第百二話 空からの眺めと妙な予感
どうもHekutoです。
修正等完了しましたので投稿させていただきます。ゆっくりと楽しんで頂ければ幸いです。
『空からの眺めと妙な予感』
軍務大臣の発言で会議室が重苦しい沈黙に包まれてから数時間後、昼食も忘れて新型魔力活性化装置を作る作業に没頭していたユウヒは、慌てて食事を持って来たマニリオーネやメイド達と共に遅めの昼食を摂り終え、ゆっくりと食後の休憩をとっていた。
「と言うわけでこれがその勲章になります。魔王領内で何かお困りのことがあれば提示してください」
「おお、これが勲章・・・」
その休憩の間、ユウヒは会議で決まった事についてマニリオーネから聞かされ、すでにウルスから聞かされていたので特に驚く事も無かったのだが、今しがた出来たばかりの勲章を、メイドから受け取ったマニリオーネによって胸に取り付けられると、驚きとも勘当とも取れる声を洩らす。
「今はまだ領内も荒れてますので効果は微妙と言わざるを得ないのですが・・・」
「まぁ身分証明にはなりそうだし最悪逃げればいいし」
ユウヒが手にした物は王家が保証する人物を示す勲章でもある為、実質魔王領内での確かな身分が証明されるものである。王家が保証する人物である為、貴族も無碍に扱う事は出来ないが、身分を与えているわけでは無いので魔王国に縛り付ける力は極めて弱い。
「・・・本当は、大々的に勲章授与式を行いたいのですが」
その為、せめて勲章授与式だけでも行えばもう少し縛り付ける力も強まると考えたマニリオーネであったが、その行為は様々な悪影響を想定した軍務大臣によって止められていた。
「勘弁してください」
「・・・はい」
その時のやり取りもウルスから聞いていたユウヒは、彼女の呟きに眉を寄せて曖昧な笑みを浮かべると率直な気持ちを呟き、彼の表情とその背後で首を横に振るウルスを見たマニリオーネは、少し申し訳なさそうに頷く。
「・・・ところで、本当にここでいいのですか?」
その後しばらく会話の途切れた三人は、巨大な縦穴の最下部である世界樹の広場を流れるさわやかな風を感じ、心地よい沈黙の時間を過ごしていたのだが、ユウヒが腰かけている物に目が行ったマニリオーネは、どこか遠慮したような声でユウヒに問いかける。
「あら、失礼な言い方ね」
彼女の問いだけ聞けば何を問うたのかわからないが、問われたユウヒは何かわかっている様で、彼女の心配するような声に苦笑を漏らすも、そんな彼よりも先にウルスが冗談交じりに不満を口にして笑う。
「そうは言ってもウルス様、ここは外と大して変わらないのですよ?」
「まぁ、人が寝るにはあまりそぐわないわよね」
マニリオーネが一体何についてユウヒに問うたのか、それを説明するには彼が腰かけている大きな装置の説明が必要である。当初その装置の全貌を説明されたマニリオーネは、今も傍で待機しているメイドとともに驚き、ウルスはその驚きの表情に理解ある苦笑を浮かべていた。
「不活性魔力の濃度はここが一番高いからね、魔力カプセル1号の効率もその分高くなると、思う」
今回ユウヒが作り出した魔力活性化装置は、ただの魔力活性化装置ではない。ハラリアの世界樹の足元で、魔力活性化装置に囲まれて寝た時の事を思い出しながら考えられたこの装置は、ユウヒが名付けたようにカプセル型をしており、その姿をもし日本人が見たならば、疲労回復などに効果のある酸素カプセルを思い出す者もいるのではないだろうか。
「実際に目にすると、聞かされる以上に説得力がありますよね」
ただ酸素カプセルのように密閉された構造はしていない為、魔力を見ることが出来る人間であれば、中に寝た人間が呼吸をするために必要な通気口から魔力が溢れ出ているのがよく見えるであろう。
「マニリオーネさんも見える人?」
