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ワールズダスト ~現世に現れし黒き森~  作者: Hekuto
第一章 救出と救済

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第十五話 忍者、受像機に活路を見ゆ

 どうもHekutoです。


 修正等完了しましたので投稿させて頂きます。タイトルからわかるように、今回は皆に妙な人気のある忍者達の出番の様です。



『忍者、受像機に活路を見ゆ』


 石木防衛大臣の一言により稀に見る奇妙なざわめきが国会の議会場に溢れている頃、時同じくして忍者達はやさぐれた表情で国会中継を映すテレビに目を向けていたが、石木防衛大臣の話を聞いたことでその瞳に生気を取り戻し始めていた。


「これだな」

「これだお」

「これでござるな」


 口の悪い石木であるが意外と民衆受けが良く、特に一部にサブカルチャーを愛する者達には人気があった。そんな者達と同じ様な感性を持った三人の忍者は、石木の発言に新たな希望を見出した様で、互いに頷き合いながら声を洩らす。


「無職から始める国家公務員への道!」

「ラノベっぽいタイトル乙www」


 彼らはドームと言う異常事態により、異世界から帰ってきて早々に無職となった。いくら新人類である忍者と言う存在になったとしても彼らは本来極々普通の一般人、職が無くなったとなれば、ある意味で文化的な最低限度の生活もままならなくなる為、慌てるのも道理である。


「しかし、確かに悪くないでござる。拙者等の能力を生かすとしたらもうこの道しか・・・」


 そんな三人は、どうやら石木の民間人登用と言う言葉に、自らも国家公務員の仲間入りをする未来を妄想したようで、キリッとした表情でこぶしを握るジライダ、その言葉に頷くゴエンモ、またそんな二人を笑うヒゾウも、それぞれに自信や不安、お道化た表情の中に確かな希望を見え隠れさせていた。


「調べた話だとドームの中は異世界らしいからな」

「そして俺らはきっとたぶん数少ない異世界経験者!」

「さらには一応でも新人類たる『忍者』でござる」


 何故彼らが石木の言葉に希望を見出したのか、それは彼等が異世界と言うものを経験した忍者であり、またドームの中も高い確率で異世界とされているからである。


 さらに言ってしまえば、今の彼らの身体能力や忍者としての技術は、一般社会で生きるにはオーバースペックであり、ある意味現代社会では生き辛らく感じる要因となってしまっていた。なにせ彼等にとっては、移動手段一つとっても自転車や自動車を使うよりも走ったほうが早いのである。


「平和な世では何の役にも立たない武力だが・・・」

「異世界、特に危険な地ならわんちゃん!」

「いける、行ける気がして来たござる!」


 普通の感性ならば、どう考えても穴だらけな希望的観測であるものの、新人類故の窮屈さを本能的に感じ取っている三人にとっては、石木の言葉と現状から妄想できた未来予想図が、唯一残った希望に思えて仕方ない様であった。


「だが石ちゃんも言ってたけどよ、段取りはどうする? 流石にいきなり防衛省に行っても門前払い確定だろ?」


 テレビの国会中継がざわつきの中終わり、お昼のニュース番組に切り替わると、三人はちゃぶ台を中心に顔を突き合わせ本格的にどうするか話し合いを始める。最初に声を発したのはジライダ、彼の言い分も最もであり、実際に何をするのか何が出来るのか、詳しく決まっても居ないうちから押しかけたとしても、不審者として拘束はされないまでも、門前払いが関の山だろう。


「そうでござるなぁ・・・やはりここは、先ず実績でござろうか?」

「なるほど実績か・・・ヒゾウなんか無いか?」


 本末転倒な未来を回避するために、彼らは三人よっても文殊には到底及ばない知恵を使い、効果的な作戦を絞り出す。そんな絞り出された第一の作戦は実績作りのようで、ゴエンモの発言を受け取ったジライダは納得したように頷くと、ノートパソコンを弄るヒゾウへとそのまま何か無いか問い掛ける。


 人、これを丸投げと言う・・・。


「うーん、実績・・・実績クリア・・・コンプリート特典、お! これなんてどうよ?」


 丸投げされたヒゾウはジライダの問い掛けに唸り声で返事をすると、マウスとキーボードの音を鳴らしてモニターと睨めっこを始めた。


 ぶつぶつと特に意味も無い呟きを洩らしながら、少し鈍いクリック音のBGMが流れる事数分、眉を寄せていたヒゾウは頭を上げると、ノートPCのモニターを二人に向けながら明るい声で問いかける。


「「・・・ドーム遭難者救助の会?」」

「んだ、被害者の会掲示板から追い出された奴らが立てたスレだお」


 モニターに映るウィンドウに表示されていたのは某有名掲示板サイトで、その中でもその掲示板は、主にドーム被害にあった親類縁者が情報を交換したり救助を要請したりする掲示板、から追い出された者達により作られた交流掲示板であった。


「内容は?」

「家の子が探検に行ったら帰ってこなくなったからボスケテエロい人! がメインだぬ」

「これだから素人は、とか自己責任でヨロ、とか言われてる人たちでござるな」


 何故追い出されたのかと言うと、元々『ドーム被害者の会』と言う掲示板を立てた人間達が、突然発生したドームに巻き込まれた、所謂天災にあった様な人達なのに比べ、追い出されて『ドーム遭難者救助の会』と言う掲示板の立てた住人達は、自分達からドームに入って行って帰って来なくなった者達の、家族や友人知人なのである。


