第百一話 活動始める魔王城
どうもHekutoです。
修正等完了しましたので投稿させていただきます。楽しんで頂ければ幸いです。
『活動始める魔王城』
魔王家がプライベートに使う食堂で、第三者の思惑に踊らされたマニリオーネとの朝食を終えたユウヒは、挽回するように話し始めた彼女にいくつかお願いを聞いてもらった結果、
「こちらが今、唯一物が入っている宝物庫になります」
魔王城の最下層にある宝物庫の中に足を踏み入れていた。彼を案内をしているのは、マニリオーネから信頼されている執事長で、その笑みを絶やさぬ初老の男性は大きな扉を押し開くと、ユウヒを宝物この中へと招き入れる。
「・・・」
「はは、落胆された様ですな・・・」
宝物庫と言えば、堆い金銀財宝があちらこちらに出来上がり、足の踏み場もないような場所を想像しそうであるが、ユウヒが呆けたように見詰める先にあるのは、綺麗に整理された質素で特に目が眩むことも無い部屋であった。博物館の大きな倉庫の様にも見える部屋を背にした執事は、ユウヒの表情を見るとどこか寂しそうに笑う。
「あぁいえ!? 宝物庫なんて滅多に入れるところではないですから、少し見入っていただけです」
執事の男性から声をかけられ正気を取り戻したユウヒは、別に落胆していたわけではない。単純に宝物庫と言うものの珍しさから興味深く見渡していただけで、どちらかと言うと地下深くの宝物庫にも拘らず、暗さを一切感じない明るい室内に驚いていただけである。
「物が少ないでありましょう? 昔はそれこそ見上げる様な金貨の山などがあったものですが、魔王様亡き後は減っていく一方でしてな」
「財政難ってことですか?」
しかし、この宝物庫が昔から今の様な姿だったわけでは無いらしく、執事曰く、昔はそれこそ絵にかいたような宝物庫であり、部屋を明るく照らす光を反射した金貨の山は、眩しすぎて直視できないほどであったと言う。
しかしそれも今は昔、魔王亡き後は減っていくばかりで維持することもかなわず、今では金貨は金庫に保管されているものだけで、宝物庫の管理人は保管の仕事が激減したことにより、日々宝物庫の整理に精を出す毎日なのだと。
「住民も減り、これと言った収入がほぼ無いうえに、貴族が国から離れてしまいましたのでは、しょうがないでしょうな」
本来なら国民から納められる税金も、現状納めるだけの物を用意できないとあって、大規模な減税措置が講じられている影響や、魔王国から独立する貴族たちの行動がさらに財政の悪化に拍車をかけていると、執事の男性は寂しそうに語る。
「まぁ世界樹も復活したし、これからでしょ」
しかし、それも世界樹の恩恵と魔王を一緒に失ったからであり、世界樹の恩恵が復活した今であれば、十分改善の目途は立つであろう。実際に、ユウヒの元気付けるような言葉に頷いた執事の男性の表情は明るく、その顔からは先ほどまでの寂しげな雰囲気が消えていた。
「ええ、ユウヒ様には感謝の念しかありません。ついでに姫様をもらってくれれば言うことは無いのですが・・・」
「はっはっは・・・それじゃ少し見させていただきますね」
さらに言うならば、ユウヒに頭を下げて見上げた彼のその瞳の奥には、老いを感じる顔に似合わないギラギラとした光が揺れており、ついでと言いながらも強く求めるような力強い眼力は、言外に是非貰って魔王になってくれと語っている。そんな男性の目力に、わざとらしく乾いた笑い声を上げたユウヒは、当初の予定通りに宝物この奥へ入っていく。
「どうぞどうぞ・・・脈無しですな」
きょろきょろと興味深そうに宝物庫を見回しながら、慎重さを感じる足取りで歩いていくユウヒの背中を見詰める執事の男性は、にこにことした表情を僅かに曇らせると、小さな声でポツリとつぶやき、誰のことを思ってか小さく溜息を洩らしながら肩を落とすのであった。
それから小一時間後、執事の男性が宝物庫の番人とユウヒが出てくるのを待ちながら、のんびり大きな扉を警備している頃、ユウヒは入り口が一つしかない宝物庫の中で唸り声を漏らしていた。
「むむむ、お! おぉ・・・・・・は!?」
