表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『残り寿命、あと1分。〜君と明日を生きるため、俺は世界の寿命を喰らう〜』  作者: ヒデまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/27

残り寿命、あと七日

その剣が俺の喉を貫いたとき、溢れ出したのは鮮血ではなく、**「時間」**だった。

 鈍い音とともに、視界の端でデジタルの数字が狂ったように逆回転を始める。

 カチカチカチ、と心臓の鼓動よりも速い速度で、俺の命が削り取られていく。

『直撃。減算推定——三年六ヶ月』

 無機質なアナウンスが脳内に響く。

 喉に刺さった白銀の剣を引き抜かれても、痛みはない。傷跡すら残らない。

 だが、俺の頭上に浮かぶホログラムの数字は、無情にもその分だけ減っていた。

「……はぁ、はぁ……っ」

 膝をつく俺を見下ろし、クラスメイトの男子が冷笑を浮かべる。

 彼の頭上には、眩いほど黄金に輝く数字が鎮座していた。

【余命:四五八年一一ヶ月〇二日】

「悪いなシュウ。寸止めのつもりだったんだが、お前があまりに鈍いもんで『数年分』ほど掠っちまったよ」

 周囲から下卑た笑い声が漏れる。

 ここは国立刻限魔導学園こくりつこくげんまどうがくえん

 魔物を狩り、その余生を奪い合うことで「永遠」を競うエリートたちの揺り籠だ。

 ここでは、寿命の長さこそが身分であり、強さの証明だった。

「……気にするな。かすり傷だ」

 俺は立ち上がり、自分の頭上に浮かぶ「絶望」を見上げる。

【余命:〇〇年〇〇ヶ月〇七日 〇四時間二一分】

 残り、あと七日。

 学園で唯一、死神の指先が首筋に触れている劣等生。それが俺、シュウだ。

「おい、死に損ない。そんな端金みたいな寿命で、よく学校に来れるな? 記念祭までにゼロになって、消滅ロストしちまうんじゃないか?」

 嘲笑を背に受けながら、俺は訓練場を後にする。

 誰もが俺を避けて通る。死は伝染するとでも思っているかのように。

「シュウ君!」

 背後から、鈴を転がすような声がした。

 振り返ると、一人の少女が駆け寄ってくる。

 燃えるような赤髪をなびかせた、この国の第一王女——フィオナだった。

「またあんな無茶をして……。あなたの『カウント』はもう、そんなに少ないのに」

 彼女の頭上の数字は、八〇〇年を超えている。

 俺とは住む世界が違う。それでも彼女だけは、俺の残り僅かな時間を「無価値」とは呼ばなかった。

「大丈夫だ、フィオナ。俺にはこれがある」

 俺は、手のひらに宿る黒い紋章を見つめる。

 ハズレスキル【魔物喰い】。

 他者の寿命を奪うのではない。魔物の肉そのものを喰らい、その「境界線」を超えた力を我が物とする禁忌の力。

「今日の地下演習……俺が行く。そこで、俺の時計を動かしてみせる」

 その時、俺はまだ知らなかった。

 その地下演習に、俺の残り七日を「一分」にまで追い込む最悪の罠が仕掛けられていることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