第百三十七話 日本の信念
修正等完了しましたので投稿させてもらいます。今回もごゆるりと楽しんでもらえたら幸いです。
『日本の信念』
ユウヒが早朝ドナドナされ、その後黒くて素早いナニカを電撃で駆除した翌日。
「我々は、唯一の核被害国として核兵器の使用を認めることはありません。たとえどんな圧力があったとしても、それは変わることの無い結論です」
その日、日本国の総理大臣は、国内と全世界に向けてドーム被害に対する日本の方針を訴え、同時に何らかの圧力が日本に対して行使されている事を匂わせていた。
「ドームと言う、今までに起きたどんな災害にも当てはまらない現象を前に、短慮な行動は控えるべきです。現在専門家とも協力し、安全な対策方法を模索しているところであります。国民の皆様には、日本の底力を信じて吉報をお待ちいただきたい」
彼が言う様に、ドームと言う存在は歴史上はじめて人類が直面した災害であり天災である。それ故焦りから各国で多種多様な対策が取られ、中には暴挙と呼べるような行為も繰り返されているのが現状であった。
「たとえどんな相手の圧力であろうと、我々は必ずこの日本と言う国と、そこに住まう人々の安全を守ることを誓います」
そう言った状況においても落ち着いて行動できると言う事は、そう言った姿勢を見せることが出来ると言う事は、非常に頼もしく映るものである。彼らがそう言った行動に出れるのも、ユウヒがもたらした情報故であるのだが、その情報を有効利用できるのも必要な能力と言えるのだった。
少なくとも、
「おお、今日の総理はいつもよりカッコイイな」
ノートパソコンの前でその演説を見ていたヒゾウにはかっこよく見えた様である。
「気迫を感じるな、顔固いけど」
またその後ろからモニターを覗いていたジライダも、その演説から気迫を感じている様だ。今も続く日本国総理大臣の演説を見ながら好き放題語る二人からは、今後への様々な期待感が感じられるが、机に一人向う人物はそんな期待感など気にもしていないらしく、背後から聞こえて来る声に背中を丸めると徐に振り返る。
「集中させる気ないよな」
その人物はユウヒである。彼は現在、いくつかの理由があって忍者達が現在ねぐらにしている実験ドーム自衛隊宿営地に来ていた。しかしそこはまだ日本側の宿営地であり、今はドームに入るための手続き待ちといった状況である。
「いや、だいぶ集中してんだろ」
「どんなん?」
背後から聞こえて来る会話に鬱陶し気な声を洩らすユウヒであったが、ヒゾウとジライダは後ろを振り返ると、ユウヒの言葉に対して真っ向から否定を口にしていた。何故なら彼の向かっていた机の上には、色々と書き込まれたメモ用紙や使用されている機材、さらには自衛隊から提供してもらった例の黒い石が、大小様々な大きさに加工され多数転がっているからだ。
「・・・魔力と素材が足りん」
朝から来るなり黙々と作業を続けていたユウヒは、この日3回目になる会話を始める。どうやらその理由は、魔力と素材と言う壁にぶつかり、作業が停滞したからのようであった。
「たぶんそろそろ許可出ると思うから、もうちょいまってくれ」
「おう、どの道ここじゃ回復薬飲んでも意味無いしな」
魔力を回復するためには、大気中に魔力が含まれている場所に行く必要がある。そのほかには、ユウヒが作って持って来た魔法薬を服用する方法もあるが、あまりに微量な含有魔力の為、真面な魔法を使えるようになる前に、薬品でお腹がいっぱいになる方が先であった。
「ゲームみたいにいかんの?」
「回復促進剤だからな、0に何掛けても0だろ? 多少魔力も入ってるけどほぼゼロと変わらん」
魔力の含まれた大気はドームの向こう側にしか存在せず、厳密には微量の魔力がドームから持ち出されているわけだが、すぐに拡散してしまい意味を成さない。またこの調査に用いられているドームは、自衛隊に許可をもらわなければ入る事は出来ず、現在ユウヒはその返答待ちの状態である。
