第十話 とある掲示板の賑わい
どうもHekutoです。
修正等完了しましたので投稿させて頂きます。皆様のお暇のお供にでも楽しんで頂ければ幸いです。
『とある掲示板の賑わい』
思わぬところで流華の足取りが見つかった夜、夕食も早々に片付け夜晩くまで机に座り続けたユウヒは、ネット上に点在する様々な情報に目を通した結果、そこから一般的なドーム知識の中でも信憑性の高そうなものを纏める事が出来ていた。
一つ、ドームが現れた場所に居た人物は必ず飲み込まれている。既に日本だけでも千人を超える人が被害に合っているらしい。
一つ、脱出する事は可能で、既に半数は帰還していると見られている。同時に、興味本位からドームと接触し未帰還者となる者が居り、その人数は未だ増え続けて居るようだ。
一つ、ドームはワープ装置か、もしくは異世界に繋がっている。帰還者曰く、気が付いたら今まで居たところとは全く別の場所に居た。近くに白く光る扉の様な物があったので其処に入ったらドームの前だった。
一つ、このドームは地球上のいたるところで発見され、その規模も様相も千差万別だが、揃って真っ黒な色をしており、どこか黒い森の様な模様がある。
しかしその内容には、ほとんど断言できるだけの確固たる証拠は記載されておらず、情報の多さや諸外国の反応も含め、割と信憑性があると言った程度である。
一般的な知識を収集し終えたユウヒは、ドーム関連掲示板まとめサイトから、特に活発な交流がなされている慣れ親しんだサイトにたどり着き、自らも感じていた違和感に導かれる様に、その掲示板の熟読を開始した。
以下、ユウヒが目を通した掲示板の一部抜粋である。
【狂喜】クロモリプレイヤーから見た現実世界【乱舞】6スレ目 一部抜粋
34:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
だからどう考えてもこれはクロモリオンラインの黒き森だろjk
35:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
ドームって出入自由らしい俺も実際入って来た。でも怖かったからすぐ戻って来たけどこれその時の写真
36:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
うはwwお前クロモリコスプレで入ったのかよwww頭良過ぎwwwwwww
37:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
いや入った時は普通にチェックのシャツにジーパンだったけど気が付いたらこれだった。これってクロモリの初期装備だよな? 戻ってきたら元の服に戻ってたけど
38:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
マジか! 不思議現象キター! 俺も逝って来る!
39:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
字がwww
40:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
まちがってはないなwww
41:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
嘘つき通報しますた。騙されるなお前ら! そいつの言った事実行したら彼女と別れる事になるぞ!
42:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
なぜにwwwつか彼女いねぇし! 自慢? 自慢なの?
43:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
42wwwうはwwwナカーマwww
44:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
俺もドームに入ったんだよ。でもその時一緒に入った彼女が・・・
45:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
なんだよもったいぶって
46:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
速く言えよヘタレてお前だけ入らなかったんだろ?
47:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
それはフラれるわwww
48:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
ちげぇ! ちゃんと入ったよ! でもドーム入ったら彼女全裸になってたんだよ!
49:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
・・・は?
50:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
・・・いやいやそんなの写真も無いのに信じられないでしょ
51:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
信じてほしかったら写真張れよjk
52:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
おまえら完全に下心見え見えだなwwwww
53:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
は? むしろ下心が俺だし・・・言わせんな恥ずかしい
54:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
みんな纏めて通報シマウマ
55:クロモリの下心冒険者@転載禁止
シマウマさんちーっす
56:名無しのクロモリ冒険者@転載禁止
キャーシマウマサーン!
57:縞々のクロモリ冒険者@転載禁止
下心さんちーっす
このスレはこの後、全裸になった女性を妄想しはじめ書き込みが加速していく。
ここでクロモリオンラインにおける『黒き森』の設定について軽く触れておこう。
元々この黒き森と言うのはクロモリオンラインの根幹に関わる設定ではあるのだが、最後まで語られずにゲームが終わってしまった為、語れる内容も既に判明している部分だけである。
クロモリオンラインと言うゲームのプレイヤー達は、元々地球に住む一般人と言う設定であり、そのなかで年齢や職業など細かな設定を決めて旅立つ先が『黒き森』であった。
その『黒き森』とは、異次元に散らばる世界の可能性の欠片であるとか、古き世界の残滓であると言われ、突如としてその異世界の欠片が地球を侵食し始めるところからこの物語は始まる。そして最後には全ての浸食を抑える事で、ゲームクリアになるのではないかと言うのが、プレイヤー達の予想であった。
しかし、その予想は予想のままに終わってしまい、だが彼らの予想を遥かに超えて現実となった『黒き森』の姿に、クロモリプレイヤーの大多数は困惑に僅かな歓喜を滲ませたと言う。
そんな不謹慎なプレイヤーの一部は非常に活動的だったらしく、身近に現れた超常現象に対し、理性を抑制してしまうほどの興奮を覚えてしまったようだ。
【人体】ドームについて調べるクロモリプレイヤーの会【実験】10スレまとめより
1:名無しの黒い調査員@転載禁止
これまでの検証により確定したと思われる事実。
一つ、通称ドームは出入りが自由に出来る。(警察と自衛隊に捕まらなければ)
一つ、クロモリにプレイヤー登録している人間は中に入ると初期装備に変わるらしい。
一つ、プレイヤー未登録者は脱げるらしい。脱げるらしい・・・大事な事なのでry
一つ、ドームの向こうは本家と同じく異世界らしい。
一つ、クロモリのプレイヤー登録だけは、今でも出来る。だけは、帰って来てくれry
初心者は最初に過去ログを熟読する事。
無理はしない事。
何が起きても自己責任なので荒さない事。
確定とか言いつつ半数以上がらしいと言うところには触れないであげる事。
125:名無しの黒い調査員@転載禁止
自衛隊と警察の展開が早すぎてどんどん調査範囲が狭まって行くんだが、東京はまだ穴場が多いので問題無いけど地方どうなん?
126:名無しの黒い調査員@転載禁止
わが王国は残り一つだけ、入れなくなるのも時間の問題・・・突っ切ればわんちゃん
127:名無しの黒い調査員@転載禁止
わんちゃんにわんわんおーされるんですね解ります。何故なら齧られた私のお尻が痛いからです。
241:名無しの黒い調査員@転載禁止
報告! 自衛隊がドームに入ってるのを見たぞ! すぐに出て来たけど・・・ハァハァ、女性隊員さんの顔が真っ赤だったのは御察し、だから掲示板を見ろとあれほど・・・(よくやった偉い人!)
242:名無しの黒い調査員@転載禁止
ガタッ!
243:名無しの黒い調査員@転載禁止
ガタガタ!
244:名無しの黒い調査員@転載禁止
ガッシャーン!
245:名無しの黒い調査員@転載禁止
ガタガタガシャーン!
246:名無しの黒い調査員@転載禁止
ドンガラガッショーン!
247:名無しの黒い調査員@転載禁止
242-245 落ち着け、と言うか仲良いな・・・
246 は、何か違う・・・
と言うか国の人はここの話とか知らないのか? うちらの業界じゃ結構有名な話だよな? とりあえず写真はよ
689:名無しの黒い調査員@転載禁止
やばい、知り合いがドームに行ったまま帰って来ない。どうしよう警察に言っても無理だよな・・・どうしよう。
691:名無しの黒い調査員@転載禁止
救助要請はドーム被害者の会板でよろ・・・まぁ、自分達で入った奴にまで手はまわせないだろけど。誰かクロモリプレイヤーで救助隊編成しろよ、高レベルプレイヤーは補正が入るんだろ?
697:名無しの黒い調査員@転載禁止
691の話はまだ検証されてない眉唾なんだけどな? てか補正って何よ? 現実でありえる分け?
878:名無しの黒い調査員@転載禁止
皆! 軍事板に行くんだ! すごい動画が張られてるぞ!
884:名無しの黒い調査員@転載禁止
え? 何これ米さん何やってんの?
885:名無しの黒い調査員@転載禁止
等々やっちゃったかぁキノコ雲すげぇな
これはあれだろ? 米さんに発生したドームの一部に拡張傾向が見られるって、めちゃくちゃでかくなった奴だよな? 他にもいくつかあったけど、どこも大国(領土的意味)ばかりらしいな
886:名無しの黒い調査員@転載禁止
うわ、雑草刈りでしょうかね? この調子なら核使うのも時間の問題だなうん
887:名無しの黒い調査員@転載禁止
流石にそれは無いわぁ
照明の点いていない暗い部屋の中、明るい光を吐き出し続けるPCのモニターへ、前のめりになる様に顔を近づけているユウヒは、その目に映る様々な情報に自然と眉をひそめていた。
「うぅむ・・・確かにこれではまるで黒き森だなぁ」
時間的に大きな音をたてない様に配慮していたユウヒは、数時間ぶりとなる声洩らす。その声は小さく唸るような声から始まり、大きく息を吸うと、何とも言えない表情を伴った溜め息交じりの感想を洩らすのであった。
「アミールに聞けばさっくり調べてくれそうだが、そうもいかないしな」
まるで異世界で感じた様な超常的な現象に、ユウヒはひょんなことで知り合う事となった女神の名前を漏らすも、頼りになる彼女とは数日前の事件の影響で今は連絡を取ることが出来ない。その為現状それらを調べるには、ネットの住民達と同じく自らの体で調べる他なかった。
「いや、でもまだ流華達がドームに・・・あぁ、これはもう冒険確定かな。とりあえずパン屋は制裁の方向で、ミカンはいいや・・・たぶん状況が良く分からないでやってそうだし」
溜息を漏らしながらドーム関連の動画や画像を見ていたユウヒは、ふと目を向けたヤメロンチャットルームに動きが有る事に気が付き、そこでのやり取りからドームでの冒険を予感し、同時に心の制裁リストに一人の女性の名を刻む。
「とりあえず明日どこに行ったか聞いて、早々に突入かな・・・はて? 俺ってこんなに行動的だったかな?」
夜も遅い時間、PCモニターの光に外灯の光が交差する暗い部屋の中で、ユウヒは椅子の背に体重を預けながら、凝り固まった筋肉を解す様に背中を伸ばす。
ほぼ確定とも言える冒険の予感を感じ大雑把な予定を決めたユウヒは、そんな自分の思考に首を傾げると、僅かな違和感を感じて訝しげな表情を浮かべた。
「ん? 個人チャットにも履歴が・・・ほう、簀巻きだな」
しかし考えても解らないと早々にその違和感を放置し、一通り調べものが終わったユウヒは少しでも寝ておこうと立ち上がるも、ベッドに向かっていた体を急に止めて、目に留まったあるアイコンをクリックする。
それは個人チャットと呼ばれるクロモリ公式チャットルームのアイコンで、二人きりで話すときなどに使われるものであった。そのログには流華とパン屋と言う女性の会話が繰り返されており、その内容を目にしたユウヒは、制裁リストに刻まれた名前の隣に、制裁内容を追記するのだった。
いかがでしたでしょうか?
今回は所謂掲示板回と言うやつでしょうか? 時代と場所が現代日本だからこそ作れる御話です。好まない方もいるかもしれませんが、現代らしさを表す一つの方法だと考えていますので、また同じような回を作るかもしれません。
それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー




