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前衛的な所有物(ペット)  作者: れきそたん
2/3

私の大好きな御主人様。 後編

 ジリリリリリリリリリリリリ…

 目覚ましが無情にも鳴り響いた。


「結局一睡も出来なかった。」


 一高校生が妄想ならともかく女の子を調教など出来るはずないのだ。

 ましてや童貞には酷な話だ。


 メール着信1件。


『メールで数文字打つだけの簡単な作業。

 解らない事は碓氷わたしが優しく指導します。

 アットホームな調教現場♪


 初心者御主人様大歓迎!

 さあ!新しい扉を広げよう‼』


 委員長。

 メールだとキャラはブレ捲りですね。

 調教にアットホームって一番くっついちゃいけないフレーズですよね!

 気にくわないと蹴りまくるのは優しさですか?

 それに、新しい扉って何ですか?出来ればそっとしておきたいですし、開けたくないですよ!


 そうは言っても、僕は返信一つ出来なかった…。

「ハァ。調教メール…委員長絶対に蹴ってくるよな…」


 そんなこと考えてたら既に登校しないと遅刻するような時間になってしまった。徹夜で朝食抜きって…。



 何とか遅刻は免れたが、下駄箱に靴を仕舞うと委員長に呼び止められた。


「高橋くん。良いかしら?」

 何処に連れていくのか解らないけど、先を歩く委員長に着いていくのは確定らしく。大航海時代の奴隷船から降りた奴隷のような足取りでついていった。


 このままだとSHRに遅れてしまう。

「あの、い、委員長…」

「高橋くん。阪本先生には『私の彼である良太の進路指導の為一時限は休みます。』で話は済んでいるから安心さしなさい。」

 うわっ!色々突っ込む場所がありすぎて…まず阪本先生、そのスカスカな内容を良く許可したな!

「委員長。何故『私の彼』なんて誤解を生むようなことを…」

「なら、『下着泥の高橋くん』がお望みだったかしら?」

「いえ。ありがとうございます。」

 でも、下着泥じゃないし!


 結局、に連れてこられただけだった。


 中に入ると僕の襟首は委員長に捕まれていた。

「メール一つ送れないのですか?御主人様~?」

「委員長ゴメンナサイ!」

 僕は蹴られると思い肩を竦めるが、逆に襟首に掛かっていた力がフアッと消えると委員長は少し僕から離れた。

「どうやら命令よりも言葉遣いを治さないと駄目のようね。」

 ふうっ!

「ところで、高橋くんは御主人様ってどんな存在だと思うの?」

 委員長は期待に満ちた目で聞いてきた。


「ん…。質問の意味が今一つ解らないけど、多分絶対君主とか奴隷の人生を自分の物に考えられる人。…例えば委員長みたいな?」

 言い過ぎた…。



「高橋くん、君は何を見ているんだい?目に映ることが全てではないと頭で考えても、心から解っていて始めて理解してるのよ?」

 彼女の言ってる事は正論だと解ってる…でもそれは一般論だ。

「一般論。」

 えっ?なんで委員長は僕の心の中を…

「別に心を読んでる訳じゃないよ☆ただ君の思考は自身が想像するよりも素直に出来ているんだよ。」

「それは僕が単純だと言いたいのか!」

「そう思うならそれでいい。だが今日は帰宅まで御主人様には個人授業に変更します!」

 どちらが主人か解らない情況で僕の一日は決定してしまった。

 そんな僕の気持ちを無視して数少ない窓から外を見ていた委員長の顔がこちらに向くと、

「高橋くん。ついてきなさい!」

 彼女は木製の机から何か取り出すと部屋から出た。



 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 僕達の学校は敷地に二つの校舎と体育館兼室内プールで概ね出来ている。昔は生徒も多く校舎は満杯でプレハブの部活棟があったみたいだが、現在は少子化もあってかつてのプレハブは取り壊され校舎の一つに入った。

 第二音楽準備室は普段学生が居る学生棟にあり、委員長が向かった先は二階の渡り廊下の先。部室棟だった。


 その中でも一番封鎖されている屋上に当たり前のように鍵を開けている彼女。いつも驚かされる。

「さあ!開いたよ行こうか♪」

 外の光なのか彼女自体かは分からないけど僕はその姿に見とれていた。

「ここに何があるですか?委員長。」

「取り敢えずこれで体育館脇を視て。」

 カードケースみたいのをカシャカシャ動かすとソレを渡してきた。

「双眼鏡?」

「正確にはオペラグラスだけど、まあいいわあれよ」

 彼女が指す場所には二人の男がいた。田仲たなか円山まるやまだ。

 田仲は今時珍しい赤毛のリーゼントの昭和のヤンキーで出来るなら大英博物館に送って飾っておいて貰いたい人物で、円山は田仲によく虐めの対象になっていているのはよく見掛けていた。


「田仲と円山だよね。どうした?」

「高橋くんは彼等をどうみる?」

 どうみるって、仲良い関係とは思えないよな。

「何って虐めの加害者と被害者だよね。」

「それで、どちらが加害者なのかわかる?」

「そんなの、田仲に決まってる。」

 今だって円山は、殴られて蹴られてって被害を受けてるじゃないか。

「本当にそうかオペラグラスで顔を視て。」

 言われた通り観ると吐き気がするほど気持ち悪い光景だった。

「何で円山が薄い笑みを浮かべてるんだよ!」

 此処からでは田仲の顔まで見えないから分からないが円山が被害者とは思えない。

「あの二人、幼馴染みだって」

 だからなんだよ!

「あの二人彼女居ないってか、作らないって公言してるみたいね」

 それって…

「あいつら、男同士だぞ?」

「でも、田仲くん。攻めが緩いと思わない?円山くんは悦んでるから良いけど…私は満足出来ないわ。」

 僕は委員長の顔を今は見たくなかった。隣でくすぐったくで熱い視線が向けられているのは分かる…解りすぎるくらい理解出来てしまったから。

「でも、二人には私達に無いパートナーの絆があるわ。」

 とても、とても羨ましい。そう彼女は続けるがこの時の僕には未だ理解出来るものではなかった。


「高橋くんに聞きます。SMって何だと思いますか?」


「Mはmasochismマゾヒズムで、Sはsadistサディストだと思ってました。」

「…ました?」

「ええ、実際Sはserviceサービスだと考えるのが打倒かなって…」

 今まで以上に委員長に睨まれて答えが間違えたかと思っていた。

「…ご、ごめん…」

「何を謝る必要があるのですか?Mは心身で尽くしSも又心身で尽くしているのです。そしてMは我儘なんですよ。」

 そう言うと、委員長はいたずらっ子の様な笑みを見せた…今まで見たことの無い素敵な笑顔。

「だから、もっと私を御主人様の色に染めてくれないと…蹴るわ☆」

「蹴るのは勘弁して下さい。」

 あれ、見た目ほどアザは出来ないけど痛いんだよな。

「なら、『碓氷 里美は俺の牝犬だ!』って言って下さい☆お・お・ご・え・で♪」

「そんなことしたらバレちゃうよ~。」

「今なら誰も居ませんから…ね。」

「居なくても、聴こえるでしょ?」

「解りました。」

 解ってくれて何よ…り!?



「私、碓氷 里美は高橋 良太の所有物です!昨夜…女にして貰いました~♪」

 大声で言われてしまった。

「委員長~なんてことを~。」

 これからの学校生活どうなるんだ?


「牝犬をどう躾てくれますか?…御主人様♪」







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