表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

三話 猫ハーレム

日光で目を覚まし、私はゆっくりと体を起こした。


辺りを見渡すと、私は木漏れ日の降り注ぐ森の中にいた。


人がすんでる気配は微塵もないね、希望通りの場所に飛ばされたんだなぁ。


取り敢えず自分の現状を確認しなきゃ。

えーと、ステータスオープンって言えば自分のステータスを確認できるんだよね?


「ステータスオープン!」


唱えてみると、目の前に近未来的なディスプレイが現れてステータスを表示した。


個体名:猫宮心

種族:人間

職業:テイマー

称号:【猫狂い】【猫に好かれるもの】

HP:100 MP:100

力:50 素早さ:100

防御力:100 魔力:10

スキル:テイムA、鑑定


ふむふむ、希望通りに猫特化なステータス構成だね。

HPとかMPとかの数値は判断基準がないと高いかどうか分かんないけど。


一個一個確認していこうか、えーと、ディスプレイで触ったら確認できるかな。

そう思い私が称号の部分に触れると、詳細の情報が表示された。


称号:【猫に好かれるもの】

猫からの好意を一点に浴びるものに与えられる称号。魔物も含めた猫種族から好意的に見られるようになり、テイム時にバフがかかる。


え、メチャクチャ良い称号じゃん!

これ持ってれば猫ちゃんに無条件で好かれるってことでしょ?


これ前世で持ってたかったなぁ、そしたら猫カフェでハーレム築けてたのに。


そして、もう一つの称号だね。どっちかって言うとこっちが気になるんだよな。


称号:【猫狂い】

猫に対して狂気的な愛を持つものに与えられる称号。猫をテイムするほど自身のステータスにバフがかかる。


……何これ。猫に対して狂気的な愛を持つもの?


何それ照れるじゃん。私の愛がケット・シーちゃんに認められたってことだもんね!


ステータスにバフってのは多分HPとかが上昇するってことだね。


取り敢えずこれで現状は把握できたかな。

あとはここがどこかなんだけど。


現状を把握するために歩いていると、小さな湖を発見した。ちょうど良いや、今の姿はどんな感じなのかな。


覗き込んでみると、そこには絶世の美少女の姿があった。


ショートボブの黒髪に切れ長の目を携えた整った顔は、少し幼さを残している。

服は私が生前持っていた、一番のお気に入りであるパーカーとジャージだった。


これが私の姿なの?めっ……ちゃくちゃカワイイじゃん!言ってた通り、年齢は十歳くらいだね。


ガサガサッ!


現状を確認し終えて周囲の探索をしようとしたその時、背後の茂みから不穏な音が鳴った。


え、何々?何がいるの?もしかしなくても、魔物って奴だよね。仲間もいないか弱い少女がどうやって戦えば良いのよ!


 バッ!


怯えて後退りしかできないでいると茂みから何かが飛び出し、私は思わず目を閉じた。


「やめて!こんな細身の女食べても美味しくないよ!」


思わず私は意味不明なことを叫びながらうずくまった。しかし、いつまでたっても襲われる様子がない。


何?何が起こってるの?


「ニャ~ン」


ハッ!今の天上の響きは、まさか!


私はバッ目を開け、声の主を視界に捉えた。こ、これは……!


私の眼前に姿を表したのは、尻尾が二股に別れた、猫だった。


「猫ちゃぁぁん!」


私は思わずその猫に飛び付き、頬を擦り付けた。


「カワイイねぇカワイイねぇ!なんか尻尾二本生えてるけど、そんなことどうでもよくなるくらいかわいいねぇ!」


抱きついてみると意外と筋肉質で、二本の尻尾は長く先が細い。アイラインのように黒く縁取られた瞳が最高にカワイイ。


特徴的にはシンガプーラって猫種に似てるけど、この尻尾もあるし多分違うんだよね。えーと、ケット・シーちゃんの話だと、鑑定を使えばステータス見れるんだったっけ。


「鑑定!」


 種族:猫又

 個体名:なし

 称号:なし

 HP:150 MP:50

 力:100 素早さ:200

 防御力:50 魔力:20

 スキル:なし


 スキルとか称号とかは無しで、各数値は私と変わらないか寧ろ高いくらいかな。


 というかこの猫又ちゃんて多分あんま強い方じゃないよね。その猫又ちゃんに負けてる私って……もしかしてステータス低すぎ?


「ニャ~ン」


 うっ……やっぱりカワイイ!これは是非とも仲間にしたい。テイムって唱えれば良いんだよね。ケット・シーちゃんが猫なら何でも仲間にできるって言ってたからいける筈!


「テイム!」


『猫又のテイムが完了しました』


 私が唱えた瞬間、猫又ちゃんは優しい光に包まれると同時に私の目の前にディスプレイが表示された。こんなにあっさり仲間になるの!?


『個体名をつけてください』


 個体名?この子の名前ってことか。じゃあ猫又だから……。


「君の名前はマタゾウね!」


「ニャ~ン」


 なんだか嬉しそうだなぁ、カワイイ。


 最高にカワイイ子も引っ掛けれたし、ちょっとだけこの辺りを散策してみようかな。


「ねぇねぇ、この辺りを散策したいんだけど、案内してくれない?」


 私は仲間になったマタゾウにさっそく話しかけた。猫に話しかけるのは猫好きの性だ。


 するとマタゾウは私の言葉が通じたかのように歩き始めると振り返って「ニャ~」と鳴いた。


「こっちに来いってこと?」


 そりゃ喜んで着いていきますとも。マタゾウになら騙されて崖に落とされても魔物の巣に放り込まれても怒るわけないんだから。


 私はマタゾウの後ろについて歩いていった。たまに私がついてきてるかどうか振り返って確認するのがカワイイなぁ。


 そのまま歩いていくと、森が少し開けて、大きなモフモフの塊が姿を表した。


「な、何これ」


 私が呆気に取られて動けないでいると、マタゾウが大きなモフモフに近づいていって、そのまま上に飛び乗った。


「む、どうした猫又の」


 どこからともなく声が聞こえたかと思ったら、モフモフから可愛らしいお顔が現れた。


「おぉ客人を連れてきたのか」


 その姿は前世の猫種でいうペルシャ猫のような姿だった。フサフサとした豊かな長毛は野生を感じられない程綺麗な銀色を煌めかせ、少しタレ目な瞳は穏やかな上品さを携えている。


 何よりも驚くべきはその大きさだった。体長五メートルはありそうな巨体を、草むらのベットの上に横たえる姿はスフィンクスのような神々しさがある。


「客人、私はこのマタタビの森の主、キャスパリーグだ。猫又をテイムされたのだな、この子が懐くということは悪いお人では無いのだろう、ゆっくりしていくと良い」


「ご丁寧にありがとうございます、私はこころって言います」


聖母のように柔らかく重厚な声を響かせて言った。

長毛が風になびかれて揺れている。

やばい……したい。


「ん、どうしたのだココロ殿よ?」


「あのキャスパリーグさん、一つお願いしても良いでしょうか」


「おぉ、何でも言ってくれ、この老骨に叶えられることであれば叶えよう、客人はもう仲間なのだから」


 私は一つ深呼吸をして、覚悟を決めた。私の決意めいた視線を受けてキャスパリーグの顔に真剣さが浮かぶ。


「あなたのお腹に、飛びこませては貰えないでしょうか」


「……は?」


 キャスパリーグが今までの余裕が噓かのような間抜けな声を発した。


「いや、あなたのモフモフな毛並みを堪能させて頂きたいと言いますか、前々から猫の毛並みに包まれたい夢があったのでここで叶えたいと言いますか」


 今さらになってモジモジとしながら言う私に、キャスパリーグは一つため息をついた。


「まぁそれがココロ殿の望みだと言うのなら、良いだろう」


 キャスパリーグはあきれたような顔をしながらも、お腹を見せてくれた。豊かな毛並みを携えた柔らかそうなお腹だ。


 ふぉぉ楽園が見える。それじゃあ……猫宮、行きまーす!


 私はキャスパリーグに向かって全速力で走り出した。そして近くまで行くと、バカみたいに両手両足を広げ、大の字の形で突っ込んだ。


 モフッ。


 キャスパリーグの豊かな毛並みが私の体を優しく受け止めると同時に、香木のような香りが鼻腔を刺激した。


「すうぅぅぅ……はぁぁ……生き返るー!コレコレぇぇ!」


「そ、そうか、ココロ殿が喜んでくれるなら良かった」


 ドン引き気味のキャスパリーグを他所に、私は猫吸いをしまくった。キャスパリーグは呆れながらも、いつまでも猫吸いをさせてくれた。やはり猫様の懐は深い。


 小一時間ほど吸ったあと、私はやっと満足して離れた。


「いやー、ありがとうごさいます!お陰で生き返りました!」


 なぜかツヤツヤになった顔を向けて私は言った。


「いやいや、この程度で良いならいくらでも。それじゃあココロ殿も来たことだし今日は宴をしようではないか」


 そう言ったキャスパリーグが「ニャ~」と一声鳴くと、周りの茂みから続々と猫が姿を表した。


 その姿は様々で、白い体に炎を纏った猫や、金色の毛をシャナリシャナリと煌めかせる猫もいる。


「さぁ皆のもの、新しくこの猫の聖地、マタタビの森の仲間になる者だ。精一杯歓迎しようではないか」


キャスパリーグの呼び掛けに呼応した猫たちが、一斉に私のもとに集まった。その行動は様々で、私の体を登って顔を舐めたり、足に体を擦り付けたり、私の足元で寝てしまったり。


私の体はすぐに猫で埋め尽くされ、端から見ると毛玉の塊のような姿になった。


はぁぁ、幸せぇぇぇ!異世界来て良かった!もうここで死んでも良いヨォぉぉ!


せっかく掴んだ生を幸せで手放しそうになりながら、私の異世界生活が幕を開けた。











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
虐げられてきた心ちゃんが異世界に転生し、 猫ちゃん達と仲良くなれて良かったです! これからも心ちゃんに幸あれ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