第百五話 報告と騒がしさ
どうもHekutoです。
修正等完了しましたので投稿させていただきます。楽しんで頂ければ幸いです。
『報告と騒がしさ』
ユウヒと母樹の意見が平行線を辿り、最終的にユウヒが折れてその背に哀愁を背負ってから小一時間後、若干元気のないユウヒの姿はハラリアで一番広いお屋敷の広間にあった。
「なるほどの・・・」
「流石ユウヒ殿、母樹様がお認めになっただけあります」
リーヴェンと警備のエルフがユウヒと母樹との問答の声を聞き付け駆けつけた頃には、すでにユウヒは母樹の前で四つん這いに崩れており、哀愁を背負う彼を慰める母樹の姿にリーヴェン達が首を傾げたのは一時間以上前、現在は魔王城での出来事を語り終えたユウヒを見詰め仕切りに頷いている。
「・・・なんだか、もう色々とありすぎて、何も言えないです」
一方、この場に同席している基人族の代表であるカデリアは、まず魔王城で起きた事件の真実を聞き顔を顰め、聖剣の真実を知ると怒りで顔を赤く染め、ユウヒが世界樹の封印を解いて聖剣を破壊した話を聞くと顔を蒼くしていた。
「姫、お気を確かに」
「・・・」
カデリアの付き添いである女性騎士は、彼女の背中を困ったような表情を浮かべながら擦り、勝気な女性騎士は私情もあってかユウヒを無言で睨みつけている。
「むぅ・・・思いのほか低評価な感じか?」
リーヴェンの反応はいつも通り変わらないものの、それ以外の者達は総じて難しい表情を浮かべており、一部からは怒気までぶつけられるユウヒは、しょんぼりとした表情で小さく呻くと、苦労した割にはあまり評価されない現実に不平を洩らす。しかしその表情は微妙に笑っていて、特に今の状況を気にしてはいないようだ。
「いや、すまんの。あまりの事に驚き過ぎて言葉が出んかったわ」
ユウヒのつぶやきを頭の上の三角耳で聞き取ったウォボルは、あわてて腕を解き顰めていた目を開くと、対面に座るユウヒに身振りと苦笑いを浮かべて申し訳なさそうに頭を掻く。
どうやら想定外すぎる報告の連続に、彼の思考回路は停止寸前まで追いやられていたらしく、小さくため息を吐きお茶を飲むと、尾を一度揺らして心を落ち着かせる。
「す、すみません。ユウヒ殿がこの世界の為、必死の思いで魔王城に赴いて頂いたと言うのに」
ウォボルよりユウヒに近い場所に座っていたカデリアは、彼の言葉がよく聞こえなかったようであるが、ウォボルとユウヒのやり取りから彼の呟いた内容を補完すると、慌ててユウヒに対して弁明を口にし、苦笑するユウヒの表情にほっと息を吐く。
「貴様、姫を批判す「はいはい黙ろうねー?」むぐぅ!?」
ユウヒの表情から、カデリアも御付きの女性騎士も特に不満があるわけではないことを感じ取った様で息を吐く。しかし、勝気な女性騎士はユウヒに対して不満があるらしく、声を荒げてユウヒに掴み掛ろうと立ち上が・・・ろうとしたところで同僚に口を押えられて取り押さえられるのだった。
「アナタ、元気を出してください」
「落ち込んではいないが・・・」
注意しても治らない部下の行動に思わず何度も頭を下げるカデリアを見たユウヒが、困った様に苦笑を浮かべていると、彼の背後から優しく鈴を鳴らすような声が聞こえ、そっとユウヒの頭を撫でる。別段落ち込んでいないユウヒは撫でられる気恥ずかしさに背を丸め、そのことを理解してやっている母樹は、嬉々として頭を撫で続けるのだった。
「ユウヒ殿には毎回驚かされますからね。エルフの新天地の件でもだいぶ驚きました。まさかあれほどの土地を用意して頂けるとは、現地に伺った部下が腰を抜かしたそうです」
ユウヒと母樹のやり取りを微笑まし気に見詰めるリーヴェンは、ユウヒの行動にはもう慣れましたと言いたげな苦笑を浮かべ、しかし驚かないわけではないようで、最近特に驚いた一件について楽しそうに話す。
それはユウヒが一号さん達に頼んで整地してもらった場所の事で、里を失ったエルフ達は現在そちらで住環境の整備を行っている。腰を抜かしたというのは、言わずもがな先遣隊として出向いた三人エルフたちの事だ。
「新天地? あぁあそこか、あれはちょっと家の子が頑張りすぎただけだな・・・正直俺も驚いたし」
実際は一番驚いているのが指示した本人と言うのだからどうしようもない。
「新天地?」
だが、このエルフの新たな里についてはまだ限られた者しか知らないらしく、特にカデリア達は何も知らないようで不思議そうに首を傾げ呟いている。
「うぉほん・・・それよりもユウヒ殿、ちと面倒な事態になっておっての。先ずはそれから話したい」
「面倒?」
新天地について聞きたそうにしているカデリア達に気が付いたウォボルは、大きくわざとらしい咳払いをするとユウヒに面倒事があると切り出す。
「うむ、母樹様を焼いた者たちなのだが、思ったより早くこちらに手を伸ばして来おっての」
「すみません・・・」
ウォボルが言うには、母樹達の里を襲った者たちはもっと時間をかけて森の奥に侵入してくるだろうと考えていたらしいのだが、その行動は思った以上に早くすでに森の中層に位置するハラリア周辺にまで現れているという。その説明に目を細めたユウヒは、心底申し訳なさそうに頭を下げるカデリアに目を向けると、彼女の胃を心配して苦笑いを浮かべる。
「貴方に責任は無いのですよ。それより、奴らはすでにこの里の近くに陣を張って、続々と戦力を集めているのです」
まるで部下の不手際で客先に頭を下げに来た女性上司の様な姿に見えるカデリアに、思わず苦笑を浮かべるユウヒ。そんな彼を見ていたリーヴェンは、カデリアに目を向けると優しく語り掛け、顔を上げた彼女に微笑んで見せると、ユウヒに現状の続きを説明し始める。
「あぁ嫌な予想はよく当たるな」
「まったくだ」
「平和的に手を取り合えばいいのに、愚かですね」
今のハラリアに起こっている状況は、すでにユウヒ達も想定していたものであった。しかしそれは嫌な方の予測であり、そういった予想ほどよく当たる現実にユウヒが疲れたようにつぶやくと、同席しているエルフの騎士達や女性神官も頷き同意する。
「まぁ人間なんて大概愚かなものだろ? 人に与えられた時間は少ないんだろうからな」
「そうですね・・・」
森の住人達の辛辣な言葉に小さくなっていくカデリアは、ユウヒの言葉を聞き顔を上げると思わずその言葉に同意してしまう。この世界で最も寿命の短い種族である基人族は、その事に劣等感を感じるが故に多種族との間に軋轢を生み続けた歴史があるのだ。
「まぁしっかり手を取り合う準備があるのならば、差し伸べる手はあるんだけど」
「え?」
ユウヒはその事を知らないが、限られた時間で多くを求め愚行を繰り返すことは、地球であろうと異世界であろうと変わらないと感じている様である。しかし時には手を取り合い前に進む事も、人には出来るはずであると、カデリアに困った様な笑みを浮かべるユウヒ。
「まさか・・・」
「・・・新しい、俺の手のあまり入っていない苗が生まれました」
差し伸べる手と言う言葉の意味する物が、いったい何であるのかを最初に理解したのはリーヴェンであったようで、ニコニコとした笑みを浮かべていた顔を驚きの感情で上書きした彼に、ユウヒは頬を指で掻きつつ小さく頷き苗について話す。
『なんと!?』
「え? 苗、ですか?」
ユウヒがこの場所で話し合いをしている間も、シュリの種から芽吹いた芽はすくすく育ち、精霊達と協力してユウヒの耳元で実況し続ける母樹曰く、すでに地に植える為に必要な成長は終えていると言う。
ユウヒの言葉に驚きの声を上げる森の住人は一様に明るい表情を浮かべており、そんな目の前の状況にカデリアは不思議そうに周囲を見回し、更なる実況を受けたユウヒは引き攣った笑みを浮かべたままため息を吐くのだった。
ユウヒが母樹からの実況で、種が芽吹いた直接の原因が自分と種が接触したことによる急激な魔力の活性化であると知り肩を落としている頃、遠く離れたエルフの新天地では元気な声があちこちから聞こえて来ていた。
