ステンドグラスの向こう側
衝動的に書いたブツです
折角なので投稿してみました
双子の方、ごめんなさいm(_ _)m
私たちはいつだって、お互いを利用してきた。
それは場所が変わろうとも、大人に成長しようとも、変わらない。
変わることはできない。
そう思っていたのに。
いつしか私の片割れは、私から離れて世界を知った。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
私の片割れは、私の片割れではなくなった。
1人の人間として、1人の女として、愛しい男の元で幸せを願う。
「いいえ、綺麗になったと思ってね」
「なんだか、お姉ちゃんに言われると複雑だわ」
「造りは同じですものね」
私とよく似た顔の女は、純白の衣装を身にまとっている。
私はその正反対のこの日に相応しくない黒色を身にまとう。
私とよく似た顔の女は、キラキラと輝く白銀の髪。
私はどこにでもありふれた黒色の髪。
私とよく似た顔の女は、誰をも魅了するヴァイオレットの瞳。
私は人を恐怖に陥れる、どこまでも深い闇色の瞳。
背丈も、肌の色も、顔の造りさえ同じなのに、持って生まれた色素の違いだけで、こうまでも違う。
「本当はね」
「ええ」
「お姉ちゃんが羨ましかったの」
「…知ってるわ。私だってあなたが羨ましかったもの」
人目を惹く色を持って生まれたあなたがとても、とても羨ましかった。
一緒に生まれ落ちた私は誰からも相手にされない、かわいそうな子。
可愛い子と可愛そうな子はいつでも一緒。
可愛い子が隣にいて、私は輝くことができる。
それだけが私の生きる道だった。
「ふふ、私とお姉ちゃんはよく似てるわ。お互い無いものねだりで貪欲で…」
「互の好きなものは手に入れなければ気がすまない」
しばしの沈黙が2人あいだにおりる。
鏡越しに相手の瞳を見つめたまま、息遣いさえも聞こえないほどの静寂は、ともすれば、怒号の飛び交う戦場よりも恐ろしい空間となっていた。
可愛い子の唇が震える。
先に口を開いたのは可愛い子だった。
「醜いわね、私達。双子なのに奪い合ってばかり」
「今更よ」
「そう、今更よね。でも、お姉ちゃんはそれでいいの?」
これは、勝者の余裕だろうか。
敗者へ情けでもかけるつもりだとでも?
私はニコリと笑って、話をそらす。
その問に答えるつもりは毛頭ない。
だって、勝者はとうの昔に分かっている。
敗者の本当の気持ちを。
「これで13勝14敗1引き分け、私の負けね。よかったじゃない、あなたの勝ち越しよ?」
そう言って、可愛い子の綺麗に結い上げられた髪に華奢な髪飾りをそっと飾る。
薄桃色のそれは、勝者の美しさをさらに引き立て、かといって存在感を失わない、自分でも満足のいく代物だった。
「勝者には褒美を、でしょ?どう、気にってくれたかしら」
「お姉ちゃん」
勝者は何かを我慢しているような声色で私を振り返る。
鏡越しではなく、直接見るヴァイオレットの瞳は濡れていた。
「もっと喜んでくれてもいいと思うのだけれど、気に入らなければ外すわ。ごめんなさい」
「違う!」
もう一度綺麗な白銀の髪に伸ばした手は、勝者に阻まれ、痛いほどに握りこまれる。
私が小さく、「痛いわ」と告げると少し力は弱まったものの、離す気はないようだ。
「髪飾りが気に入らないんじゃない。私は…お姉ちゃんは、どうして…」
「私は何も変わらない。変わらず、醜いままよ」
あなただけが、美しくなった。
私を置いて、1人幸せになろうというのだ。
「最初から分かってたわ。この物語の結末に醜い女は必要ないってことくらい」
「何を言って…」
言葉につまる花嫁姿のあなたに、私は満たされていく。
普段なら、お互いの考えることなどお見通しであるのに、道を違えた今の私たちには、この距離にいて、手を握っていても、何一つ読み取れることはない。
相手の考えることがわからない。
花嫁は今初めて気づいたのだろう。
それでいい。
必死に探るその視線がとても心地いい。
久しぶりに、私たちは互を意識している。
否、久しぶりに花嫁が私を意識しているのだ。
「美しい花嫁、私はあなたの幸せを心から願うわ」
醜い私からの祝福は必要ないかもしれないけれど。
それでも、私の欲しいものすべてを持っているあなたに送るわ。
「たとえ」
憎しみに支配された私であろうとも、
哀しみに暮れる日々がこの先待ち受けようとも、
「あなたが私を忘れようとも」
それでも、片割れであったあなたに送るわ。
どうか、私の醜い心が付け入る隙を与えないくらいに、幸せでいて。
___私たちの愛するあの男の傍らで、笑っていて。
な、なんじゃこりゃあ…!!
って私もなりました
お粗末さまでした