九回は死ななかった猫
ある日、学校にやって来るようになった猫――
その猫は長い毛並みと三色の色あいから、〝モミジ〟と呼ばれるようになった。
モミジはきれいだけど、怖い猫だった。誰にもなつかず、媚びたりもしない。それでいて相手を自由に、好きなように操ってしまう。
でも、ヨシ君だけは例外だった。
ヨシ君とモミジは、不思議な関係だった。そこにあるのは愛情でも、信頼でもない。でも親密で、仲がいい。まるで、夕暮れ時に足元にくっついて家まで離れない、影法師みたいに。
そんな二人(一人と一匹)を見ながら、わたしは自分でもよくわからない、小さな胸の痛みを覚えるのだった。
でもある日、そんなモミジが踏み切りの近くで死んでいるのが見つかる――
(23/6/19~23/7/18)
その猫は長い毛並みと三色の色あいから、〝モミジ〟と呼ばれるようになった。
モミジはきれいだけど、怖い猫だった。誰にもなつかず、媚びたりもしない。それでいて相手を自由に、好きなように操ってしまう。
でも、ヨシ君だけは例外だった。
ヨシ君とモミジは、不思議な関係だった。そこにあるのは愛情でも、信頼でもない。でも親密で、仲がいい。まるで、夕暮れ時に足元にくっついて家まで離れない、影法師みたいに。
そんな二人(一人と一匹)を見ながら、わたしは自分でもよくわからない、小さな胸の痛みを覚えるのだった。
でもある日、そんなモミジが踏み切りの近くで死んでいるのが見つかる――
(23/6/19~23/7/18)
1(猫の名前は――〝モミジ〟になった)
2025/07/24 00:00
2(昔、猫のミイラはお土産だった)
2025/07/25 00:00
3(時計の針くらいの小さな音)
2025/07/26 00:00
4(そんな死にかたを選ぶ猫じゃない)
2025/07/27 00:00
5(ステンドグラスとカメラと和菓子屋)
2025/07/28 00:00
6(ひょうたんからは意外なものが飛びだすものである)
2025/07/29 00:00
7(愛情と憎悪は同時に成立する)
2025/07/30 00:00
8(魂を閉じ込める)
2025/07/31 00:00
9(九回は死ななかった猫)
2025/08/01 00:00