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プロローグ

「ねぇあなた、今晩のおかずはなぁに?」


 ――俺は選択を間違ってしまった。なぜ俺は彼女を選んでしまったのだろうか? もしあの時に戻れるのなら彼女ではなく、彼女を選べば、どんなに幸せな人生だったのか……。あぁ、そんなこと今になって後悔しても無駄だと分かっているのに……。でももし、もし、あのころの俺に戻れたら……。


「あなた? 聞いてる? 今晩のおかずはなぁに?」


 ダイニングテーブルの椅子に腰掛けている彼女は手に数本の針を持ち、不敵な笑みを浮かべながらそう答える。


「待てよ、今準備するから……」


 俺はソファから立ち上がり、俯き加減に服を嫌々脱ぐとフェイクレザーの黒のエプロンを身に着ける。

 リビングにたくさんある水槽には小さく真っ赤な金魚と太って色のはげた金魚。あっ、また肥えた金魚が真っ赤な金魚を共食いしている。そんな水槽に俺たち家族の姿が映し出される。俺の今はまさに水槽の中に入った真っ赤な金魚そのものだ。


「パパ! だっこ! だっこ!!」


 可愛い愛娘のねだる顔を見て俺は情けない表情を浮かべこうつぶやいた。もちろん彼女に聞こえないようなごくごく小さな声で。


「ごめんな。でもパパ、もうママのことを愛せない」

「じゃぁ、もう一度あの時に戻ってみる?」

「え?!」


 俺はまだ二歳になったばかりの娘の言葉に耳を疑った。娘の声は幼児の声ではなく、まるで大人の女性そのものの声。するとその瞬間、時空がゆがんだ。


「い、一体全体どうなってんだよ?」


 すると俺の愛娘はニコリと微笑みこう言葉を発する。


「決して、私と付き合うことはないように。素敵な人を選んでね」

「え?」


 娘は一体何を言っているのだろうか?

 そう思いながら時空のゆがみと一緒に俺の体も歪み、そして意識が消えていくのを感じた。

 これは夢なのか? 俺は変な夢でも見ているのか……?


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