第三十二話 魔法と世界の秘密
この世界の根幹編。
もうクリスマスイブなんだな〜。と思うと一年って早いですね。
(……で、何の用なの?)
そう。未だその答えを聞いていない。
でも、サブからは、オレとお喋りしたいだけと聞いているけど、、、。
【だから、お喋りしたいだけ。サブからもそう言われたでしょ?】
というか、今昼食中なんですけど。
あっ、でも向こうには分からないのか。
さっき、心のなかで思ったことはラーファに読み取られなかったみたいだし…………、でも多分こっちの監視はしてるんだろうな。
(……話のネタがない)
【捻り出しなさいよ。つまんないでしょう? 私がさぁ!】
そんな事を言われましても。
………………。
…………。
……。
あっ、そうだ!
(質問になっちゃうけど、いいかな?)
【私にかかれば、基本的にその世界のアレコレは全て分かるわよ!】
この回答はYesでいいのかな?
(じゃぁ、なんでオレは魔法が使えないの?)
【…………えッ。使えない理由ない筈だけど?】
…………えッ?
いやいや、オレは魔法回路がないから使えないって言われたけれども、、、。
(魔法回路が無いから魔法は使えないと言われたけど?)
【ああ、そっか。この世界の測定器はショボかったっけ。カインは知らないはずだから説明しておくけど、地球のある世界のように118種類の元素から全てが成り立っているわけでは無いの。まぁ、これは冷静に考えれば分かることよね】
うーんと、何処から突っ込むべきかな。
何かいきなりこの世界の説明をされている。でもまだここまでの範疇は理解出来る。だって、自分の意思だけで体外で水を生成するだけでも地球世界ではあり得ない。そもそもの法則から外れている。そのような考え方は、非常に合理的だ。
又、会話には直接的に関係しないが、今、オレの手が動かせない。正しくは、超ゆっくり動いている。だから、目も全く動かないので周囲も見渡せない。けれども、目線の先の料理の湯気はほぼ完全に止まっていて、不気味だ。
そんな事を考えていても、ラーファの説明は続く。
【この世界は、200種類超、正確には248種類の元素で構成されているの。基本的に、地球の世界の94個はこの世界と一緒なんだけど、残りはこの世界特有の物なの。ここまで大丈夫?】
(うん、なんとか。既に情報量オーバーだけど)
【まぁ最悪サブが会話ログをとってくれているから良いでしょう。また今度分からなくなったらサブに聞けるから】
【もちろん、全て記録中です!】
サブの生き生きとした声が響く。
AIの様な存在に「生き生き」って表現は変だけど。
【残る152種類の特有元素で、魔法の基である魔素、幽霊等の実態の無い存在の基となる霊素。ミスリルやオリハルコン、アダマンタイト、魔石、とかの物質が出来るの。ちなみに、サブがミスリル、オリハルコン、アダマンタイトの構造は知っているから、変形も簡単に出来るわよ】
これって、なんでも出来るってことになるな。
【で、本題に戻るけど、貴方は魔法を使えるの。と言うか、本来誰でもその世界にいる者は使えるのよ。だけど、アクロス教教祖がその仕組みを一部変更して使えない人間を創り出したの。それが色々な人に遺伝して、使えない人が少しずつ増えて、その結果魂名を持たない者が出てきてしまったというわけなのです。】
ルードが該当するのか。
(ってことは、オレの魔法回路が無いのもそのアクロス教教祖が原因?)
【まぁ、そういうことになるかな。だから、君には私の譜系の魂名を与えて、新たな回路を授けたの。これは、あの魔法回路測定器では感知出来ないからあんまりっていうか真に受けない方がいいかな。そんなわけでサブも結界を展開出来る筈。それを貴方が知らないということは、サブが内密にしていたということなのね】
(オレが魔法を使えないのは、サブが隠蔽していたから、と)
【いえいえ、私はそんな小細工致しません! そもそもカイン様が諦めようとしていたでは無いですか!】
(いやいや、サブ言ってたよね。【魔法こそ使えない】ってさ。それこそこの間ラーファに渡した“会話ログ”だっけ。あれを出せよ。全部記録がとってあるんだろ?)
【ウグッ、…………、ラーファ様、ログです】
そう言って会話に参戦してきたサブが会話ログをラーファに送った。あの間が気になるが──、どうせ碌でもない事をしているんだろうな。
【ちょっと〜、サブっ、会話が黒く塗りつぶされてるんだけど。ねぇ?】
【…………………………黙秘権を行使します】
何処ぞの政治家みたいなことをしやがって。不正だらけの収支報告書じゃないんだぞ!
【まぁいいわ、ポンコツAIは置いといて、今日寮に帰ったあとにでも練習してみなよ。あの魔導師、家事バカなぶん超危険魔法を平然と料理に転用しているのよ。だから、練習に付き合ってもらうと良いかもねってのが私からのアドバイス!】
あー、キャパオーバーで頭が痛い。
そんな事を思っている間、【私がポンコツAI、ポンコツAI、あああああああああ!】と、サブが脳内で喚き散らして、余計に疲れた。
【あっ、今月の時間制限が……】と、ラーファが言ったので向こうから【楽しかったですね、じゃあ、また】といって会話が終わり、手が動くようになった。
サブは再起不能になってしまったようなので、このまま一人で昼食を食べ終え、教室に戻った。
こうして、午後の授業も受けて、帰りの時間がやって来た。
その頃には、サブも直っていた。
─────────────
帰り道。
寮へ向かう廊下で、明らかに視線を感じる。
さっきまでとは質が違う。
好奇心じゃない。値踏みの目線。
【上位クラス所属生徒、複数名が監視行動をしています】
(派閥、早速動いてるな)
【推奨行動:単独帰宅】
(それ、余計危なくない?)
【“群れない神名持ち”という印象を与えられます】
……なるほど。
寮に戻るまで、誰にも声をかけられなかった。
だが、その沈黙が逆に不気味だった。
部屋に入ると、ようやく肩の力が抜ける。
「……学園生活、想像以上に面倒だな」
【ですが、想定範囲内です】
「それが一番怖いんだけど」
【ラーファ様との会話は想定外でしたが】
「そうですか」
ベッドに腰を下ろし、天井を見上げる。
ミレニア。派閥。上級生。
そして、神名持ちという立場とラーファとの会話。
今日一日で、学園の裏側と世界の法則はだいぶ見えた。
──ここは、安全な学び舎じゃない。
実力を示した者から、
静かに、確実に、絡め取られる場所だ。
「……まぁ」
小さく笑う。
「退屈よりは、マシか」
【カイン様】
「ん?」
【明日以降、介入率が上がると予測されます】
「だろうね」
そうしてオレは、普通じゃない学園生活の始まりを、静かに受け入れたのだった。
本日もう1話更新。




