第九話 家族会議2
この話から、思考読み取りの権能が発動します。
やっとです。
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ー家族構成振り返りー ※名字は除いてます。
・父:ヴァルド=ジード
・母:エリィ=フェリシア
・長男:フェリス=セラアミラ
・次男:ルード(魂名なし)
・長女:ミレーユ=セラリネ
───食堂には、静かな緊張が流れていた。
さっきまで陽の光で明るかった食堂は、蠟燭の優しい光に包まれている。
その長い食卓の議長席ともいえる場所に座っているのは、フォルシオン家長男──フェリス=セラアミラ。
相変わらず、整った顔立ちに冷たい知性の色を浮かべた彼は、皆が席に着いたのを確認すると、口を開いた。
「……では、始めましょうか。今回の議題は、カインの学園進学についてだ。」
一瞬で空気が変わる。
フォルシオン家の会議といえば、通常は商会の業務や財務の見直しが中心だ。
しかし、今日の議題の中心にいるのは、オレ、6歳。
全員の視線がオレに突き刺さる。
(サブ、どうしたらいい?)
【”思考速度上昇”使用中。 私との会話は現実だと、1秒に満ちません。】
【本題ですね。とりあえず、「何するのぉ?」、と。】
「何するのぉ?」
【完璧です! そうですね、ここで試しに”思考読み取り”を使用しますか?】
(ソレ、早く言って欲しかった。使って。)
【──“思考読取り”起動──】
サブの内部音声が聴こえた途端に視界に、例のフィルムがそれぞれの頭上に現れる。
そしてその情報は、“文字”では無く“感覚”で分かる。
まるで洪水のような思念の奔流。
しかし、サブはそれを難なく瞬時に選別して、大事な情報だけを抽出してくれた。
【最初に、長男フェリス=セラアミラからです。彼は───】
何故、カインは神名を授かったのか。
その力は、商会にとって有益であるか。
それとも、災をもたらすのか。
その様にして、オレを見極めようとしている。
そこに“兄”としての感情はなかった。
【───以上です。】
(サブ、コイツ人間か? 機械みたいに冷徹なんだけど。)
【そんな事、言わないで下さいよぉぉ。
……私だって機械の一種みたいな存在なんですから。】
【まぁ、でもそうですね。】
(……ゴメンナサイ。)
【まぁっ、私はそんな低能とは大違いですからねっ!】
クソ、この役者AIめ。謝るんじゃなかった。
そんな事を思っている間に、サブは次の情報を伝えてきた。
〈ルード〉
こちらからは、フェリスとは違う冷たさと、熱を持っている。
どうして俺は評価されない。
俺だって色々結果を出しているのに。
また、アイツか。
その心の奥にある“怒り”の感情が垣間見えた。
また、認められたいという欲求や嫉妬が入り混じっている。
ただ、それらはどこか「子供っぽさ」を感じさせる。
〈ミレーユ=セラリネ〉
────情報読取り失敗。
彼女は、魂の解析・鑑定・測定をしていた為に、「心の壁」を作ることが可能です。
それを行うことにより、“広範囲版思考読取り”でのスキャニングが出来ませんでした。
(サブ、ミレーユって危険だよね?)
【それを解析するのが、今後の課題です。 観測警戒ランクSを継続します。】
〈ヴァルド=ジード〉
彼は、放任主義。
この会議の行方で、カインが長男に制限されるのを良しとしていない。
味方につけるには、今がベストタイミングです。
〈エリィ=フェリシア〉
彼女は、やはり商会主であるため、冷徹な思考回路を持っている。
この子の存在は、商会の帝国での立ち位置を変え得る。
帝国との交渉材料になる。
交渉失敗だと、すべてが瓦解する可能性も否定できない。
しかし、長年の経験も有しているため、母親としての心配もあった。
あの子は、本当に学園で学べるのか。
他の子と変わらず、幼いし。
でも、あの子の未来を封じたくは………ない。
【─────以上が彼彼女らの思考状況です。】
ここで、一旦意識を現実に戻す。
時間の経過はサブの通り、ほとんど無かった。
そんな中、フェリスがオレに問う。
「カイン、お前は自分の進学についてどう考えている?」
この返答によっては、オレの選択肢が狭まる。
さぁ、どうするべきか─────
次回へ続く。