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3

アサの部屋で、コタツに入りながら煮えていく具材を見る。卓上コンロに乗せた鍋の中で赤いスープがグツグツと煮え、野菜はもうくたくたに柔らかくなるほど火が通っている。

アサは菜摘の取り皿を手に取り、お玉を掲げた。


「なっちゃん、この中で美味しそうだと思うえのきどれ?」

「え、えのき? どれも同じに見えるけど……これ、かな」


少し困惑した様子で菜摘が指さしたえのきを、アサはお椀によそってあげる。そして自分の分もよそい、いつものように二人で手を合わせた。


「いただきます」


熱々の具材を、ハフハフと空気で冷ましながら口に入れる。トロトロの白菜やシャキシャキとしたきのこの甘みと旨みがピリ辛のスープに溶け出し、それを一口啜れば、身も心もじんわりと温まる。

一杯目を食べ終えたアサは、箸を置いて顔を上げた。


「なっちゃんさっき、えのきはどれも一緒だって言ったでしょ」

「え、うん」

「えのきはどれも一緒に見えるけど、傘の大きさとか丈の長さは、どれも少しずつ違うんだよ」


突然えのきについて語り出したアサの話を、菜摘は自分の器に入ったえのきを見つめながら、黙って聞いていた。


「共通点を見つけたとしても、よくよく見るとやっぱり違う。きのこであり、えのきであるってことしか、同じところはない。そしてそれは、えのきとして生まれて、同じ鍋の中にいる限り覆らない」


傍から見たら、若い女性二人が鍋を囲みながら、それには箸をつけずにえのきについて真剣に話す構図は、不思議で滑稽に見えるかもしれない。それでも、アサは今この話を、菜摘にする必要があった。菜摘と、話をしたいと思った。


「どうせ違うなら、違う部分があるってことを当たり前に捉えて、『そっか、君は傘が大きいんだね』くらいに考えていくしかないと思うんだ」

「……うん」

「逆にえのきと豆腐は全く違うし、同じところなんてないように見えるけど、この鍋の中にいて、最後は私たちに食べられちゃう、ってところは同じ。そう考えると、えのきだろうが豆腐だろうが、結局”食べ物“でしかない。同じように見えるところも、明らかに違うところも、『そっか、君はそうなんだね』って私は思うんだよね」


そして、アサはえのきと豆腐を一緒に口に運んだ。


「そんなことを前に話したら、『ドライだね』って言われちゃった」

「いや、アサちゃんは優しいよ……自分と同じものを相手に求めて、それが返ってこなくて勝手にその子を恨む私なんかより、全然優しい」

「求めることも傷つくことも、悪いことじゃないよ。その分、相手のことを知ったってことだから」


菜摘もアサに倣い、えのきと豆腐を一緒に食べた。空いた菜摘の器に、アサはまた新たな具材を鍋からよそい始める。


「何が言いたいかって言うとね。熱量が同じでも価値観が違う人もいるし、熱量が違っても価値観が同じ人もいる。何か一つの物差しで、人って測れないんじゃないかなぁ」

「…………」

「だから私は、色んな人の色んなことを知りたい。『そっか』って思う瞬間を増やしたいんだ」


アサから器を受け取り、菜摘はそれを数秒見つめた。そして何回か頷いて、「そっか」と言った。アサが菜摘の方を見ると、彼女は穏やかな笑顔で、もう一度言った。


「そっか」


二人は顔を見合せて、くふふっと笑った。


「ねぇこの後さ、〆はラーメンにする? 雑炊にする?」

「うわぁ迷うけど……雑炊かな」

「よっしゃ、ちょっと待ってて」


アサは立ち上がり、冷凍ご飯をレンジで解凍し始めた。そして温まったご飯といくつかの調味料を手に、また戻ってきた。


「なっちゃん、ちょっと目瞑ってて」

「えー? わかった」


鍋の中には、スープと少しの野菜が残っている。アサはそこに、ご飯、ニンニク、コチュジャン、ごま油を少しずつ足して、お玉で混ぜていく。そしてスライスチーズを乗せ、また蓋をした。


「目開けていいよ」


菜摘が顔の上の手を退けて瞼を開けると、アサは鍋の蓋を外した。ふわっと立ち上る湯気の中で、スライスチーズがとろりと溶けていた。


「何これ!」

「キムチーズ雑炊です」

「最高! アサちゃん天才なの?」

「まだ完成じゃないよ」


雑炊を二人分の器によそうと、アサが「じゃじゃん!」と自慢げに取り出したのは、フレーク状の韓国のりだった。


「好きなだけかけちゃお」


二人はまた、顔を見合せて笑った。

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