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ワールズダスト ~現世に現れし黒き森~  作者: Hekuto
第一章 救出と救済

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第百二十六話 バカンスの終わり

 修正等完了しましたので投稿させてもらいます。楽しく読んでもらえたら幸いです。




『バカンスの終わり』


 腹を空かせたパフェにせっつかれて軽い食事を用意したユウヒ。献立はエルフに貰った野生の芋と、獣人が狩って来たおすそ分けの鶏肉で作った塩スープであった。素朴な味ではあったがとろみのあるスープは好評で、パフェは食べ過ぎたのか居間で横になっている。


「帰ったらいいの?」


「ああ、それまではすまんが機体内待機だ」

 食休みにメロンがユウヒ作のハーブティーを淹れる一方、居間を後にしたユウヒは格納エリアで休む一号さんの肩に乗って彼女と話をしていた。どうやら先ほどまで二号さんと話していた話しをしている様だが、一号さんの声は心なしか弾んでいる様に感じられる。


「大丈夫だよ! 連続で一か月くらいは平気で戦い続けられるから!」

 ユウヒの申し訳なさそうな声にカメラアイを瞬かせた一号さんは、首を少しだけ肩の上のユウヒに向けると明るい声で大丈夫だと答えた。事実ゲーム上でのフレーバーテキストでも、彼女達は数か月の間休みなく戦い続けたと言うものがあり、その事を思い出したユウヒの表情は僅かに引きつるのだった。


「・・・今日中に、と言うより夜に帰るからそれまでな、これ以上の刺激は体に悪いだろうからな・・・主にリンゴの精神面に」

 一号さん達の性能を再確認したユウヒは、苦笑を洩らしながら少しの辛抱だと話すと、居間で疲れたようにお茶を啜るリンゴに目を向け溜息を洩らす。


「えー? 僕、精神攻撃系装備なんて持ってないんだけどな?」


「俺も載せた覚えはないな、換装は出来てるみたいだがどこまで出来るんだ?」

 ユウヒの何とも言えない呟きに、一号さんは間延びした声を洩らすと不思議そうな声色で呟く。彼女の装備に精神攻撃系統の装備が無いであろうことは、ユウヒも理解して居るのだが、そういえばどんな装備が使えるのかと考えながら今自分が座っている一号さんの装甲を撫でる。


「えっと1から5番セットまでと12番が行けるよ!」


「・・・・・・12番は禁止な」

 黒くて硬くて光沢のある装甲を撫でていたユウヒは、顔をこちらに向けて話す一号さんの声に思わず動きを止めた。何故なら、彼女の話すセットと言うものにユウヒは覚えがあり、彼が設定したものと同じであれば、1番から4番は特に問題ない、5番に関しても彼女達がここに来た時に見ている。


 しかし、12番と言う態々ほかの装備セットと離しているものに関しては問題があるらしく、顔から気持ち悪い汗を噴き出したユウヒは、神妙な顔で使用禁止を一号さんに申し渡すのであった。


「使わないの? 分かった!」


「お兄ちゃん?」


「ん? どうした?」

 ユウヒの使用禁止令に不思議そうな一号さんであったが、すぐに明るく返事を返す。そんな風にユウヒが世界滅亡の危機を回避していると、一号さん用のハンガーラックを登って来た流華が、袖で額の汗を拭うユウヒを不思議そうに見上げ声をかける。


「声が聞こえたから・・・何かあったの?」


「特には何もないが、しばらくこっちに来れないからなその打合せの様なもんだ」

 居間から離れたまま戻らないユウヒを探していた流華は、ユウヒの足下まで登ってくると、妙に汗を掻いている兄の姿を不思議そうに見詰め何かあったのか問いかけ、しかし返ってくる言葉に納得のいかない様子で首を傾げた。


「そっか・・・もう来れないのかな?」


「わからん。が、まぁどうしても来たくなったら連れて来てやるよ」

 ユウヒの様子に不思議そうな表情を浮かべる流華は、次またここに来れるかわからない事を思い出すと、少し寂しそうに呟く。寂しそうな流華を一号さんと共に見詰めたユウヒは、一号さんの肩から彼女の下に飛び降りると、少し髪の伸びた頭を撫でながら空気が重くならないように明るい声で励ます。


「うん、わかった。1号さん達は? 日本に連れて行かないの?」


「いや、連れてったら大変だろ・・・」

 頭を撫でられてはにかんだ笑みを浮かべた流華は、離れて行く手を少し名残惜しそうに見つめると、その先にあった一号さんの大きなカメラアイを見詰める。そんな彼女は何を思ったのか、日本に一号さん達を連れて行かないのかユウヒに問いかけ、問いかけられたユウヒはどこか呆れた様な顔で首を横に振った。


「僕たちは呼ばれれば何時でも行けるから! ゲートミサイルも補充済みだよ!」


「ふぅん?」

 ユウヒの呆れた様な表情に少し不思議そうな表情を浮かべた流華は、申し訳なさそうな顔で大きなカメラアイを見上げ、そんな彼女の表情に一号さんは明るく自信に満ちた声で答える。


「・・・(テクノロジー獲得戦争からの地球滅亡とか起きそうで怖い)」

 ゲートミサイルが何かわからない流華がキョトンとした顔で首を傾げていると、その隣でミサイルの詳細やフレーバーテキストを記憶しているユウヒが、何とも言えない表情で見つめ合う流華と一号さんを眺めていた。


 ゲートミサイルとは一号さん達がこの世界に来るために使い、その余波でアミールを慌てさせた物である。使い方によってとんでもない威力の兵器になるそれと、同じ装備セットに入っていた危険物を一つ一つ思い出すユウヒは、彼女達が万が一にも日本に降臨した時のことを考えると、過大とも言えない妄想に頭を痛めるのであった。





 ユウヒが頭を僅かに痛めてから小一時間後、食休みを終えたクマ達は荷物を纏め、白く光る壁のある世界樹の根の中に集合していた。


「落ち着いたか?」


「問題ないわ」

 木の根で出来たベンチに座るクマは、対面のベンチに座るリンゴに声をかけている。声をかけられたリンゴは、いつもの様な憎まれ口をたたく事も無く短く返答しており、いつもと違い心に余裕がない様子が窺えた。


「リンゴちゃん、目が据わってるわよ?」


「くっ・・・ユウヒにまだ驚かされるなんて、屈辱!」

 大丈夫と言いながらも目の据わっているリンゴに苦笑を洩らしたメロンは、悔しそうな表情を隠そうともしない彼女の姿に困った様に笑う。元から負けず嫌いなリンゴであるが、特にユウヒに驚かされることは納得できない様だ。


「なんの勝負なんだか、メロンさんは大丈夫ですか?」


「うふふ、流石に驚いたわぁ」

 出会った当初から何かと周囲を驚かすユウヒに、翻弄されることの嫌いなリンゴが苛立つ一方、昔っから慣れっこなクマは肩を竦めて諦めの境地に至った表情を浮かべる。また、彼が心配するメロンは元からあまり驚かない質であるものの、流石に一月とかからずに出来上がった町や巨大な外壁、さらにそれらを作り出した一号さん達の存在には驚いたと笑う。


「その割には余裕そうっすけどね」


「えーそんな事無いわよぉ」

 驚いたと言いながらいつもと変わらぬ笑みを絶やさないメロンに、クマは肩を少し落とすとジト目を向け、そんな視線と言葉を受けたメロンは少しだけ心外そうな声で話すと、すぐにコロコロと笑い始める。


 誰が見ても驚いている様には見えないメロンに肩を竦めたクマは、太い樹の根のベンチに体重を預けながら、今も楽し気に動き回るパフェを横目にため息を漏らすのであった。


「おーい、準備できたかぁ」


「おう、準備出来て暇だったからお前の愚痴溢してたわ」


「俺の?」

 日本と名もなき異世界の境界から漏れる光が周囲を照らす中、ユウヒに対する愚痴をこぼしていたクマ達の下に、愚痴の対象の声が掛かる。世界樹の外から樹の根で出来た一室に入ってきたユウヒは、その背に精霊たちを引き連れながらクマ達に声をかけ、返ってきた返答に首を傾げた。


「わ、私は言ってないよ!?」


「いや、まぁ言っててもいいけどな」

 どうやら今回はクシャミが出なかったようで、少し不思議そうな表情を浮かべるユウヒは、慌てて否定する流華の頭を撫でながら構わないと笑う。実際何かとやらかすユウヒにとって、他人からの愚痴は良いも悪くも慣れっこなのであった。


「もう行くのか?」

 頭を撫でられながら、何とも言えない心配げな表情を浮かべる流華にユウヒが小首を傾げていると、光る壁の周りをぐるぐる回っていたパフェが小走りでやってくる。日本に戻れると言うことで興奮冷めやらぬのか、先ほどから落ち着きのないパフェ。


「向こう側の時間がちょうど良いっぽいからな」


「真夜中のスニークミッションだな!」

 しかし実際は、友人たちと共に真夜中の街に繰り出すと言う、普段の彼女であれば中々体験できないことに対する興奮の様で、また人目を忍び家に帰ると言う行為にさらなる興奮を覚えのか、彼女の瞳はさながら、遊園地の人気アトラクションに搭乗し、スタートを目前にした少年の様である。


「・・・その元気は今からスニークするって雰囲気じゃないけどな」


「む、気合いはいつでも必要だぞ?」

 こっそりと行動すると言う意味でスニークと言っているパフェであるが、傍から見て今の彼女がこっそりと行動できるとは思えず、今にもスキップしだしそうなパフェに飽きれるクマは、心外さと不思議そうな感情が混ざった表情で小首を傾げる彼女の姿に肩を落とす。


「ほどほどにしなさいね。それじゃ行きましょうか」

 パフェと見詰め合い、落ち着いて走らず自分勝手な行動は慎み危険なことはしない様にと注意するクマと、その注意に親指を立て元気よく任せろ! と答えているパフェ。かみ合わない二人の見詰め合いにため息を洩らしたリンゴは、背筋を伸ばし直すと彼らに一声かけてユウヒに出発を促す。


「おう、大丈夫か?」


「ええ、問題ないわ」


「・・・そか」

 出発を促され振り返ったユウヒが見た彼女の顔には笑みが浮かべられている。しかしその笑みは顔の下半分だけであり、まだユウヒへのいろいろな感情が残っているのか目は全然笑っていなかった。


 大丈夫と言って無言で見つめてくるリンゴに一歩後ずさったユウヒは、じりじりと逃げる様に光る壁へと向かう。


「・・・(フラグ?)」

 そんな二人の様子を見詰めていたメロンは、小首を傾げている流華の隣でこの後の展開に一抹の不安を感じるのであった。





 異世界と日本を区切る光る壁。自宅へ帰還するべく、その壁を前にして一列に並んだ俺たちのそばで、俺について来た精霊たちも乱雑ではあるが一列に並んで見送ってくれている。


「お父様、またのお帰りお待ちしてます」


「おう、またな」

 先頭で笑みを浮かべるココから見送りの言葉を受けて、俺は申し訳なさを感じながらも笑みを浮かべて再会を約束した。


「敬礼!」


『!』


 にこにことした笑みを浮かべるココの隣では、どこで見て来たのか軍人や警官のような敬礼を見せ見送ってくれる精霊たち、ただ残念なのは体格の差もあるのかもしれないが、敬礼がてんでばらばらであり、海と陸の違いどころか右手だったり左手だったりと言った有様である。


「・・・それじゃ俺が先行するので付いてきてくれよ」


「うむ!」

 ただバラバラではあるものの、だからこそ微笑ましさを感じる精霊たちの見送りに、思わずほっこりとした気分に浸った俺は、後ろで今にも駆けだしそうな雰囲気を出す姉さんに声をかけると、右目を瞑って一歩足を踏み出す。


「【大楯】【探知】・・・行くぞ」

 しかし念には念を入れるため、何かあった時の為に久方ぶりに防御専用の魔法である【大楯】を、そして自然と使っていることが多い【探知】をかけなおし、神妙な声と共に光る壁の中を潜り抜ける。


『・・・』


 少し進み立ち止まった場所は、何度か出入りしている暗い路地裏の一画。俺に続いて日本に帰還する友人達は、明るい場所から真っ暗な路地裏に出てきたせいで目が慣れないのか、立ち止まり無言で辺りを見回していた。その中には姉さんの姿もあり、今は俺と同じく片目を瞑っていたらしいクマに、ふらふらと歩いて行かない様にと頭を掴まれ固定されている。


「問題ないか・・・やっぱり探知範囲が狭い。魔力がない地域での魔法は実用が厳しいな」

 短時間とは言え対策していた分だけ暗さに目が慣れるのが早かった俺は、未だに目を擦っている流華に目を向けた。恰好は学校の制服で背中には使い慣れた感のあるリュックを背負っている。


 ほかの女性陣もそれぞれ恰好が違っており、先ほどまでと同じジャージ姿の者は一人もいない。その先ほどまでと違う姿に妙な違和感を感じるが、同時に新鮮な感覚もあって俺は思わず視線を切った。


「おお! こっちに来た時のままの姿だ」


「声が大きいって姉さん」


「お土産は有ります」


「よかったわね」


「はい」

 俺が視線を外した場所では、ようやく目が慣れてきた姉さんたちが自分たちの格好を確認し始めたようで、大きな声を上げる姉さんにクマが注意をしている。またお土産として持ってきた物はしっかりと手に握られていたらしく、流華の嬉しそうな声に思わず笑みが浮かんでしまう。


「けっこう暗いな」

 ドームの黒い壁により袋小路となってる路地裏から顔を出し、細く入り組んだ路地を確認していると、姉さん達・・・と言うより主に姉さんを落ち着かせたクマが隣から同じように顔を出し、夜の路地裏の感想を呟く。


「目を慣らしたら行こう」


「おう」

 普段はもう少し灯りがあるものだろうが、今は規制線の内側と言うこともあってか人の気配もない。あるのは何かの機械に取り付けられたパイロットランプや、デジタル表示の僅かな光だけである。


 たったそれだけの灯りでも目が慣れれば意外と明るいもので、そのことを確認した俺は隣のクマに声をかけ、もうしばしの間この場に待機することを決めたのだった。





 路地裏で目を慣らす数分の間、目を閉じて待機したユウヒ達が行動を開始してやはり数分、そこまで広くない入り組んだ路地を歩いていたユウヒ達は、とある場所でその歩を止めている。


「こっから向こうは開けてるから少し様子を見るぞ」


「そうだな・・・む」

 人に見つからない様にと交互に周囲を確認しながら進んでいたユウヒとクマであるが、彼らの先に現れたのは広い通り。そこは公道に続く道とあって広く、またアーケード街に接続する道とあって周囲からの視界も良好である。


 それ故しっかりと周囲の確認を行い、人の目や一応監視カメラの有無などを確認するクマ。そんな彼が後ろに声をかけると、声をかけられたユウヒは返事を返そうとするも、その言葉を途中で切って驚きにも似た声を洩らす。


「どうし―――」

 ユウヒの呟きにクマが振り返り、パフェが不思議そうな顔でビル陰に隠れたユウヒに近づいた瞬間、彼らの言葉を消し去るような勢いでその場が光に満たされる。


「まぶしい!?」


「こっち来なさい!」

 光の原因は通りの反対側に設置されていた大量の投光器であった。突然の光に目を閉じたパフェは、その光の強さにフラフラと足を縺れさせると、片手で顔の前に久を作りまぶしそうに目を細めるリンゴによって路地の奥に引き戻される。


「おいおいなんだよ、眩しいじゃねぇか」

 一方、元々路地の奥に居た流華とメロンは被害を逃れ、ユウヒの声に振り返っていたクマも難を逃れてビルの陰に身を潜めなおすと、細めた目で外の様子を窺っていた。


「・・・【範囲拡大】」

 その隣では、初めてかもしれない真面な活躍で心なしか嬉し気な【大楯】に目を守られたユウヒが、スモークガラス越しのような視界にほっと息を吐くと、【探知】の魔法をさらなる魔法で強化している。


「おにい・・・」


「これは、自衛隊と警察? 前はこんなに居なかったんだが・・・」

 路地の向こうから注がれる光で眩しそうに目を細めた流華は、光に怯むことなく立つ兄の背中を見詰め心配そうに声をかけるが、彼女の声は届いていないのか訝し気に呟いていた。


 どうやらこの光の発生元は自衛隊と警察のどちらか、もしくは両方の様で、ユウヒの呟きを聞く限り彼が最後に来た時よりも、強化された【探知】に引っかかる数が多いようだ。


『こちらは陸上自衛隊ドーム対策班です。そこに隠れているのは解っています。そちらに反抗の意思がない限り手荒な事は行いません』


 現在置かれた状況に対して特に慌てることの無いユウヒが、ようやく流華の不安気な表情に気が付き笑みを浮かべていると、光の向こうから拡声器によって反響した声が聞こえて来る。その声はユウヒ達が隠れていることが解っているらしく、出てくるように促すものであった。


「なんで・・・」


「赤外線か? っておいマジかよ、ほぼ戦車って触れ込みの最新式装甲車じゃねぇか・・・」

 拡声器による大きな声が響き続ける中、相手が自衛隊である事に不安を覚える女性陣。一方様子を伺っていたクマはだいぶ目が慣れて来たのか、そっと覗いた先に駐車されている車両を目にすると驚いた声を洩らす。


「敵意は無さそうだが、ふむ・・・」

 砲塔が無いにもかかわらず戦車と変わらぬ戦闘力があると言う装甲車の存在に、見開きそうになる目を細めながら驚くクマの隣から、そっと顔を出したユウヒは、しかしその大きな装甲車から直接的な脅威は感じない様で、右目を僅かに輝かせると興味深そうな声を洩らしている。


『これからそちらに隊員を数名送るので指示に従ってもらいたい。尚、安全の為に武器を携帯しているが攻撃の意思はありません』


「どうするの?」

 様子を伺っている間にも状況は刻一刻と変わっており、路地から中々出てこないユウヒ達にしびれを切らしたのか、路地前まで自衛隊の隊員がやってくると言う。そんなまるで最後通告の様な状況に、流石のリンゴも険しい表情で心配そうな声を洩らす。


「え? 普通に指示に従うけど?」


「大丈夫なの?」

 しかしそんな深刻そうなリンゴに対して、ユウヒはきょとんとした表情で不思議そうに首を傾げて答える。どうやら元から大人しく指示に従うつもりであったらしいユウヒは、様子を伺ったことでその方針を確定した様である。


「問題ないだろ、一応ドームに入ったからって犯罪者になるわけでも無いし、入るなって言うのも強制じゃないからな」


「ユウヒ君の勘かしら?」


「そんなとこ」

 現在ドーム関連の規則は大半が努力義務などで、破ったからと言って即逮捕と言う事も無く、大半が注意であるがためにネットの自称研究者たちも生存し続けられているのだ。ただ、何度も掴まって注意されていれば当然注意だけでは済まず、中には入院する者も出てきており、現在は厳罰化の動きが出てきていた。


 そんな事情をある程度把握しているユウヒは、しかし判断の大半を占めるのは情報ではなく、いつもと変わらぬ笑みを浮かべるメロンさんの問いに、勘だと答える。


「ふむ、なら問題ないな」

 ユウヒの異常な勘は、この場に居る者全てが知っており、その為ユウヒが勘だと口にした事にパフェが頷くのを見て、皆苦笑と共にすこしだけホッとしたようだ。


「自衛隊です! 安全は保障するので出てきてもらえますか?」

 僅かに緩んだ空気も束の間、自衛隊員の声が聞こえると流華を中心に緊張が走る。相手を刺激しない為と自分たちの安全の為、路地前で待機している数名の気配に無言で頷き合うと、ユウヒが路地前へと進み出た。


「あー出て行くので少し灯りを落としてもらえますか? 明るすぎて目が痛いそうなんで」


「わかりました。頼む」


「はい!」

 特に害意が無いことを示す為に努めて丁寧に声をかけたユウヒに、自衛隊員の男性はなるほどと頷くと、女性隊員に声をかけ投光器の光量調整を指示する。


 男性の指示から一分ほど、半数以上の投光器が灯りを落とし、ユウヒ達の隠れている路地を集中的に照らしていた照明は、一部が消され一部は広い範囲を照らすことで刺すような光から柔らかな光へと変わって行く。


「じゃ出ますんで、撃たないでくださいね」

 眩しくなくなり、流華達が目をしっかり開くことが出来ている事を確認したユウヒは、黙して頷くと路地の外に一声かけて路地から姿を現す。シャツにジーンズと言うラフな格好のユウヒは、困った様な笑みを浮かべながら胸の前に両手を上げて歩み出て、その後ろからリンゴとメロン、さらにその後ろに隠れる様にして流華とパフェが進み出る。


 普通、若い女性が複数人現れ、中に未成年の少女まで居たらそちらに目が行き、男性達を警戒しそうなものだが、


「あなたは・・・お名前は天野夕陽さんでよろしいでしょうか?」


「・・・何か指示されてます?」

 銃を下ろしていた男性自衛官は何故かユウヒの顔をじっと見詰めると、誰何するわけでも無く確信をもってフルネームで確認をとった。


 男性自衛官の問いに、いくつかの可能性が脳裏をよぎったユウヒは、じっと男性自衛官を見詰めた後引き攣った笑みで首を傾げるのだった。


「皆さんの保護及び夕陽さんに協力要請が出ています。詳しくお話を、あと皆さんには防疫の為の検査を受けてもらいます」


「・・・わかりました。と言う事なので指示に従ってくれ、何かあれば叫べば対応するから」

 自衛官がユウヒの名前を知っていて、さらに協力要請などと言う言葉が出てくる原因となりそうなことに、いくつか思い当る節があるユウヒは、男性自衛官のハキハキとした言葉に少し考えこむと了承し頷く。


 話を終えたユウヒは、友人たちに振り返り何が起きてもすぐ駆け付けるから安心してくれと、いつもより少し爽やかに感じる笑みを浮かべるのだが、


『ユウヒナニシタ?』


「おにいちゃん」

 その笑みに返って来た表情は一様に怪訝なものや心配そうなもので、言葉はユウヒが何かやらかしたこと前提のものであった。三対のジト目にショックを受けたユウヒは、助けを求め流華に目を向けたのだが、彼女の目はまるでダメな父親である勇治に向ける様な目をしており、友人たちの視線以上にショックを受けたユウヒは思わずふらつき後退る。


「・・・ゲセヌ」

 妹と友人達からの理不尽なジト目の圧力に晒されたユウヒは、がっくりと肩を落とすとその背に哀愁を背負い、絞り出すような声で呟くのであった。



 いかがでしたでしょうか?


 バカンスも終わり日本に戻って来たユウヒ達、しかしすぐにまた騒動に巻き込まれるあたり騒動の種に欠かないユウヒ。何が起きているのかわかんらないものの、とりあえずユウヒは心に浅く無い傷を負った様ですね。


 それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー


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