「なぁ」
「どうした? とりあえず手は動かせよ?」
力自慢の獣人や手先の器用なエルフ達が集まり次々と住環境を整ている中、先遣任務の後そのまま手伝いを続けているエルフの男二人は、切り出されて乾燥まで行われた丸太の皮を剥いでいる。そんな製材作業の手を休めた一人の男は、黙々と作業を続けていた同僚に声をかけると、ある方向を見詰め続けていた。
「あれだな、俺たちが驚いたのは当然なんだよな・・・」
「腰を抜かすのはどうかと思うが、まぁ増援は皆言葉を失うからな」
そこでは新たな増援であるエルフ達が、出迎えた二号さんの偉容に腰を引かせており、その姿を見た男性は自分の感じた恐怖は普通であると肯定するようにつぶやき、彼の言葉に手を止めた同僚は同じ方向を見詰め苦笑を洩らす。
「こ、腰なんてぬかしてねぇよ? ちょ、ちょっと座りたかっただけだし」
「はいはい、まぁあれほど巨大な相手だしょうがないさ」
リーヴェンがユウヒに話していた腰を抜かしたエルフと言うのは、今も手を休め続けるエルフ男性であるらしく、同僚の言葉に否定と言い訳を口にするも、その見るからに泳ぐ目では到底誤魔化せそうにない。実際に腰を抜かすところを目の前で見ていた同僚の男性は、二号さんから一号さんに視線を移すと、可笑しそうに笑って肩を竦める。
「じゃぁ何であいつはあんなに仲良さげに話してるんだ?」
「・・・ふむ」
未だに一号さんや二号さん達ゴーレムの巨大さに腰の引けるエルフ男子二人であるが、彼らの視線の先には、腰を屈めた一号さんと楽しそうに話すエルフの姿が一人居り、その姿に何とも言えない不満を感じた男性は、同僚に目の前の可笑しな光景の理由を問いかけた。
「あいつぐらいだろあんなに仲良さげに・・・見ろ、獣人達も近づかれたら尻尾を丸めてるぞ」
彼らの視線の先に居るエルフとは、彼らと共に先遣隊として来た女性エルフであり、彼らと同様に彼女も、一号さんの巨大さに驚き腰を抜かす一歩手前まで追い詰められた一人である。しかしそれがどうだろうか、屈強な獣人ですら尻尾を股の間に挟み震える相手を前に、彼女は楽しそうな笑みを浮かべ談笑を続けているのだ。そこには初対面で顔を真っ青にしていた面影は一切無い。
「・・・んーあれだな」
「あれ?」
自分が未だに克服できない恐怖を、悠々と克服して見せた同僚女性の姿に何とも言えない気分になるエルフ男性。そんな彼の問いかけに、視線をどこか抜けた印象のある男性に戻した同僚の男性エルフは、思い当たる節があるのか苦笑交じりに話し出す。
「女性同士、分かり合えるところがあるのだろう」
その理由は性別、エルフもまた様々な種と同じく男女間での違いがあり、女性同士である一号さんとの間であれば通じるところがあったのだろうと推測する。その推測を裏付けるように、獣人たちの中でも女性は比較的ゴーレム達を恐れていないのだ。
「・・・女性?」
そんな確信めいた推測を話す男性であるが、その顔に浮かべた苦笑を崩すことが出来ず、あの巨体を見て女性と言えるのかと言う彼の疑問を、目の前の男性は首を傾げながら言外に代弁する。
「あまり失礼な視線を向けるな? 彼女たちはユウヒ殿の従者なのだ。万が一敵対関係になろうものなら・・・」
確かに二号さんや比較的小型のゴーレム達は多少女性的なフォルムをしているが、巨大かつ重装甲な一号さんからは威圧感しか感じられない。とは言え、中身はちゃんとした女性であり、それを疑問に思うのは非常に失礼な話である。
「なろうものなら・・・・・・」
さらに彼女たちはユウヒの娘であり従者でもある為、万が一彼女たちの不興を買いでもすれば彼らエルフにとってあまり良い未来は待っていないだろう。
「「・・・死ぬな」」
最悪のシナリオを想像した男性エルフの二人は、しばし考え込んだ後見詰め合い声を揃えて頷くと、無言のまま作業に戻り黙々と丸太の樹皮を剥がして行くのであった。
一方そのころ、エルフ達の恐怖の代名詞になりそうなユウヒは、会議を抜けて友人達に会うために集会所までやってきていた。人の少ない集会所の中を音もなく歩き、縁側で日向ぼっこをしている人物を見つけると声をかけるため背後から近寄る。
「・・・へっくしょい!」
しかし話しかけようとした瞬間、悪戯好きな風の精霊のうわさが彼の鼻を擽り、我慢できなくなったユウヒは手で口を隠すと盛大なクシャミを洩らす。
「うひゃぉっ!?」
「お? ユウヒ帰って来てたのか」
突如後ろから聞こえてきたクシャミに、ユウヒから一番近かったパフェは変な声を洩らしながらその場から飛び退き、ユウヒがクシャミする寸前に人の気配に気が付いたクマは、ゆっくりと後ろを振り返りユウヒに手を上げながら話しかける。
「ゆゆ、ユウヒ! 驚かしゅんじゃない!」
「すまんすまん、声をかけようとしたらくしゃみが出ちまった」
縁側から飛び退き裸足で庭に飛び出たパフェは、クシャミの主がユウヒであることに気が付き、バクバクと煩い胸を両手で押さえながら怒ると頬を膨らませて縁側に戻り座りなす。その際、謝るユウヒを自分の隣に開けたスペースに座られる辺り、そこまでお怒りではないようで、むしろその表情は心なしか嬉しそうに緩んでいる。
「あぁいつものか」
「最近は何時にもまして多くてな」
ジェスチャーでパフェに謝りながら縁側に座ったユウヒは、最近いつにもましてクシャミが多いと話し、
「いつも以上にやらかしている証拠だな」
「失敬な、否定は出来んがな!」
「威張る事かよ!?」
そんなユウヒにクマはニヤニヤとした笑みを浮かべ茶々を入れるのだが、ユウヒには否定したくても否定するための材料が無く、逆に思い当たる節が多すぎたのか胸を張って肯定すると、クマからのツッコミを笑いながら受け止めるのであった。
「ゆ、ユウヒ」
「どうした姉さん?」
男同士の馬鹿なじゃれ合いを久しぶりに楽しむユウヒであったが、彼らの言葉の応酬は、隣で笑みを浮かべていたパフェを不安な気持ちにさせたようだ。明らかに心配と不安が見える顔でユウヒに声をかけたパフェは、振り向いたユウヒの顔を見上げると口を開く。
「もしかして・・・ほんとに美少女を襲って来たのか?」
「・・・ん?」
その口から飛び出た言葉はユウヒの表情を強張らせ、理解の追い付かないユウヒは首を傾げながらクマを見詰める。
「俺じゃねぇっよ、犯人は今踵を返したあの女だ」
尋問でも始まりそうな目で見つめられたクマは、即座に自分に向けられた疑惑を否定すると、ユウヒの声に気が付き丁度やってきたリンゴに目を向け犯人を指さす。
「おk把握、後でとっちめる」
集会所の奥から妙なタイミングで現れてしまったリンゴは、すぐに空気を察して逃げようとしたのだが、クマの指さす方向へと首を回して顔だけで振り向いたユウヒは、自分の居ない間に何が起きていたのか何となく把握すると、足を縺れさせているリンゴを鋭い視線で見つめ呟く。
「ちょ、裏切ったわね!?」
「・・・いつから俺が貴様の味方だと勘違いしていた?」
まるで追い詰められた犯人のように壁を背にするリンゴは、裏切り者に声を荒げるが、どうやらクマは最初から味方ではなかったようだ。
「覚えてなさい!」
クマのドヤ顔に悔しそうな表情を浮かべたリンゴは、まるでホラー映画に出てきそうな虚ろな目で見つめてくるユウヒに、思わず口元を引きつらせると、クマに向かって捨て台詞を残しその場から逃げ去るのだった。
「・・・後が怖いな」
「ほんとにな・・・」
リンゴの捨て台詞を聞いた二人は、いつもの緩んだ表情に戻るとリンゴの報復を想像して短く呟き合う。どうやらこの二人、阿吽の呼吸でリンゴをおちょくっていたようである。
「そ、それでどうなんだユウヒ?」
「襲うわけないだろ」
一方、未だに不安そうな表情を浮かべているパフェは、慌ただしいやり取りがあったというのにも関わらず、ユウヒがリンゴの口走った様な犯罪行為に手を染めていないか気にしている様で、ユウヒが呆れた表情で否定するとすぐに笑みを浮かべた。
「そ、そうだな! 私は信じていたぞ!」
「・・・嘘だな」
笑みを浮かべるもすぐに頬を赤らめると、恥ずかしそうに信じていたと話すパフェ。しかし動揺の隠せない姿から、明らかに疑っていたことは明白であり、そんな彼女をクマはジト目で見つめると疲れたようにつぶやく。
「・・・(襲ってはいない、ただ驚かしはしたけど・・・まぁこれは二人だけの秘密だそうだから言わないけど)」
「なんだ、フラグは建てて来たのか」
一方、襲ってこそいないが、魔王領に入ってから予想外の事がいろいろ起きて、もとい起こしていたユウヒは、挙動不審なパフェを気にするより先に自分の身の潔白を確認する作業に入った様で、そんな沈黙のまま眉を寄せるユウヒに、クマは呆れたようにつぶやいた。学生時代からの付き合いでユウヒの行動に慣れているクマは、なんとなくだが彼の表情から何かやらかしたことを察したようだ。
「フラグ? 死亡フラグは建ててないぞ? まぁイベントフラグは建てたかもしれんが?」
「なにゅ!?」
クマの呆れたような、それでいて可笑しそうな呟きに顔を上げたユウヒは、不思議そうに首を傾げて変なフラグは建ててないと話すが、パフェには別の意味に聞こえたようだ。
「ハラリアが包囲され始めてるらしいし、ちょうどよかったよ」
「・・・・ユウヒが、ユウヒが」
「援軍か? よくもまぁ見知らぬ異世界でそんな伝手をつくれたな・・・」
パフェが勝手に勘違いし頭を抱える前で、クマはユウヒの表情と言葉のニュアンスから、イベントフラグと言うのが援軍であることを察し、全く未知の異世界にも関わらずそんな伝手を用意してくるユウヒに呆れ、同時に頼もしくも感じて笑う。
「どうやら俺は巻き込まれ体質の様でな・・・」
「何をいまさら」
目の前で笑うクマに、至極まじめな表情で自分の巻き込まれ体質の発覚について、困ったように話し唸ると即座にクマからツッコミを受けるユウヒ。
「まぁ向こうでの原因は大半が姉さ「ユウヒが外で女を作ってたー!?」ぶっ!?」
「ちょま!?」
「・・・行っちまったな」
ユウヒの巻き込まれ体質は昔からであり、最近の原因は、今も勝手に勘違いした上に自己完結して騒ぎ出したパフェによるものが多く、新たな騒動の火種が走り去る後ろ姿を見送ったユウヒは、クマの隣で肩を落とす。
「あぁ・・・面倒だなぁ」
「ルカちゃんにくらいは早めに弁明した方がいんじゃね?」
加速度的にうわさが広まる未来を察したユウヒは、頭を掻きながらゆっくりと立ち上がる。すぐに動かないと余計に面倒なことになることはユウヒも解っているものの、なかなか体が言うこと聞いてくれないらしく、忍び笑い交じりなクマの言葉によってさらにその気力を奪われていく。
「汚れてない子ほど色々勘違いするからなぁ・・・何か騒がしいな」
「獣人が飛び交ってるな・・・外が動いたか?」
しかしいつまでも放置しては置けないと一歩踏み出したユウヒであるが、先ほどまでのパフェとは違った騒がしい声が聞こえてくると、ピタリと動きを止めて目を細める。どうやら弁明は後回しにしないといけない事態が起きたようで、外の雰囲気にクマも立ち上がて耳を澄ませ始めた。
「弁明より先にそっちを確認した方がよさそうだ」
「マジか、それじゃ急がないとな」
事態の急変を言い訳に弁明を後回しにしたユウヒは、ほっと息を吐きながらも面倒なことが重なる現実に何とも言えない表情を浮かべ、クマと一緒に騒がしい方へと駆け出すのだった。
いかがでしたでしょうか?
ユウヒによる報告会でしたが、どうやらユウヒの感じていた嫌な予感は、母樹達だけではない様です。何が起きているのか、次回もお楽しみに。
それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー




