境界の向こう側、浮遊島(レギオン)の宣戦布告
執行者を討ち果たし、空に浮かぶ「天秤」を砕いてから数日。
俺たちの頭上からは、かつての忌々しいデジタル数字が消えていた。代わりにそこにあるのは、静かに明滅する**「∞」の紋章**。
「……信じられない。学園の観測装置が、シュウ君の周囲十メートルだけ『時間の概念が存在しない』ってパニックになってるわ」
リィネが端末を叩きながら、呆れたように笑う。
俺たちは今、学園を離れ、大陸の果てにある「断絶の崖」に立っていた。
「シュウ様、あそこ……見てください」
ミーニャが鋭い指先で指し示したのは、雲の切れ間。
そこには、今まで地図にも載っていなかった巨大な**「浮遊島」**が、黒い影を落として浮かんでいた。
「……あれが、執行者たちの本拠地……『時の揺り籠』」
フィオナが、王家に伝わる禁忌の伝承を思い出したように呟く。
そこは、寿命を管理し、使い古された「命」を廃棄する、世界のゴミ捨て場にして心臓部。
その時、浮遊島から一本の光の柱が放たれ、俺たちの目の前の空間を切り裂いた。
現れたのは、これまでの執行者とは一線を画す、圧倒的な威圧感を放つ影。
「……面白い。システムを書き換え、無限を宿した『バグの王』か」
現れたのは、漆黒のドレスを纏った、人形のように無機質な少女だった。
彼女の背中には、折れた時計の針のような翼が六枚。
「私は第零執行者、クロノ。……シュウ、あなたに選択肢をあげる。その無限の寿命を差し出し、世界の『歯車』に戻るか。それとも……その四人の少女と共に、『全人類の寿命』を賭けたゲームに参加するか」
「全人類の……寿命だと?」
エレインが、震える手で杖を強く握りしめた。
「ふざけないで! 誰がそんな勝手な……っ!」
「……既に天秤は傾いた。彼が無限を手にしたことで、世界の総量は不足している。……彼が寿命を返さなければ、明日にはこの大陸のすべての人間が『ゼロ』になる」
クロノの冷徹な宣告。
俺が自由を手に入れた代償は、世界そのものの消滅。
あまりに残酷な「等価交換」。
「……ハッ、相変わらず性格の悪い神様だな」
俺は一歩前に出た。
右腕の銀龍の紋様が、クロノの存在に反応して熱く、鋭く輝き出す。
「いいぜ。そのゲーム、受けてやるよ。……ただし、俺が勝ったら、その浮遊島ごと、あんたらの『管理社会』を全部喰らい尽くしてやる」
シュウと四人のヒロイン。
彼らの戦いは、学園内の順位争いから、ついに「人類の存亡」を賭けた神への反逆へとステージを移す。