様々なものが並ぶ興味深い魔王の宝物庫は、右目の力を使うことでさらに深く興味を引き付ける物であふれている。
「いかんいかん、つい知的好奇心が疼いてしまう。さっさと素材になりそうな物を探さないと、これもこの世界の安定、延いてはドーム縮小のため」
そんな宝物庫に何故ユウヒが居るのかと言うと、魔力回復を促進するための道具を作りたいと話した彼に、その素材の提供を提案したウルスとマニリオーネ二人からの鶴の一声によるものであった。最初は躊躇したユウヒも、悪感情を抱かれたくないマニリオーネの勧めと自らの興味に理性が負けて、現在その目で必要な素材の選定を行っている・・・はずである。
「・・・でもいろいろあるなぁ」
しかし、元々好奇心が強いほうであるユウヒは、次々と目に映る宝物に目を奪われてしまい、素材の選定が遅々として進まないのであった。それでもようやく理性が本能に勝利を収めたのか、名残惜しそうな顔をしながらも必要な素材を求めてその場を離れるユウヒ。
「この右目が無ければ何がなんだか解らないけど、解ったらわかったで怖い物も多いな」
宝物庫番によってきれいに仕分けされた宝物庫の中は、ユウヒが道草を食っていたとは言えまだ2割も確認出来ておらず、右目で軽く周囲を見回し歩くユウヒは、必要なもの探しながらもそこに置かれているものを正しく理解し、表情を引きつらせる。どうやら呪われた物や血なまぐさい物品も多数置かれている様で、むしろそれらの宝はそう言った逸話故に今も残っている様だ。
「世界樹の枝に葉に根に・・・ここは世界樹エリアかな」
ウィンドウショッピングでもするような気軽さで、しかし物損事故を起こさない程度には注意しながら奥まで歩いたユウヒの見渡す先には、ようやく彼が求めるような物が見え出し、最初に目に映ったのは世界樹から採れた物が置かれた一角であった。
「宝石がいっぱい・・・俺的には原石でいんだよ、自前で磨けるし・・・魔法ってすごいよなぁ」
さらにその奥に進むと、今度はまばゆい輝きや深い色合いが美しい宝石が並べられており、しかしその綺麗に磨かれた宝石もユウヒのお眼鏡にはかなわなかったようだ。なぜならユウヒがつぶやいた通り、彼はこれまでにも魔力活性化装置に宝石を使っていて、そのすべては魔法によって原石から磨き上げられたものである。
「んーワイバーンの全身骨格に一角兎の剥製」
便利すぎる魔法の力をまるで他人事のように再認識するユウヒの前に、今度は大きな骨格標本が姿を現す。どうやらそれらはこの周辺でみられる生物の骨格標本や剥製のようで、金銭的な価値よりも学術的な価値があるものが大半の様だ。
しかし骨も素材になるかもしれないが、ユウヒが今欲しい物には当てはまらないのか、地球では見る事の叶わない様々な剥製や骨格標本を流し見ると、次の区画に歩を進める。
「基人族商業国家から贈呈された刀剣類、説明書きと実際の名前がだいぶ違うと言うか・・・半分はレプリカって」
ユウヒが次に見つけた物は、まだ魔王が健在であった頃に付き合いのあった基人族国家が魔王国に贈った物のようであるが、ユウヒの右目に映る情報と、目の前に展示されている説明書きとでは齟齬が多く、本物であると説明書きがれている物の半分はレプリカであるらしい。
「・・・商人ってどこも似たり寄ったりなのだろうか? あぁいやそんな事より素材素材」
友好の証などと書かれる品物が偽物だと言う事実に、ユウヒはどこかで似たようなことを聞いたことがあるのかそれとも見たのか、何とも言えない表情でこの世界の商人に対する好感度を下げるのであった。
「あ、これこれこう言うのが良いんだよ、特にいわくも無く価値もそこそこな、それでいて素材として優秀な宝石に貴金属」
気分を入れ替える様にため息を吐いたユウヒは、次の区画でようやくお目当ての素材に出会えたようである。そこはそれまでのどこか厳重に保管されている区画と違い、頑丈な棚には木箱に種類別で詰め込まれた物が蓋もされずに並べられていた。
「とりあえずこの辺の磨いてない宝石と・・・うん、銀のインゴットで作ってみるか」
