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ワールズダスト ~現世に現れし黒き森~  作者: Hekuto
第一章 救出と救済

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第十四話 ドームと闘う者達

 どうもHekutoです。


 修正等完了しましたので、投稿させて頂きます。是非皆様のお暇のお供にでも読んで頂ければ幸いです。



『ドームと闘う者達』


 とあるパン屋の三階で、複数の男女が一夜を明かした翌早朝、とあるビルの一室には、暗い部屋で複数のPCモニターを睨みながら忙しなく指を動かす人物が居た。


「やっと制御が効いて来たのに、なんなのよこいつ等!」

 窓は閉められモニター以外の明かりが無い薄暗い部屋の中、詳細こそ解らないものの聞こえて来る苛立たしげな声は、若い女性のものの様だ。


「あんた達の為にこっちは制御してるって言うのに、何で邪魔すんのよまったく!」

 複数並ぶPCモニターには、数多くの『ドーム』が映し出されており、その表示からリアルタイムの映像であることが分かる。特に一際大きく映し出されている三つのドームの映像の周囲には、複数の文字や数値が点滅を繰り返し、彼女が手を動かす度に数値が変動している様だ。


「・・・はぁ、まぁあれが何だか分からないんだし、しょうがないって言えばしょうがないんだけど・・・」

 溜まった鬱憤を声に出した事で幾分スッキリしたのか、溜息を漏らした彼女は声を和らげると、上空から見下ろす様なアングルで撮られたドームと一緒に映り込む、明らかに一般のものとは違う武装がされた車両群に目を向け、釈然としない表情で頭を掻く。


「それに責任の半分は・・・いや、悪いの私じゃなくて自称テロリスト達だし、私悪くないし」

 武装された車両に監視されている三つのドームに目を向けた彼女は、口元を申し訳なさそうに歪めるも、すぐに頭を振ると右手で操作していたマウスに力を籠め悔しそうに唇を歪めた。


「ならやっぱりむかつく! なんで壁に攻撃すんのよ、リソースを防御に割り振るせいでちっとも他の制御が追いつかないじゃない!」

 どうやら彼女はドームについて詳しく知る人物の様で、彼女の作業を邪魔するようにドームへと砲撃を繰り返す武装集団に再度苛立たしげな声を上げる。彼女の言葉から察するに、彼女は目の前で拡大を続けるドームを制御しているらしく、砲撃はその妨げにしかなっていないようだ。


「閉じ込められた物と人の保護にほとんどリソース使ってるから余裕ないって言うのに」

 しかもその制御能力の大半は、内部に閉じ込められた建築物や人を保護する為に使われているらしく、その事が彼女の負担となり続けている様であった。


「そのせいで制御に穴が出来て完全封鎖出来ないし、どんどん人が入ってくるし、元が元なせいで強制送還システムを使うリソースなんて全くないし」

 終いには歯軋りを始めた彼女の口からは、不平不満と共にどうしようもない状況が伝わってくる。


「ってまた人が入った!? これは、全員プレイヤー? また面倒な・・・非プレイヤーなら素っ裸ですぐに退却してくれるのに」

 そんな彼女をさらに災難が襲う、どうやらドームに何者かが侵入したらしく、その事を知らせる様にモニターの一つが警報と共に様々な情報を表示し始める。


「防護服にリソース割くの止め・・・いやいやそれはそれで不味いし、全ての人に出来ない分限定したんだし」

 一部掲示板では常識となりつつある、特定の人間のみドーム内で裸にならない現象は、彼女が手を下した結果の様で、それもリソースと言う物が足りない事で特定の人物達に限定されている様だ。


「!! ・・・は? 何この情報・・・ばっかじゃないの! 何でそんな戦略兵器用意してんのよ!」

 警報を止めて表示される情報を精査していた彼女下に、更なる災難が舞い込む。


 それは先ほどまでの警報よりも、より感情を掻きたてるよう音で知らされ、複数のモニターが同時に一つのドームを映し出していた。さらに様々な角度で映されたドームやその周辺地域の光景の中の一つには、巨大で重厚な車両が映っており、その中に搭載されているモノの情報が文字として表示されている。


「ぐぬぬ、他を後回しにして先にここから処理しないと、手遅れになっちゃう」

 叫びながらも手の動きを加速させた彼女は、歯を食いしばりくぐもった声を洩らすと、眉を寄せながらドーム内への侵入者警報が映された画面を消し、


「自国民諸共焼却するつもりとしか思えないんだけど・・・」

 問題のドームに対して最優先かつ全力で何らかの操作を開始した。


 それから小一時間後、


「よし、これで少し時間かかるけど中の人を外に出せるわ」

 額に玉の汗を浮かべた女性は、モニターを満足そうに見つめるとほっと息を吐いて椅子の背凭れに体重を預ける。


「・・・でも、これって確実に壊れるよね? どうなるんだろ? ・・・まったく予想も出来ないんだけど」

 モニターの光だけを反射する暗い部屋の天井を見上げながら、彼女はこれから起こるであろう未来を予想し、しかしその先どういった結果になるのか、ドームについて詳しく知る彼女でも解らない様であった。


 暗い部屋で光を放つモニターには、何かの準備を進める人々の映像が映し出され、動きを止めた女性の居る部屋の中で唯一その映像だけが時間の流れを感じさせていた。





 一方、ぐったりとしていた女性がいつの間にか寝息を漏らし、本格的に寝入り昼夜逆転した部屋に並ぶPCモニターの一つには、複数のテレビ番組が表示されており、その中の国営放送協会に割り当てられたチャンネルの向こうからは、一方的に白熱した声が聞こえて来ていた。


「だから総理! 私は自衛隊は一体何をしているのですかと聞いているのです! 貴方がごり押しした法案可決から今まで、まったく成果が出ていないではないですか!」

 その内容は国会中継と言われる番組であり、中継と言うだけあり所謂生放送である。その中では机の前に立った男性、現総理大臣に野党議員と思われる男性が唾を吐き出す様な勢いで声を荒げている。


「先ほども言いました通り、現状問題無く進んでいると聞いております。何分未知しかないと言っても良い状況ですので、自衛隊員の安全を考えるとあまり無理は言えません」

 白熱している男性議員に対して、総理は特に表情を作ることなく、ただどこかうんざりした雰囲気で淡々と質問に答えていく。と言うのも、この質問はすでに何度もされており、その度に総理は同じような内容を答えていたのである。


「・・・だいたいそんな直ぐに結果がでるわけないって言ってただろが」

 大体が聞く相手が違う気がするが、これは野党議員側から総理が指定されたからであった。そんな目の前の状況に、総理の立つ後ろの席に座る男性は周りに気が付かない程度の溜め息を吐いたかと思うと、割と周りに聞こえる大きさの声で呆れの伝わる声を洩らす。


「あんた何無責任な事言ってんだ! あんたの仕事だろ!」


「石木防衛大臣」

 瞬間野党席側から責め立てる様な若い男性の声が上がり、その声の主を目で追いながら手を上げた男性、石木と呼ばれた防衛大臣は手を下ろすと総理と入れ替わる様に立ちあがる。


 そう、本来自衛隊に関する説明を求めるならば、彼に聞くべきなのであり、野党側の質問はそれをさせない為の行動であったのだ。しかし彼の言葉にのせられた議員の一言により、漸く説明らしい説明が始まろうとしていた。


「あー以前にも説明したと思いますが? 今回の作戦はいくつにも分けられ、段階的に行われております」

 しかし、少し前にも言ったようにこの質問は何度もされており、それは時間単位では無く日単位で、である。


「えー現在、黒色特異点通称『ドーム』に関しては、どの国もその詳細を解明しておりません。故に、先ずは細密な情報収集が重要なのですが、その辺に関してはご理解いただけていると思います」


「だったら早く調べろ!」


「そうだそうだ!」


「・・・」

 総理以上にうんざりとした雰囲気を隠そうともせず話し始めた石木の言葉に、複数の議員が野次を飛ばし、その野次を飛ばした議員を目で数えた石木は目をすっと細めて見せた。


 現在日本政府は、自衛隊員などを万単位で動かしてドームの対策に動き回っている。しかしドームの詳細は未だどこの国も解明できておらず、全てが手さぐりの状態である為、自衛隊の派遣が決まった当初から時間がかかる事は、石木が呟いた言葉通り解っていた。