「あぁ・・・なんかそんなのが大分前のスレに書いてあったな・・・メインスレからおんだされたのか」


 自分達から危険に突っ込んで行っておいて、剰え助けてくれなどと言う事が許せない被害者達から、非難を受けて結果的に追い出された彼らは、一部の支持者たちの援助の下で今も細々と活動している様だ。


「そいつらの依頼を受けてみるのはどうよ? うまくいけば報酬ゲットで一石二鳥だお」

「報酬とかついてるでござるか?」


 またその援助と言うものの中には、ヒゾウが親指を立てながら一石二鳥と言った報酬、要は支援金や義援金などと言われるお金の援助もあった。


 これは当然と言えば当然なのだが、帰って来ない人間が出る様な所へと救助に向かうなど、漫画に出て来る正義の味方でも無ければ正直ありえない。しかしそこに金銭が絡めば、欲で浮つき重たい腰を上げる者も現れると思われた結果、割と馬鹿に出来ない金銭が集まっている。


「んだ、警察も忙しくて相手にされないレベルらしいけど・・・哀れだな」

「ふむ・・・あれか、ついでに行方不明者全員助け出してしまってもかまわんのだろ? か?」

「それは完全に死亡フラグでござる」


 頼れる者が居ない者達に手を差し伸べ、さらには未だに助け出されていない被害者達をも颯爽と助け出す。


「でも?」

「「悪くない! (でござる!)」」


 それはまさに絵に描いたような英雄的行為であり、それに報酬まで付いて来るとなれば、死亡フラグを撒き散らしながらもニヤニヤの止まらない金欠忍者たる彼らが、腰を上げないわけがない。

 

「ではヒゾウ! 早速クライアントに連絡だ! 今日中に動くぞ!」

「おう任せろ! って今日中かYO」


 『悪くない』の掛け声で立ち上がった彼らは、ジライダの指示のもとネタを盛り込みながらもキビキビと動き出す。


「一応護符も入れて、刃物わぁ・・・捕まった時言い訳できないので無しかな? ・・・ところで、ユウヒ殿は誘うでござるか?」


 そんな中、ゴエンモは忍者道具の準備をする手を止めて何やら思いふけると、振り返りユウヒの名前を出して首を傾げる。


「・・・いあ、先行偵察は忍者の仕事だ! 勇者ユウヒは忙しそうだし、なんてったってリーサルウェポンだからな!」


 ユウヒの名前を聞いて何かを高速で考えたジライダは、難しい表情で考え込んだかと思うと、すぐに顔を上げておとこを感じさせる渋い表情を浮かべて首を横に振った。


「最終兵器扱いとかwwwあれ? 強ち間違ってない?」

「・・・あとが怖いでござる」


 彼ら曰くリーサルウェポンであるユウヒが居ない状態で、果たして何事も無く無事問題を解決できるのか、そしてゴエンモの直観に引っかかった悪い予感は当たるのか、非常に楽しみである。





 一方その頃、忍者達曰くリーサルウェポンのユウヒはと言うと、


「これがドームの中か、せっかく暑いのにも慣れ・・・てはいなかったが、こっちは少し涼しいかな? まぁ過ごしやすいのは良い事だな」

 仄かに哀愁を感じさせる背中を白く光る壁に照らされ、静かな森の中に木々の隙間から漏れ落ちてくる光を見上げながら、肌に感じる気温に不平不満を洩らしながらも一人寂しく自己完結していた。


 どうやら今ユウヒが居る場所は、アーケード街にあったドームの中の様で、茹だる様な暑さの日本とは違い、森と言う条件を入れても明らかに肌に感じる気温が日本とは異なり、幾分だが過ごしやすい様だ。


「ドームの奥は鬱蒼と樹々が茂った森・・・この傾斜具合だと、これは山の中腹なのかな?」

 見上げていた顔を正面に戻したユウヒは、周囲の状況を確認しながら率直な感想を洩らす。背後から目の前へと緩やかに下る様な傾斜を感じとった彼の周囲は、人の手を感じることが出来ないまさに大自然の様相をユウヒの蒼と金の瞳に魅せていた。


「さてと、これくらいの棒でいいかな?」

 その瞳で白く光る壁をチラリと見たユウヒは、一つ頷いて歩き出すと近くの倒木から枝を一本拝借し、手に感じる感触に満足そうな表情を浮かべる。


「・・・流華、近くに居ればいいんだけ、ふっ・・・ぶえっくしょん!!」

 木刀より幾分細い枝を握り締めながら急に眉を寄せたユウヒは、妹の事が心配なのか思わずその感情を言葉にしようとしたのだが、不意に襲ってきた感覚で反射的に表情を歪め、飛びだしてきたクシャミにその感傷の発露を邪魔されてしまう。


「・・・忍者共め、何かよからぬ噂をしているな? 帰ったら問質しちゃる」

 僅かな沈黙の後、いつも通りの異常に鋭い勘で正確に噂話の元を見破ったユウヒは、鼻を擦りながら名も知らぬ異世界の大地を踏みしめ、帰ってからの予定を一つ決定すると、枝を軽く振りながら前へと歩き始めるのであった。


 地球の忍者達に幸よ有れ・・・である。



 いかがでしたでしょうか?


 忍者達は変わらず忍者で、ユウヒも変わらずの感の良さでしたね。彼らの行いがどうゆう風に周りへ影響を与えていくのか、それとも影から影へと気が付かれずに終わるのか、今後の展開をお楽しみに。


 それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー

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