「えぇ魔力が湧き出ているのが良く見えます。・・・あと、もう何度も呼び捨てでかまわないと言ったと思うのですが」
真冬の煮えたぎる釜から立ち上る湯気のような魔力の流れに目を奪われていたマニリオーネは、ユウヒの問いかけに頷くとよく見えると話す。しかし何かに気が付き視線をユウヒに戻した彼女は、少し口ごもると彼女にとって何度目かになるらしいお願いを口にする。
「そだっけ」
「もう・・・リオーネでいいですからね」
彼女の名前であるマニリオーネのマニの部分は敬称に当たる意味があるらしく、親しい者は彼女の事をリオーネの呼ぶ為、ユウヒにもそう呼んでもらいたいらしい彼女に、ユウヒは何とも恥ずかしそうにしらばっくれて見せる。そんな彼の姿を見ておかしそうに笑うマニリオーネ、いやリオーネは、少しだけ前屈みになるとユウヒを見上げながら念を押すのであった。
「うい」
「んふふぅ・・・仲良いわねぇ」
いろいろと素敵な光景が広がる眼下から目を反らしたユウヒは、小さく了承の声を漏らすと顔を上げ、しかし上げた先でクスクスと笑うウルスの顔と言葉に思わず頬を赤くする。
「・・・普通だろ? さてこれで魔力を回復させたら森まで一飛びだな」
クスクスと笑うウルスからも目を逸らして立ち上がったユウヒは、彼女から提供された世界樹の一部を切り出し作ったカプセル型魔力活性化装置の蓋を開けながら嘯き、木目なのにも関わらずどこか近未来的な形状の内部に、用意してもらっていた寝具を敷き詰めていく。
「やはり行かれるのですか・・・」
「まぁ、やる事が山積みだからな」
一見しっかりとした土台に置かれた大きな揺り籠のようにも見える装置、その内部を整えるユウヒをどこか寂しそうな表情で見つめるリオーネは小さく呟く。その声に顔を上げたユウヒは、彼女に申し訳なさそうな笑みを浮かべると、脳裏に浮かぶ複数の案件に肩を落とした。
「また魔都に来てくれますか?」
「え? ははは、来たくない理由なんて無いしまた会えるさ」
僅かに疲れを感じるユウヒの表情を見て、それ以上引き留める事の無かったリオーネであるが、しかし再会は願っているらしく心配そうな顔で問いかける。ユウヒはその問いかけに一瞬不思議そうに彼女を見詰めると、すぐに可笑しそうに笑ってまた会えると答えるのだった。
ユウヒが可笑しそうに笑いながら答え、リオーネがその言葉に表情を明るくする姿は、世界樹の広場を見渡すことが出来るテラスからも良く見え、そこには会議室で難しい顔を突き合わせて居た魔族達の姿があった。
「あれは垂らしだな」
「じゃの」
彼らはこの魔王国を支える大臣たちで、ユウヒを垂らしだと断定した若い男性は軍務大臣であり、その隣で頷いた小柄で真っ白な老人は魔族の中でも最高齢である右大臣である。
「うぅん・・・しかしすげぇもん作るなあの兄ちゃん」
「すごいで済むものか、あれは最早アーティファクトの世界じゃて」
テラスから広場に落ちないように用意された手すりに寄りかかりながら、ユウヒとリオーネの二人を注視する彼らは、自然とその視線をユウヒの作った装置に向けると、大量の魔力が立ち上るその威容に唸るような声を洩らす。
「へぇー世界は広いもんだ!」
「ふむぅ・・・」
真っ白な老人が洩らした呆れと驚きに満ちた言葉に、若い男性は心底驚いた表情を浮かべ楽しそうに笑い、その隣ではでっぷりと膨れた腹を手摺の格子に押し付けた男が、齧りつくように魔力活性化装置を見詰め唸っていた。
「・・・あまり余計な事は考えるでないぞ?」
「む・・・」
明らかに欲望渦巻く目で活性化装置を見詰める男、魔王国の財務を司る大臣に、リオーネから爺と呼ばれていた老人は眼光鋭く睨み不用意な行動を慎む様に声をかけ、その声に財務大臣はびくりと肩を振るわせる。爺と呼ばれていたこの老人は左大臣であり、真っ白な老人と共にこの国を支え、同時に大臣たちを束ねる存在である為、横暴な態度の目立つ男も流石に逆らえない様だ。