「あまり幼稚な事は仰らない方がよろしいのでは? その調査にも国民の血税と、自衛隊員や研究者の命がかかっているのですから」

 それ故、石木は細めた目を閉じて目頭を一揉みすると、相手を小馬鹿にするような表情を浮かべ直し、話の続きを始める前に疑問を口にする。


「この事態に専門家は居ないのですから、時間は必要、そう以前にも説明したはずなのですがぁ、お忘れになられましたか?」


「馬鹿にしてるのか!」

 石木の表情と言葉使いに、顔を赤くした一人の議員は大きな声で叫び、その声に追巡して様々な野次があちこちで飛び交い始め、そんな周囲の様子に石木は表情を変える事無く資料に視線を落とす。


「・・・いいですか? はい、現在はドーム侵入時における人体への影響などを調べている段階ですので、結果を問われても調査中としかお答えできません」

 資料に向けていた視線を戻した石木は、目の前の野党議員に続きを話していいかと問いかけると、相手の反応を見て、しかし相手の言葉を待たずに話しを続ける。


「出来る事ならば、ドームに関して我々よりも多くの知識を、また経験を持つ人材が居るのであればどんな方でも、是非登用したいと思っております」


「・・・」


「・・・」

 また説明に付け加える様に、専門家や知識人の登用を口にし、その言葉を聞いた周囲の議員は与野党共にぽかんと口を開けて固まっていた。何故なら今の今までそんな情報は何処からも上がっておらず、今まさに初めて聞いた者ばかりであったからだ。


「い、石木防衛大臣に質問です。先ほどの登用と言う話ですが、それはドーム対策に民間人を使うと言う事でしょうか? その場合の立ち位置はどうなるのでしょうか?」


「石木防衛大臣」

 そんな石木の言葉を個人的なものだと考えた男性は、席に戻ろうとする石木に民間人の登用についての質問を釈明させるつもりで投げかけ、その質問に議長は石木に返答を要求する。


 政府が公的機関に民間人を登用することは世界中で割と有る事なのだが、前総理の時代にやり過ぎた経緯がある為、現政権では混乱を抑える為に控える傾向にあった。


「あーそうですな、使うと言う表現は非常に乱暴な言葉ですが? 有能であれば、民間だろうが何だろうが関係なく登用したいと思っております」


「・・・」

 そう言った経緯もあり、与党と石木を攻撃する足掛かりにしようと思った男性は、振り返りすぐに答えて見せる石木の姿に思わず目を見開く。


「またどう言う形式になるかはわかりませんが、特異災害対策基本法だけでの対応が不可能な場合は、新たな行政機関の設置も検討しております」

 男性議員は、国会の場で個人的な意見を述べた石木の発言を追及するつもりが、すでに検討している段階だと言われてしまい、席に戻って行く石木の背中を見るだけで二の句を継げなくなってしまう。


「いっちゃったよ」


「まぁいいのでは? 遅かれ早かれそうなるでしょうから・・・ただ専門家っているんですかね?」

 一方、石木の発言に驚いているのは野党だけでは無く、与党議員たちも同様に驚いていた。そんなざわめく国会の場で、石木の言葉を聞いていた総理は頭を掻きながらポツリと呟き、その呟きを隣で聞いていた副総理は、苦笑を洩らしながら声をかけ、さらに専門家と言う部分に首を傾げる。


「私に聞かれても・・・民間に居てくれたら御の字でしょうか?」

 元々この話は、検討はしていると言っても石木と彼等の三人でしかなされていない話であり、ほぼ間違いなくその方向に進むとは言え、まだまだ穴のある話であったのだ。副総理の素朴な疑問に、総理はため息交じりの困った表情を浮かべて見せ、もう一度頭を軽く掻く。


「某ネット掲示板が盛り上がっているそうだから、そのうち自称専門家とか出てくるんじゃないか?」

 そんな会話がなされている席に戻って来た石木は、疲れた表情でなんてことの無いような雰囲気の言葉を洩らしながら、ほどよくクッションの効いた椅子に深く腰を落とす。


「・・・自称専門家が真面な事を願いますな」


「目の前の連中よりはマシなのが出てくるだろ」

 どうやら彼ら三人はネットの世界に割と詳しいらしく、そこで交わされる様々な情報にもある程度目を通している様だ。しかし現在様々な対策に翻弄されている各官僚たちは、そんな不確定な要素に手を出す気は無いらしく、彼らはその手を出せずにいる官僚の背中を突くつもりの様である。



 いかがでしたでしょうか?


 ドームの発生により日夜戦い続ける人々には陰で暗躍する人も、観衆の目に映る人も、またドームに突撃する人もいる様です。彼ら彼女らの行動がどうなっていくのか、それを面白く描ければと思います。


 それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー

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