「なぁる・・・だいじょぶなのか?」
「まぁ・・・魔力さえあれば何とかなるだろ」
魔力が少なくなって弄れなくなった黒い石を掌で転がすユウヒの説明に、現実の魔力について理解を深め頷くヒゾウは、ユウヒの魔力が少なくなった原因を思い出して何とも言えない表情を浮かべると、気遣うような声をユウヒにかけた。どうやら原因となった黒髪美女の容赦ない貫手を思い出してしまった様だ。
一方ユウヒは何の気遣いなのかわからなかったらしく、首を少し傾げると体に少しだけ残る魔力を意識しながら疑問形で返事をするのであった。
「材料は?」
持参した魔力回復薬入りの陶器小瓶を手に取って、中身を確認するように振るユウヒに、ジライダは材料について問いかける。彼らはユウヒが何を作ろうとしているのか詳しく知らないものの、ユウヒが石を弄る姿から日本にある材料では足りないことを察していた。
「・・・現地調達?」
「時間かかるなぁ」
ジライダの問いかけに視線を宙に彷徨わせたユウヒは、やはりどこかふわっとした声で現地調達と話し、そんなユウヒにヒゾウは先が長そうだと苦笑を洩らす。
「最悪貰う物だけもらってトンボ返りかな」
「俺らがどれだけ持ち出し許可に時間をかけたか」
「それを一瞬でOK貰うとか、くやしい! でもそこに痺れる以下略」
現在ユウヒの描く製作物に足りない物は、実験用も含めた謎の黒い石を多数、他には魔力と親和性の高い素材である。日本でも探せば見つかるかもしれないが、魔力が元々存在する異世界の方が手に入れやすいようだ。また、黒い石に関しては、ユウヒを含めた一部の人間しか真面に触る事も出来ない為、持ち出し許可はすんなり出たものの、持ち出しはユウヒ本人が行かなければならないとの事である。
「ショックの注文ですねわかりました」
「してねぇよ!」
何から何まで便宜が図られるユウヒに、石ころ一つ持ち出すだけでも様々な手続きが必要だったジライダとヒゾウは不満を洩らしながらユウヒを茶化すも、ニッコリ笑みを浮かべたユウヒに慌てて後ずさった。何故なら彼の持ち上げた手には紫電が走っており、今すぐにでも【ショック】が放てる準備が出来ていたからである。
「にしても、核万能論者多すぎだな、結局駄目だったんだろ?」
ユウヒの向ける手先から逃げるヒゾウを後目に、ノートPCへと目を向けていたジライダは、いつの間にか変わっていた動画が流しているドーム情報にため息を洩らす。そこにはドームに対する最も有効な解決方法は核攻撃であると言う論調が展開されており、その結果をユウヒから聞いているジライダの目には、それらがひどく滑稽に映っている様だ。
「今の技術レベルじゃわからないことが多すぎるんだよ。と言っても少し性急すぎる気もするが」
「何か裏があると?」
「忍者的に調べたい気もするな」
正確な情報を知っているからこそ、それらの発言が可笑しく思えるだけで、手探りでやっている以上様々な答えが出てきてもしょうがないと理解を示すユウヒであるが、それにしてもここの所の核万能論は可笑しくも感じているようだ。そんなユウヒの言葉に耳を傾けていた二人は、陰謀の匂いを感じたのかどこかワクワクした表情を浮かべる。
「どうせお金や利権の話しなんだろ? 一般人の俺には関係ないな」
「「一般人? はは、どの口が言ってるのやら」」
「よし戦争だな」
少年の様に純粋な好奇心で目を輝かせるジライダとヒゾウに、ユウヒは冷めた表情で一般人の俺には関係ないと呟く。しかしその発言は忍者二人にとって肯定できるものでは無かった様で、ぐるりと頭をユウヒに向けた忍者達は、即答かつはっきりとした声で全く同じ言葉を発した。その同調具合に親指を立て合う忍者達は、視界の端で迸る紫電にすっと表情を蒼くする。
「許可出たでござるよ、そしてユウヒ殿が一般人とか流石に無理でござろう」
「くっ! ここには味方が居ないのか」
思わず勢いで地雷を踏み抜いたジライダとヒゾウが冷や汗を流し、テントの隅に追いやられる中、紫電を手に纏ったユウヒの後方からテントに入って来たのはゴエンモ。彼は一部始終を見ていたのか、用件を告げるとそのままユウヒの一般人発言は流石に無理があると笑って話す。ゴエンモの言葉に紫電を治めたユウヒは、どこか不満げに、そして孤立無援の状況に悔し気な声を洩らすのだった。
「みかただよー」
「そうだぞー」
不満げな表情を浮かべ椅子に座り直すユウヒに、ほっとした表情を浮かべるジライダとヒゾウはすぐに動き出すと、両手を広げユウヒの周りで味方である事を強調し始める。
「だからなぜ煽るでござる。あ、拙者もみかたでござる故」
しかし、彼らの声は棒読みであり、その言葉使いと行動から明らかにユウヒを揶揄っている事は明白だ。実際に味方なのであろうが敢えてユウヒをおちょくる二人に、ゴエンモは呆れながらジト目を浮かべるユウヒに近づくと、自らも両手を広げ味方である事をアピールする。
「・・・よし異世界でストレス発散してこよう」
彼らの味方アピール大して怒る気にもなれなくなったユウヒは、ゴエンモの許可が下りたと言う言葉を思い出し立ち上がると、ドームの向こうに広がるまだ見ぬ異世界に向かうべく荷物を纏め始めた。
「うはwwwこれは魔王降臨で異世界終了のお知らせまったな「【フリージングヴェール】」・・・まて、その手はおろそうか勇者ユウギャーー!?」
そんなユウヒの完全なる八つ当たり発言に、ヒゾウは思わず吹き出し笑うと、ユウヒの八つ当たりで滅びる異世界を妄想してしまい、その妄想は口を突いて出てきてしまう。そんなことを言えばどうなるのか、彼が気が付いた時にはすでに遅く、手から白い靄を垂れ流すユウヒに顔面を鷲掴みにされるのであった。
「「・・・あぁ、キジも鳴かずば撃たれまい」でござる」
残り少ない魔力を使った魔法の力によって、手に氷点下の膜を作り出したユウヒからアイアンクローを受けるヒゾウの口の軽さには、流石のゴエンモとジライダも呆れるほかなく、今の状況にふさわしい言葉を思い浮かべると二人で同時に呟いたのだった。
自衛隊施設の一画で、夏にも関わらず妙に涼しい風が吹いている頃、広い部屋にも関わらず隅々まで十分冷やされたとある豪邸のリビングでは、ラフな格好でソファに座るパフェが片耳にヘッドセットを付けてノートPCと向かい合っていた。
「美幸」
「なぁにい?」
手にアイスティーの入ったグラスをもって画面を見詰めるパフェに声をかけたのは彼女の母親であり、美幸と言うのはパフェの本名である。そんな美幸ことパフェは、片耳に付けたインカムのスイッチを押しながら、テーブルにコップを置くと間延びした声で返事をしながらゆっくり振り返り母を見上げた。
「あなたの会社の子は引き上げられそう?」
「うん、元々みんな帰りたがってたみたいだから、準備は事前に終わってるって。アメリカの子は半分くらい残るけど巨大ドームからは離れるって言ってた」
スマホをポケットに仕舞いながら近づいてきたパフェの母である赤枝 生来は、パフェが代表を務める会社の状況について問いかけ、その問いかけにパフェは問題ないと言った笑みを浮かべて見せる。
どうやらパフェが代表を務める会社は海外にいくつか支社があるらしく、今回ドームに関する様々な影響から逃れるために、社員を日本に戻す様だ。しかし、元々アメリカ在住の人間などはそのまま残るらしく、代わりにドームから離れた地域へ避難するらしい。
「そうなの、それじゃうちで飛行機チャーターしておいたから、それで帰って来てもらいましょうか」
どうやらパフェがPCとにらめっこしていたのも、会社で行われている会議を見る為であったようで、ノートPCの画面に目を向けた生来は、その画面の中で慌てて立ち上がり頭を下げるパフェの会社の社員を見詰めると、軽い口調でそう話して微笑を浮かべる。
「・・・でもよかったの?」
「何が?」
ドーム被害を畏れて様々な動きがみられる企業の中でも、これほど過敏に動いている会社は少ない。会社の利益を考えると早々撤退と言う判断は難しく、しかし赤枝グループの長は決断した。その事について少しだけ不安なパフェは、ヘッドセットを外すと母を上目遣いで見上げ問いかける。
「ユウヒぃ君の話し一つで動いちゃって」
「ふふ、大丈夫よ。元々彼らが核を使うと報告を受けた時点で準備を進めていたし、正直これ以上うま味も感じないし」
赤枝と言う株式会社の公式な長はパフェの父親であるが、実質的には彼女の母親である生来がグループの長であり、それは公然の秘密であった。そんな生来が、今回グループ全体の撤退に際して一つの判断材料としたのが、思わずパフェがいつもの呼び名で言いそうになった、ユウヒにより齎された情報である。
元々撤退は予定の中にあったと生来は話すも、急遽撤退と言った判断になったのは、明らかにユウヒがパフェに話していたと言うドームの危険性によるものであった。自分以上にユウヒの言動を信じる母の姿に、どこかもやもやした感情を感じるパフェは、母をじっと見詰め口を開く。
「でも、かなり安く売却したってお父様も唸ってたよ?」
実際今回の事で支払った金額は大きく、設備の売却金額は急いだことによりそれほど多くならなかった為、ほぼ赤字と言ってもいい状況で、その事にパフェの父親はお腹を押さえて唸っていたとか。
「あの人が唸っていたのは夕陽君が気に食わないからでしょ。もう搾り取るだけ絞ったあとなんだから、いくらで売っても大して痛くないわよ」
「ふぅん?」
しかし生来曰く、パフェの父親が唸っていた理由は赤字と変わらない状況が原因ではなく、単純にパフェが好意を寄せるユウヒによるアドバイスに釈然としないものがあるからだそうで、実際に今まで稼いできた額と今後の見通しを鑑みても、会社としては全く痛くないらしい。
「それに、あの夕陽君が嫌な予感を感じたって言うじゃない。乗らない手は無いわ」
「む・・・むむむ」
会社の事にそれほど興味が無いパフェは、小首を傾げながらどうでも良さそうに相槌を打つも、生来が笑みを浮かべてユウヒの事を話す姿を見ると眉を顰め出す。どうやら母に信頼されるユウヒに僅かな嫉妬を感じた様であるが、しかしすぐに母の表情に女の顔が見え隠れしている事に気が付くと、今度は母親に対して嫉妬の感情が沸き上がって来たようである。
無言であるが只ならぬオーラを放ち睨み合う母娘の姿に、カメラの向こうの社員が戦々恐々としている頃、テレビに映し出された映像の中では騒がしい声で溢れていた。
「総理! 今回の発表で国民は不満の声を上げています。その事について何も思わないのですか?」
「どう言った不満でしょうか? 我々は常に日本に住まう人々の安全を考えて行動しています。現在も全力でドーム対策に挑み、救助実績を着実に積み上げています」
そこには日本国総理大臣へのぶら下がり取材が映し出されており、一人の記者が総理に刺すよな勢いでマイク向けながら、国民の不満を訴えている。しかし、そんな血気盛んな記者に対して、質問を受ける総理は不満と言う言葉だけでは、どんな不満なのか解らないと小首を傾げ、自分たちは最善を尽くしていると胸を張り答えた。
「しかし結局はドームを消すことが出来ないと言う事ではないですか? いつまでも出来ないことを隠し続けていても意味は無いと思われますが?」
総理が言う様に、現在も続々と救出者が生まれ、幸いなことに現状不明者以外で死者は出ていない。それだけでも十分な実績と言え、さらには現在報告こそ出来ないものの、ユウヒのドーム縮小計画は確実に前進している。その事が総理の自信となっているのだが、記者には総理の真意を見通すだけの力はないのか、それとも最初から真実などどうでもいいのか勢いを弱めず質問を続けていた。
