第一章 ブレイカー
プロローグ
わたしがそのことに気付いたとき、すでに夕方で六時が過ぎていました。
外は暗くなり始めていて、もう校内にはほとんど人がいませんでした。
バスケ部に入っていたわたしは、練習が終わり、家に帰ろうとしていました。
そんなときわたしは初めて、教室に忘れ物をしていることに気付きました。普段なら気付いてもそのまま帰るわたしですが、今回はそういかなかったのです。
慌てて教室に向かったのですが、昼間とは違い、校内は閑散としていて不気味でした。いつもは平気なはずなのに、この日は何かが違っていました。気味が悪くて仕方がなかったのです。
早く取ってこよう。そう思いながらわたしは早足で廊下を歩き続けました。
わたしの通う教室は一階にあるため、すぐに着くことができました。ほとんど時間はかかってなかったはずです。けれども、最近は暗くなるのが早くて、いつの間にか明りがないと、まともにものが見えない状況になっていました。
明りになるものを持っていなかったわたしは、手探りでドアの取っ手をさがしました。
そして取っ手を見つけるや否や、わたしはドアを開けました。
ドアを開けるとそこには先輩の姿がありました。明りがついておらず真っ暗だというのに、何故か先輩の姿をすぐに見つけられたのです。何で先輩が自分の教室にいるのか。そんな疑問は不思議と湧いてはきませんでした。
「……どうしたんですか先輩。こんなに遅くに」
ついわたしは声に出していました。
すると、ずっと窓の外を眺めていた先輩は振り返りました。暗かったために表情ははっきりと見えませんでしたが、何となく先輩は笑っているように見えたのです。
「……ねぇ」
わたしの質問には答えず、そう呼び掛けてきました。
「あ、はい。何でしょうか」
わたしの声を最後に教室は静まり返り、なんともいえない不思議な雰囲気でした。
けれど静かな雰囲気は、先輩の笑い声が上がると同時に、どこかへ消え失せてしまいました。けらけらと笑う先輩の声からは、いつもの先輩らしさが感じられませんでした。何故か不気味で、いつもの先輩ではない別の何か。そんな気がして仕方ありませんでした。
「皆、消えてしまえば良いのにね」
弾んだ声で先輩は言いました。あまりに普段通りの口調だったため、その言葉を聞き逃しそうでした。
その言葉は錯覚ではありませんでした。はっきりと先輩は言ったのです。
そしてその言葉から、何かいやなものを感じたのです……。
初めまして、Fateです。
現代ファンタジーを目指して執筆させていただきます。
それでは、どうかよろしくお願いします。