表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『残り寿命、あと1分。〜君と明日を生きるため、俺は世界の寿命を喰らう〜』  作者: ヒデまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/27

翡翠の鼓動、暴走する捕食者

「無命者」との死闘から一夜。

 学園の救世主となった俺は、しかし、それどころではない事態に陥っていた。

 鏡に映る俺の右腕。

 手首から先が、炭のように真っ黒に変色している。触れても感覚がなく、時折、空間そのものを腐食させるような黒い霧が漏れ出していた。

「……測定不能エラー。今のあなたの身体は、存在してはならない『空白』を抱えているわ」

 そう告げたのは、資料室で俺の腕を慎重に覗き込むエレインだった。

 普段の彼女なら俺を汚らわしいと避けるはずだが、今の俺が放つ「魔力の歪み」は、高潔なエルフの義務感を刺激したらしい。

「いい、シュウ。動かないで。エルフの『内観魔導』で、あなたの体内の時間を調律するわ」

 エレインが俺の前に膝をつき、震える指先で俺の黒ずんだ右手に触れた。

 彼女の指は驚くほど白く、そして熱かった。

「……っ! なによ、この……熱量は……!」

 接触した瞬間、エレインのみどりの瞳が大きく見開かれた。

 彼女の純粋な魔力が、俺の中にある「喰らった虚無」と衝突する。

 エルフの清廉な寿命じかんが、俺の中の底なしの闇に吸い込まれていく感覚。

「エレイン、やめろ! お前の寿命まで吸われるぞ!」

「うるさいわね、黙ってなさい! 私が……私が、あなたを元に戻してあげるんだから……っ!」

 エレインの頬が、苦痛と高揚で赤く染まる。

 彼女の頭上の【一九〇〇年】という数字が、激しく明滅し始めた。

 魔力を注ぎ込むほど、彼女と俺の「境界線」が曖昧になっていく。

 その時、俺の【魔物喰い】が、持ち主の意思を無視して暴走を始めた。

 目の前にある、膨大で、純粋で、甘美な「エルフの寿命」。

 それを欲しがる本能が、黒い霧となってエレインの身体に絡みつく。

「あ、あぁ……っ。なによ、これ……。力が……吸い出されるのに、どうして……こんなに……」

 エレインの力が抜け、俺の胸元に倒れ込む。

 翠の瞳が潤み、視線が定まらない。

 嫌悪していたはずの「略奪者の魔力」に、彼女の魂そのものが共鳴シンクロを始めていた。

「……逃げろと言っただろ、エレイン」

 俺は残った左手で彼女の肩を掴み、無理やり引き剥がそうとする。

 だが、エレインは俺の服を強く握りしめ、顔を上げた。

 その耳は、今まで見たことがないほど真っ赤に色づいている。

「……責任、取りなさいよ。私の時間を、こんなにめちゃくちゃにしたんだから……」

 王女、狐、猫に加え、ついに高慢なエルフまでもが、シュウの「異常な毒」に侵食され始めた。

 それは救済か、それとも破滅へのカウントダウンか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