「出来ないなどと私は一言も言っておりませんし、現在専門家と共に調査しております。危険を伴う方法は最終手段であり、現在は安全な方法を模索しているところです」
そんな記者の質問に目を細めた総理は、感情を表に出さない様に淡々と答えて行く。
「どう言った方法なんですか!」
「現段階ではまだ答えられませんが、順調に工程は進んでおりますので、何らかの結果が出次第御話させてもらいます」
今の段階でユウヒの実験を公表する事は不可能な様である。何故ならユウヒの方法は完全に地球の物理学の外の話であり、十分な理解が進むまでは無用な誤解を生むため説明は控えるべき、と言うのが政府の見解だからだ。
「それは無いのと一緒ではないですか! 支持率を気にしての発言と取られても仕方ないですよ総理!」
「ご自由に、我々はなすべきを成すだけですから。・・・以上ですか? ならそちらの方質問をどうぞ」
それ故答えられないと言っており、結果が出たら話すと言っているのだが、記者にとっては無いのと一緒であるらしく。考え方が根本的に違う相手にこれ以上の説明は無駄だと感じた総理は、ニコリと生暖かい視線を記者に向けると、それ以上話さない男性を確認して次の質問者を指名する。
「それは! 退陣も念頭にあると言う事ですね!!」
しかし、指名された女性が口を開くよりも早く、先ほどから質問を続けていた男性が声を荒げて割り込む。
「・・・ちょっと言ってる事がわかりませんね」
「この人達、いつもこんな感じだよな」
「石ちゃんならぶち切れてるところだよな」
男性記者の言っている事が斜め上を行き過ぎ、流石の総理も本音が口を突いて出てしまう。そんなテレビの映像をノートPCで見ていたジライダとヒゾウは、白けた表情でよくぶら下がりに出てくる記者を見ている。何かと斜め上な質問をする記者は、こういったニュースを見る者にとって割と有名らしい。
「何見てんの?」
「総理のぶら下がり」
「動画サイトに上がってるんだお」
「コメントが草原になっているでござる」
忍者達が呆れた空気を垂れ流しながらPCを見ているテントに入って来たユウヒは、PCの前で固まる彼らに不思議そうに問いかけ、背後から問いかけられた忍者達は顔だけで振り返ると何故かきりっとした表情で応える。どうやらその映像は動画サイトに上げられたものであるらしく、リアルタイムで視聴者からコメントが上げられている様だ。
「ふぅん? まいいや、さっさと行くぞ」
「あいよー」
忍者達の前に置いてあるPC画面に目を向けたユウヒは、そのコメントの半分以上が『w』で埋め尽くされている事に何とも言えない表情を浮かべると、肩を竦めながら三人に行動を促す。
「そういえばユウヒ殿」
「ん?」
各々、片手に持てる程度の荷物を取り出す忍者達を待っているユウヒが、映像の中の総理に目を向けていると、ゴエンモが何か思い出したようにユウヒへと声をかける。
「自衛隊からもユウヒ殿に作って貰いたいものがあると、話しが出ていたでござるよ」
キョトンとした表情を浮かべたユウヒに、ゴエンモは現在ドームの向こうに居る部隊の隊長の依頼を思い出した様で、その口ぶりからそれはユウヒにしか作れないものである様だ。その言葉を聞いたユウヒは目を細めると、はらりと垂れ下がった前髪の向こうで目を輝かせる。
「ほう・・・それは楽しみだ」
「あ、これマッドな奴や」
どうやら何かの勘が働いたらしく、楽しそうな笑みを浮かべるユウヒ。そんなユウヒの姿に忍者達も何かの勘が働いた様で、ユウヒが引き起こすであろう近未来に、ヒゾウは思わず呟くのであった。
いかがでしたでしょうか?
方針を決定し、信念を世界に発表した日本。しかしその信念もユウヒの実験が成功しないことには推し進められない様です。そんな重責どこ吹く風なユウヒは、新たな異世界へと一歩足を踏み出す。
それでは次回をお楽しみに、またここでお会いしましょう。さようならー




