情で彼を見つめ返し、しっかり咀嚼して口の中を空にしたかと思うと、今度は食べたものに関して感想を語り出し、目の前で心配そうにしているクマを脱力させるのであった。
「あはは」
「とりあえず毒見するからちっと待ってくれ、結構採れたんだから焦るな」
ルカが乾いた笑いを洩らす中、気を取り直したクマはパフェの手から先ほど彼女が食べてしまった植物のもう半分を取り上げると、彼女の目の前で注意を促す。
「む、そうか・・・すまない気を使わせていたのか」
そんなクマの言葉でようやく状況を掴めたパフェは、食事をとられて悲しげに歪められた表情を申し訳なさ気なものに変えると、少し肩を窄めてクマを見詰めた。
「ふつう使うだろ・・・んー確かに少し甘いアボカドか、皮に近いとすこし固いが租借すりゃ大丈夫だな。特に変な感じも無いしとりあえずはおkだな、次はこれっと」
見詰めてくるパフェに肩を落としたクマは、奪い取った緑色の植物をくちに含み異常がないか確かめ、問題無い事を告げると次の植物を手に取る。
「ふーん、バナナの原種と似てるけど、この辺りは熱帯アジアみたいな場所なのかしら? それにしては気候が安定しているような」
「お腹空いてるとなんでもおいしく感じますねぇ」
一方、クマの言葉を聞いた女性陣は、すぐに緑色の楕円をした植物を手に取ると、様々な反応を示しながらもそれぞれの食べ方で口に付けていく。
「渋!? これは駄目だな、こっちはすっぺー・・・まぁ、食えなくはないか、こっちは甘いな! 小さいけど当たりか?」
クマが次々と調べる物の中には、駄目そうな物もあったのかいくつかは地面に捨てられて行き、また酸っぱい物もあれば甘いものもあるようだ。
「甘いのもぉらい! ってスッパ!?」
「・・・ふんふん、熟してるかそうでないかの問題だったか」
そんな選別に、目敏いリンゴは空かさず甘いと評価された果物を口にいれるも、若く酸っぱい物であったのかその酸味に悶え、再度クマからチベットスナギツネの様な視線を向けられるのであった。
それから数十分後、
「うむ・・・それでクマ、探索の結果はこれだけか?」
ある程度満足できた様子の一同に目を向けたパフェは、手に持っていた果物見詰めるとその視線をクマに向けて探索の結果を問う。
「あーそれが、帰り道は解らんが、この先で廃村らしき場所を見つけたよ」
「廃村ですか?」
クマが全ての植物をチェックした後も、空腹を満たすことに専念していた鬼気迫る女性陣に、若干引き気味の表情を張り付けていたクマは、その間一度も言葉を発することは無かった。
元々は帰り道や休憩場所の調査、また食料調達などの為に単独行動をしていた彼は、漸く真面に報告が出来る空気になった事にホッとした表情を浮かべ、パフェに報告を始める。
「人は?」
「いないみたいだったな、蔦も結構這っていたし、人がいなくなって結構時間が経過している感じだ」
クマがパフェに報告を始めた事で、手に持っていた赤い果物を置いたルカは廃村と言う言葉にクマを見上げ、そんなルカに頷きながらパフェの短い問い掛けに首を振りながら説明を続けるクマ。
「そうか、出来れば休める場所があるといいのだが」
「遠目で見た感じ川もあるし一度目指したほうが良いだろうな、補給物資もくそも無いんじゃ選択肢は無いと思う」
クマの見つけた廃村は、石造りの家が数件密集するように作られた場所で、以前は畑だったと思われる荒れた土地や、水車を回せる程度の川が流れており、そこには水車小屋の名残なども見受けられた。
元々パフェ達はこれほど深くまで入る予定はなく、ある程度進んだら一度ドームから出て少しづつ探索する予定であった。しかしドームの先が山の中腹になっており、テンションの上がっていたパフェが足を滑らせリンゴを掴み、掴まれたリンゴはルカを抱き締めていたメロンを掴みと言った感じで、女性陣が一緒に崖下へと滑落。
「うふふ、そうですねぇ真面な睡眠も必要ですし」
「仕方ないか・・・」
「あーお風呂入りたいなー」
土や木々で汚れていたものの不思議と怪我をしなかった彼女達は、救助に降りてきたクマと共に見知らぬ森を彷徨う事になったのであった。
「ちゃんと俺の指示を聞いてくれれば入れただろうさ」
「ぐぬ」
「むむ」
当初の予定では、最初にサバイバル経験の豊富なクマが周辺の調査をしたのち、現地で詳しい方針を決定するはずだったのだ。
しかしクマがその場を動かない様に指示を出した直後にも関わらず、好奇心の塊なパフェと自由なリンゴのコンビがフラフラと歩きまわり、結果その行動が滑落へと繋がった為、流石の二人も申し訳なく思っている様で、普段は発言力の低いクマの言葉にも声を詰まらせている。
「まぁ終わった事だからいいけどな、しかし・・・ここまでが予想通りの展開過ぎて涙が出そうだぜ・・・ユウヒ、親友が困ってるぞ? 早く助けに来い」
二人の恨めし気な視線に肩を落としたクマは、もう少しで頂上に到達しそうな異世界の太陽を樹の隙間から見詰めると、何処に居るのか分からない親友であるユウヒに愚痴を零すのであった。
御日様はまだ真上じゃないのでおはようございます。二度目の異世界も森からスタートのユウヒです。
「・・・ん?」
やはり右目を使い色々と調べるのは面白い事面白い事、何故か遠くから友人の嘆きが聞こえた気がして立ち上がって居なければ、きっとあの異世界太陽は真上に到達していた事だろう。
「ふむ、そろそろ出発するか」
長時間屈んでいた為、腰に違和感があるが伸ばせばなんてことは無い、とりあえず我友への折檻は手心を加えてあげる事にして、そろそろ出発しないといくら強運の持ち主が三人もついているとは言え妹が心配である。
「先ずは【身体強化】・・・よし」
先ずは異世界ではほとんど常時使用していた魔法の一つである【身体強化】の魔法を体にめぐらせた。いつもより若干弱く感じる気もするけど、僅かなブランクでも違和感を感じるとは、俺も成長? したものである。
「続いて【探知】・・・ん?」
次はこっちもほぼ常時使っていた【探知】の魔法、寝たりすると途切れるがとても役に立つ魔法であるのだが、ちょっとした問題もある魔法だ。
「おや? 範囲がえらく狭い・・・この世界の補正かな?」
しかしその問題となる部分が解消? されているのか、前なら異常な範囲を探知していた魔法が、今では自分を中心に百メートル前後の範囲に落ち着いている。
「んーそれとも魔力の濃さの影響か・・・まぁ一応使えてるから問題ないかな」
いつもなら魔法を使った後にいろいろ調整が必要なのだが、これはこの世界の魔力が薄い事が関係しているのであろうか・・・。
まぁ、使えるならこれでも特に問題はないだろう、以前のままならすぐに流華を見つけられたかもしれないが、無駄に情報が多いとレーダーが見辛くもあるのだ。
「仕方ないから次はこれだな。えーっと、うちの妹の行方を示せ【指針】」
それに探す方法は何も【探知】だけでは無い。
俺は前向きに考えを切り替えて、用意していた木の枝を掴みとると、その木の枝に語りかける様に妄想魔法である【指針】を発動させ、手首のスナップだけで軽く樹の枝を放り投げる。
「・・・・・・こっちも? なんだかふらふらしてるな、結構遠いのか?」
しかしこちらも今一つ反応が悪く、地面に落ちた枝は倒れる事無くフラフラ一定の範囲を行ったり来たりしながら不自然な動きを見せていた。
どうやらその一定の範囲のどこかに居ると言いたい様で、いつもなら無理な事を言わない限りピッタリと方向を示してくれる【指針】の魔法に、扱き使いすぎたかと不安になりながらも、とりあえず枝をつついて魔法を解除してやる。
「仕方ない、とりあえず向こうだな」
正確な方向こそわからないものの、何の情報も無いよりはマシであるわけで、まだ空を飛ぶなどの手段も有るのだし、急いては事を仕損じるの精神で行くとしますか。
「・・・でも、よく考えたら以前のままだと注意しないとすごい事になってたし、成長して加減が出来るようになったと思えばいいのかな? ・・・いやまさか、乙女様が何かやったのか?」
少し湿度が高くも過ごしやすい気候の森の中、前向きな思考のユウヒは、どこか遠くから聞こえた気がしたクシャミに空を見上げる。
しばらくの間空を見上げ首を傾げていたユウヒは、気のせいと言う事にして視線を前に戻すと、ドームの中と地球を繋げる光る壁に見送られながら、一人寂しく森の中へと歩を進めるのであった。
いかがでしたでしょうか?
異世界で迷子になっているルカ達の現状と、ようやく出発するも違和感を感じているユウヒの話しでした。少しずつルカに近づくユウヒですが、どうもすんなりとはいかない様です。
それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー




