九話③
「え?」
私は咄嗟に後ろを振り返ったが、何の姿も見えなかった。
「何もいないよ?」
「うん、見えないんだけど、ついてきてるんだ」
マグちゃんが嘘をつくわけはないし、野生の感で何か感じ取ってるのかな。
尾行か。誰の差し金なんだろう。
まぁ十中八九スフィアさんな気はするけども。なんか私のこと疑ってた感じだったし。
姿に関しては、魔法か何かで隠してるのかな?
全速力ではないとは言え、マグちゃんについてこれるってことはなかなかのスピードだね。
倒してもいいんだけど、マグちゃんに危険なことはさせられないし、逃げるか。
「マグちゃん、追いかけっこだよ!アイツら振り切っちゃえ!」
「分かった!頑張るよ!」
私はマグちゃんの全速力に備え、マグちゃんにしっかりと抱き着いた。
もちろん振り落とされないためであって、ドサクサに紛れて猫吸いするためじゃない。
息が荒いのは気のせいだ。
「じゃあ行くよ!そりゃぁぁ!」
そう叫ぶとマグちゃんは一瞬で加速し、光の矢となって駆け抜けた。
十分もしないうちにマタタビの森にたどり着くと、私を気遣って少しづつ減速して止まった。
「ご主人!振り切ったよ!」
マグちゃんは誉めてほしそうに私の方を振り返って言った。
「スゴいねえマグちゃ~ん!」
「へへへー、もっと誉めて~」
甲高い声で誉めながら顎の辺りを撫でてあげると、マグちゃんの喉からゴロゴロと音がなり始めた。
体は大きくてもちゃんと猫ちゃんなのがカワイイんだよねぇ。
「随分と長い散歩であったな、ココロ殿」
声のする方に振り向くと、キャスパリーグが森の入り口まで迎えに来てくれていた。
「ただいま~、もうお腹ペコペコだよ。ご飯もうできてる」
「出来てるえ、全く手伝いもしないでどこに行ってたんだえ?」
呆れ声と共にキャスパリーグの背中から、金華猫の金ちゃんが姿を現した。
「金ちゃんも迎えに来てくれたの?」
「勘違いするなえ、私はキャスパリーグに連れられて来ただけだえ」
金ちゃんはフンとそっぽを向いてしまった。
つれないなぁ、そこもまたカワイイんだけど。
「金華猫はココロ殿の帰りが遅いと言ってソワソワしておったよ、ココロ殿の匂いがした時に真っ先に向かったのは金であったよ」
「なっ、キャスパリーグ!それを言うでない!」
「金ちゃぁぁん!!そんなに私と会いたかったんだねぇ!チュッチュッ!」
私はすぐさま金ちゃんに抱き着いた。
だせる限りの愛情表現を使って金ちゃんを愛でまくっていった。
「ウニャァァ!離れるえご主人!」
金ちゃんは私をグイと押し退けて、出来た隙間からチュルンと抜け出してしまった。
いや~、猫のツンデレご馳走さまです。
押し退けられた時に肉球も堪能できたし、最高の帰還だな。
「それでは広場へ行こうか、皆待っているよ」
私と金ちゃんの逢瀬を温かく見守っていたキャスパリーグがそう言うのに従い、私は広場へと向かった。