「そうだぜ? こっちに牙向けられたら俺は絶対逃げるからな!」
「貴様はそれでも軍務の長か!」
しかし左大臣と右大臣以外であれば関係ない様で、自信満々に逃げると言う若い男に声を荒げて噛み付く。
「強者は他の強さも知ると言う事かの」
「そういうことだな」
しかし、彼の言葉に噛み付いたのはその場に居合わせた男性達の中でもその男だけであり、それ以外の者達は若い男性の言葉に神妙な表情を浮かべる。魔王軍最強と名高い彼が、じっくりと観察した上で絶対に相手にしたくないと言わせる人間と誰が真面にやり合えるのか。
噛み付くことを優先し、眼下でリオーネと談笑する人間の恐ろしさを理解できない男は、左大臣と若い男性のやり取りを後目に、不快そうに腹を揺らしながらその場を後にするのであった。
それから数時間後、ウルスがユウヒに関するうわさを実況する中、カプセル寝台付き魔力活性化装置は無事完成していた。
「うーむ、ちょっと狭かったかな」
しかしその寝台は、高級でふわふわな寝具を詰めるとずいぶん狭くなってしまい、ユウヒが寝るとほぼスペースは余らず、寝返りを打つのも少々辛そうな空間に仕上がっていたのである。
「そうね、これじゃ添い寝するスペースが無いわね」
「それはいらないな・・・」
そこまで狭い為カプセル型の寝台は完全に個人用となってしまい、大人二人が寝ることなど不可能である。それ故に残念そうな声を洩らしながらユウヒの肩に手を置くウルスであるが、もとよりそんな添い寝は求めていないと、ため息交じりに素っ気なく呟くユウヒ。
「なんでよ、私これでも最古の大精霊なのよ? 御利益抜群なんだから」
「そんな御大層な精霊様に添い寝されたら落ち着いて眠れないだろ」
素っ気ないユウヒの対応がウルスは非常に不満であるらしく、ユウヒの肩を両手でつかむと前後に揺らしながら不満を口にする。宙に浮いたウルスの揺さぶり攻撃は大した力ではないようで、ゆっくりと前後に揺れながら布団の位置を調整するユウヒは、普段より割増しで眠たそうな表情を浮かべると言外にゆっくり寝かせてくれと話す。どうやら昨日の夜に気を失った後遺症がまだ残っているようだ。
「あら、今夜は寝かせないぞってこと?」
そんなユウヒの眠たげな声に口を窄めていたウルスだが、急に眼を見開き口元に弧を描く笑みを浮かべると、ニヤニヤとした笑みでユウヒの耳元に口を寄せて妖艶に囁く。
「・・・勘弁してくれ、これ以上食われたら魔力どころか魂まで食われてしまうわ」
耳元で囁かれたウルスの声に、ユウヒは反射的に背筋にを伸ばして頬を恥ずかしそうに赤く染めるも、機嫌よさげに宙に浮かぶウルスに振り返ると、心底嫌そうに肩を落として首を横に振る。何せユウヒは診察してくれた医者から、本当に死ぬ一歩手前であったと聞かされているのだ、いくら美人からのお誘いだとしても流石に頷くことは出来ない。
「そんな食いしん坊みたいに言わなくったっていいじゃない。・・・反論できないけど」
ユウヒからまるで食いしん坊キャラの様に言われたウルスは、母樹やほかの精霊同様に酷く不満そうな表情で頬を膨らませるが、実際にユウヒを干乾びさせかけたこともあって強く出れないのか、膨らませていた頬を萎めると恥ずかしそうに顔を背け小さくつぶやく。
「反論はしてほしかったなぁ」
「・・・」
どうやら精霊にとって食いしん坊と思われることは、人が考えるよりずっと恥ずかしいことのようで、普段大人の余裕を感じさせる雰囲気の彼女も、ジト目のユウヒがつぶやく突っ込みに反論することもできず顔を赤くするのであった。
「・・・よし、こんなものかな? それじゃ残り一本になった薬を・・・・・・」