軽い足取りで箱に近づいたユウヒは、箱の中から一見ただの石にしか見えない原石を手に取ると嬉しそうな笑み浮かべる。さらに別の棚に駆け寄り箱の中を覗き込むと、埃をかぶった銀色のインゴットを目にし、今回作る魔力活性化装置の構想を固めるのであった。
「他には―――」
銀のインゴットを手に取り、ジャージの袖で表面を軽く磨いたユウヒは、その輝きを満足そうに見つめるともう一度原石の並べられた棚に戻り物色を続ける。その後十数分で必要な物を見繕ったユウヒは、高揚する感情のまま走り出そうとした足を、周囲から感じる高価なプレッシャーの前にピタリと止めると、駆け出したい気持ちを抑えてゆっくりと宝物庫の入り口に戻るのであった。
ユウヒが素材を手にして世界樹の前に戻り、ウルスから世界樹の一部を貰って作業を始める姿に、遠目に見ていた城の住人が目を真ん丸に見開いている頃、場所は移り魔王城のとある会議室。
「それでは緊急対策会議を始める!」
質素ではあるが、磨き抜かれ艶やかな高級感を感じる円卓には、円卓ではあるものの、上座とも言える場所にマニリオーネが座り、その左隣の老人は張りのある声で会議の開始を宣言し始める。
「今回の議題は突然現れた救世主を自称する基人族の男についてである」
どうやら今回の議題はユウヒについてである様ではあるが、きっとこの宣言を聞いたユウヒは全力で救世主を否定するであろう。実際にユウヒは一度も救世主を自称したことなど無く、事実とは異なるこの発言には明らかにこの老人の悪意が込められていた。
「・・・爺、自称ではなく純然たる事実ですからね」
そんな悪意にはこの場に居る者の大半が気が付いており、マニリオーネもその悪意に気が付き、その理由もなんとなくわかっているのか老人を横目で鋭く睨むと怒りの込められた声を洩らす。
「しかし姫様、我々は目の前で見ていたわけではございません故」
小さい子や心臓の悪いものなら縮み上がってしまうような眼光にも、飄々とした表情で受け答える老人は、マニリオーネが小さな時からずっと見守って来たこともあって、彼女に好意を寄せられるユウヒに年甲斐もなく嫉妬している様だ。
「私とウルス様が嘘をついていると?」
「それは、まぁ前例がありますし?」
「子供のころの話を出さないでくれるかしら・・・」
しかし、ユウヒが世界樹を復活させた姿は彼女が目にしており、ウルスも認め複数のメイドが肯定している事である。それ故間違いは無いとされている事なのであるが、嫉妬を狂う老人は彼女が昔ウルスと結託して行った小さな事件を例に持ち出し小首を傾げた。そんな老人の姿に、マニリオーネは羞恥と怒りで顔を赤くすると先ほどよりも明確に怒りを読み取れる声を洩らす。
「それで? 対策って何をするんだ? こっちは急に稼働を始めた施設の整備で忙しいんだが」
「うむ、先ずは我々のスタンス、それとどういう扱いにするかだな。それが決まればいろいろ他も決まっていこう」
嫉妬するが故に引き際を誤った老人が頬を引きつらせる中、マニリオーネの正面にあたる場所に座っている若い魔族の男が、頭の角を掻きながら助け舟を出した事でマニリオーネは一先ず怒りを治める。
助け舟を出した男性に目を向け老人は、そのニヤニヤとした顔に小さく咳ばらいをすると会議を先に進める。今回の会議では、ユウヒに対する魔王国側の姿勢と彼をどういった人物として扱うかを決めるようだ。
「扱い? 救世主なんだろ? なぁ姫様?」
「そうです!」
しかしユウヒは既にマニリオーネから救世主と呼ばれてしまっており、その事をすでに聞いている若い魔族の男性は、高い背もたれに体重をかけながら首を傾げるとマニリオーネに水を向け、そんな若い男性にマニリオーネは嬉しそうに頷き答える。
「救世主ならばいかにしてこの国に留まらせるかが問題じゃ・・・どうじゃった?」
久しく見ていなかった輝くようなマニリオーネの笑みに周囲が様々な表情を浮かべる中、彼女の右隣に座っていたこの場で最高齢の老人は、長く真っ白な髪と髭の奥からどこか嬉しそうな声で話すと、彼の後ろに控えていた執事に声をかけた。
「脈無しでございますな」
「・・・」
そこに立っていたのは少し前までユウヒを宝物庫に案内していた執事の男性であり、彼はこの真っ白な老人の命により、それとなくユウヒに探りを入れていた様である。そんな探りを入れて来た男性に期待の眼差しを向けていたマニリオーネは、彼の返事を聞いた瞬間がっくりと肩を落とし沈黙するのだった。
「婚姻か? ・・・あぁうーん、いろいろと難しいだろ」
「難しいならやりようはあったのじゃがの・・・脈無しとは」
三人のやり取りを見ていた若い男性は、彼らの企みが婚姻によるユウヒの縛り付けだと理解すると、苦笑いを浮かべながら色々と考えたのか難しいと言う結論に至る。彼が何を思って難しいと言ったのか、怪訝な表情で彼を睨む様に見詰めるマニリオーネの隣で、真っ白な老人は髭を扱きながら困った様にため息交じりの声を洩らす。
「女性関係は無理の様で、お金も執着しない様子、名誉などは元より求めていないとの事でした」
「男色か? おっと、そう睨まんでください姫様」
真っ白な老人の溜息に、執事は探りを入れて来た結果を詳しく話し、その説明にマニリオーネは少し喜びつつも、どうしようもない現状にやはり肩を落とし、若い男性の呟いた疑問に八つ当たり気味な視線を向ける。
「真面目な話なのです。と言っても、正直勲章を与えたうえでの友好関係が今は一番無難だと思いますよ?」
そんなお姫様の中では、すでに結論がほぼ決まっているらしく、今のところ最も有効な手立ては友好関係の構築であると話しながら、やはり納得いかないように肩を落とす。
「・・・欲が無いにしてもなさすぎだろ、そいつは聖人か何かか?」
魔族と言う種族は、割と本能や欲望に忠実な者が多く、理性でコントロールをしているとは言え、ユウヒと言う人間ほど欲のない人間は理解できない様で、周囲の魔族たちも妙な表情をしており、それらの思いを代弁するように若い男性は呟く。
「欲が無いわけでは無いな! 実際宝物庫を漁っておったのだろ? どうせどさくさに紛れて何か盗む気でいたのだろ」
一方、若い男性の隣に間を広く開けて座る、考え方が魔族らしい魔族の典型の様な男は、そのでっぷりと膨らんだ腹を揺らしながら声を荒げ、宝物庫に入って物色していたと言うユウヒに悪意を隠すことなく声を荒げる。
「・・・」
「・・・持っていかれたのは、一山いくらの磨かれていない宝石の原石数点にいくつかの銀インゴットですな、それほど価値がある物ではありません」
でっぷりと太った男性は、自分の中に湧き上がる苛立ち以外に興味が無いのか、マニリオーネからの鋭い視線にも気が付かずに鼻息を荒げ、そんな男性に憐れむような目を向けていた執事は、小さく息を吐くとユウヒが宝物庫から持ち出した品物を読み上げ、その読み上げられる品に魔族たちは首を傾げ合う。
「それらはウルス様からの依頼もあって、魔道具を作るとの事でしたので資材提供として譲渡の許可は出してます」
銀のインゴットはそれなりに価値があるものの、魔王国では比較的何処でも産出する金属であり、宝石とは言え原石はそれ以下の値でしか取引されていない。それ故に宝物庫でも埃をかぶっていたのだが、ウルスがユウヒの話に興味を示したための提供であると聞くと、大半の者は納得したように頷く。
「・・・信用できませんな」
魔王国にとってウルスの発言はなにより重要視されてきた。それは初代魔王の暴走による過去が影響しているのだが、そんな魔王国であってもウルスの発言を軽視する者は居る。そんな者達を代表するようなこの男は、マニリオーネの言葉に渋面を作ると吐き捨てる様にそう呟く。
「まぁ実際、俺ら魔族の為に尽力してくれたことは事実として感謝しなければな。正直、無理に力で縛ろうなんて考えん方が良いと思うぞ?」
でっぷりとした腹を揺らし続ける男を横目に肩を竦める若い男性は、今にも噛み付きそうなマニリオーネを見ながら感謝するべきだと話し、その言葉に少し表情をやわらげた彼女を確認すると、会議に居合わせた面々を見渡しながら縛るのは得策ではないと話す。
「軍務大臣ともあろうものがなんと弱腰な!」
この若い男性は、魔王国の軍を取りまとめる軍部の長で、その実力を認められ若いながらに前任者の跡を継ぎ数年なのだが、そんな男性の口から出た弱気な発言に隣の男は腹を揺らしながら声を荒げる。
「弱腰で結構、あんな化け物と戦えなどと言われるくらいなら、今から未開地の開拓任務に就いた方がマシだ」
「・・・それほどか」
自分の気に食わない事にはなんにでも噛み付く隣の男を、蔑むような呆れた顔で見た軍務大臣は、弱腰と言われても特に怒る事も無く、むしろ当然とでも言いたげな口調で、ユウヒに手を出すくらいなら軍のとっては懲罰任務と言っても過言ではない任務の方がましだと話す。
戦う者としても、采配を握る者としてもその実力が知れ渡っている男性からの発言に、隣の男も流石に目を見張り、会議の宣伝を行った老人は深く低い声で唸るように呟く。
「あの左眼はやばい、ありゃ最上級の精霊から求愛を受けた野郎の目だ。あいつを敵に回せばすべての精霊が敵に回りかねんぞ? どのみちウルス様も気に入ってる様子だしな、精霊戦士団は機能しないと思ってくれ」
『・・・・・・』
魔王国には精霊の力を借りて戦う最強の軍隊である精霊戦士団が存在し、その中でも歴代最強の男と言われる現軍務大臣の言葉は、会議室に重く広がる。彼の観察眼は今まで幾多の戦場でその力を発揮しており、そんな彼が心底戦いたくなさそうに語る姿を見て、周囲の魔族だけではなくマニリオーネですら口を閉ざすのであった。
そんな会議室からだいぶ離れた場所にある世界樹の広場、そこではユウヒが黙々と何かを作る傍で、ウルスがどこかに耳を澄ますような姿でほくそ笑みながらユウヒに実況を行っていた。
「みたいな話が進んでるわよ? どうするの?」
「あれって求愛だったのか、てかプライベートもあったもんじゃないな」
彼女が呆れ顔のユウヒに話していた内容とは、現在進行形で水を打った様な静寂が広がる会議室で交わされていた話しである。色々と言われている事実に肩を落としながらも、最後の話しにツッコミを入れたユウヒは、手を休め左目の目袋を指で軽く引っ張りながらこのお城のプライベートについても呆れた様にツッコミを入れた。
「だって、このお城も街も私にとって服や鎧みたいなものだもの? 把握できて当然」
世界樹であるウルスの根は、このお城の隅々にまで張り巡らされている。その為彼女にとってはお城や町は服の様なものであり、そこで何か話をしていれば当然彼女の耳にも届き、そんな彼女が自由に話すことの出来る人間がいたとするならば、当然話のネタに上げられもするだろう。
「・・・とりあえずこれを作って魔力が回復したら出ていくさ」
実際はでっぷりと腹の膨れた男の言葉が気に食わなかったウルスが、ユウヒに告げ口をしたくなっただけなのだが、当のユウヒは肩を落としはしたものの特に怒りもせず、唯淡々と作業を続けている。むしろプライベートって何? 美味しいの? とも言いたげなウルスに呆れると、魔力が回復すればすぐに出て行くと話す。
「・・・寂しい事言うのね」
実際、早々に魔王国を後にした方が色々と面倒事を回避できるであろうことは、詰まらなさそうにしているウルスも理解しており、彼がそう言った思惑の下行動している事も理解できるのだが、その事に寂しさを感じたウルスはその感情を真っ直ぐにつぶやく。
「元々俺はこの世界の人間じゃないんだから、そんなもんだろ?」
「・・・そんなもの、なのかしら?」
石畳の広場の地面に胡坐を組んで座るユウヒは、手元から視線を動かさずに肩を竦めると、元々違う世界の人間である自分があまり深く関わって良いものとは思えないらしく、そんな感情もあってそんなものだと話す、飄々とした雰囲気のある彼の後ろ姿を見詰めていたウルスは、どこか納得のいかない顔で首を傾げると、ユウヒの背中に差す日の光を見上げ小さく呟くのであった。
いかがでしたでしょうか?
世界樹復活で慌ただしくなる魔王城は、同時にユウヒの対応にも慌ただしく動き始めた様ですね。一方的に恨まれているユウヒですが、彼はいつもと変わらぬ平常運転でまた怪しい装置を作っているようです。ユウヒが今度は何を作るのか次回をお楽しみに。
それではこの辺で、またここでお会いしましょう。さようならー