それから十数分後、夕闇の下ではあるが魔力の光で程よく明るい世界樹の広場で、魔力活性化装置の最終チェックを行っていたユウヒは、満足そうな笑みを浮かべると準備の完了を告げ、さっそく寝るためにカプセル寝台付き魔力活性化装置の中に乗り込む。
乗り込んだユウヒは、寝台へと横になる前に枕もとのバッグから陶器製の薬瓶を取り出すといつものごとく一気に呷り、やはりいつものように顔を顰める。
「大丈夫?」
その顔は誰が見ても心配になる表情であるらしく、ウルスもまたユウヒの顔を心配そうに覗き込む。
「たぶん健康に悪いものではないと思う。それじゃお休み」
「ええ、ゆっくりお休みなさい」
しばらく無言で不味さの波をやり過ごしたユウヒは、若干の涙目でウルスの顔を見上げると苦笑を漏らし就寝のあいさつを告げる。微笑みながら挨拶を返すウルスの前で、カプセルの蓋を閉じて眠りにつくユウヒ。何か快眠用の機能でも搭載していたのか、それとも単純に疲れていたのかすぐにカプセルの中からは寝息が聞こえ始めた。
「・・・ユウヒ君はどこから来たのかしらね」
木で作られたカプセルである為、外から中を窺うことは出来ないものの、精霊であるが故にしっかりとユウヒの存在を感じ取れるウルスは、カプセルの上に腰を掛けてユウヒの頭がある部分をやさしくなでると、小さく優しい声で話しかけるようにつぶやく。
「聞いてみたいけどすごく怖くもあるわね。あの懐かしい香り、今はそれだけで我慢しておきましょう」
どこか望郷の念を感じるウルスは、最後にそうつぶやくとそのまま朝までユウヒを見守るのであった。
それからさらに数時間後、ウルスが蓋の上に座って寝ていたため朝からちょっとした閉じ込め事故に見舞われたユウヒは、朝の光がまぶしくも気持ちい魔王城の正門で、左大臣とリオーネの見送りを受けていた。
「本当に大丈夫なのですか?」
「おう、ばっちりだ。十分森まで持つだけの魔力は回復したよ」
昨日の夕食こそ朝昼の食べ過ぎで断念したユウヒであるが、今日の朝食は早朝から是非と迫ってきたリオーネと共にしっかり食べており、新型魔力活性化装置のおかげもあって体調は驚くほど快調の様だ。
「そうですか・・・」
心配するリオーネの目にもユウヒの体調の良さは伝わっているのだが、伝わっているが故に彼女の表情は優れない。
「リオーネこそ大丈夫か? 疲れているならあの装置を好きに使ってくれ、そのまま活性化装置としても使えるし、分解して量産してみてもいいし」
快調なユウヒは相反して疲れの見えるリオーネを心配すると、彼女に使ってもらおうと考え好きに使ってくれていいと話し、同時に量産できるようなら好きに弄っていいとも楽し気笑い話す。
「そんな!? 分解なんてとんでもない。あの装置はウルス様に預け有効活用させていただきます」
「そう?」
しかし、ユウヒの気軽さしか感じられない言葉に対して、リオーネは全力で首を横に振ると心の底から驚きを露わにする。神様印の魔法の使い過ぎでいろいろと感覚がおかしなことになっているユウヒは首をかしげるも、彼女の反応が普通なのだ。
「・・・(あんなに高度なアーティファクト、調査だけでもどれだけ時間がかかるか)」
事実左大臣は無言でユウヒを睨みながら背中に妙な汗が流れるのを感じている。なぜならすでにユウヒの置き土産は、彼が朝食の間に国の研究者によて調べられており、その結果使われている技術を調べ上げるだけでも年単位はかかるという予測がなされていたのだ。
同じ性能のものを作るとなれば、左大臣である彼が生きている間にできるかどうかであり、そんな物をたった一日、いや半日で作り上げたユウヒという存在が、彼は恐ろしくて仕方がないのである。
「それじゃまたな」
「はい、またの来訪心待ちにしております」
ただ見ただけでは全く脅威を感じないユウヒを睨み続ける左大臣が、リオーネと楽しそうに別れのあいさつを交わす彼の姿に、嫉妬で恐れを忘れて奥歯をかみしめる中、
「絶対また来なさいね? 母樹にもよろしくね」
「あいよ」
ウルスと軽くあいさつを交わしたユウヒは、踵を返した勢いのまま宙に浮かぶと、そのまま空へと加速しながら舞い上がっていく。
「・・・・・・」
ユウヒが空を飛べると知っていたリオーネであるが、そのあまりにスムーズな飛行を目にすると驚きで目を見開き、しかしゆっくりと肩から力を抜くと空に消えていくユウヒを寂しそうに見つめる。
「ふぅむ・・・羽根付き並みに手慣れた飛翔ですな」
「ええ・・・」
「・・・・・・」
「ふふ、ふふふふふふ」
ユウヒが居なくなったことで、色々な感情が複雑に絡み合った重い溜息を吐いた左大臣は、何も見えなくなった空を見つめ続けるリオーネに声をかけると、短く返ってきた心の籠らない返事に再度複雑な表情を浮かべウルスに笑われるのであった。
これはあれだな、新型機は大成功と言っていいだろう。ほんと驚くほど体が軽い。
「良く寝たおかげかいろいろと調子がいいな、睡眠は大事だな」
まぁ早寝早起きの影響もあるんだろうけど、ここ最近で一番体調が良い気がする。朝の閉じ込め事件がなければ尚良かったのだが、あとちょっと遅かったらこの歳になっておねしょ? いや若くして尿漏れを経験するところだった。
「おっと? 雲を抜けたか・・・あれは、海?」
美女の目の前でそれは黒歴史どころの問題ではない、いっそ自害を考えそうだ。そんなことを考えていたら薄い雲の上に出てしまったわけだが、遠くに海が見えるがあれは本当に海なのだろうか。
「ずいぶん高く飛び上がってしまったが、この世界の海・・・黒すぎないか?」
こんな清々しい天気で気分がいいというのに、この世界の海までは俺の体の状態を歓迎してくれていないのか、異常なほど真っ黒である。
「あーこれだけ離れていると右目がうまく機能しないか」
右目の力で海なのかどうか調べようと思ったのだが、この右目には有効距離があるらしく、遠く離れた場所の物がいくら広く大きなものであっても有効距離外の物は調べられず、調べられても遠くなるにつれて制度が下がるのだ。
「・・・まぁ気が向いたら調べてみようかな」
なんだか見れば見るほど不安になる真っ黒な海に、今の感情を台無しにされたくない俺は、調べることをあきらめると緩やかに滑空しながらハラリアを目指し進み始める。
「今は先ず森に帰って流華を日本に送らないと・・・でも不思議だ、なんだか森の方から嫌な予感がプンプンするんだよなぁ」
しかし海以外にも俺が今感じている清々しい気分を阻害するナニカがあるらしく、森に向かって進む俺の正面から嫌な予感が感じられ始めた。海を見た時と違ってはっきりと俺の勘が囁く何かは、どうやら森からの何かを指し示している様であるが、
「いろいろな予感で何が起こっているのか分からん・・・」
母譲りの便利な勘ではあるものの、母さんほどの感度は無いので複数の悪い予感には明確な解を出せない。そう、複数の予感なのだ、全てがすべて悪い予感ではない気がするが、正直何が起こっているのかさっぱりわからない。こんな事は昔、父さんに連れられて行ったとある海外の紛争地帯で迷子になった時以来である。
いかがでしたでしょうか?
魔王領での騒動も終わらせ、清々しい気持ちで森へと帰るユウヒですが、どうやら帰った先でもまだまだ騒動が起こりそうな予感を感じ取っている様です。この先もユウヒの物語は続いていきますのでどうぞよろしく。
それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー




