第三十一話 またか……
文脈変だったら教えてください。
「この学園の流儀なら……強者の下につくのが当然でしょ?」
ミレニアはそう言って、真っ直ぐにオレを見る。
ふざけた様子は一切ない。さっきまでのテンションはどこへやらだ。
「……強者、ね」
思わず、息を吐いた。
「それで? 下につくと、何があるんだ?」
ミレニアは少しだけ目を見開いた。
どうやら、即答で受け入れると思っていたらしい。
「単純よ。情報、コネ、人脈。
学園は表向き“実力主義”だけど──実際は派閥社会」
その言葉に、教室の空気がわずかに重くなる。
「上位クラスは主に三つに分かれてる。武闘派、研究派、宗教派。それぞれが教師や貴族と繋がってるわ」
【情報一致率、87%】
……腐敗してんじゃん。
「で、貴方は?」
「私は武闘派寄り。弟子にした二人は、その末端」
なるほど。じゃあ、朝の二人は“捨て駒”に近いのか。
「今回の件でね」
ミレニアは声を落とした。
「武闘派の上層部が、あんたに興味を持った。正確には──“危険な神名持ち”として、ね」
……はい来た。
【上級生派閥からの注視、確定と見て良いでしょう】
(早いなぁ)
「だから私は、先に押さえに来た。敵に回すより、味方にした方がいいって判断でね」
「結果、気絶してるけどな」
「それはノーカンよ」
即答だった。
反省の色は、微塵もない。
「……忠告だけしておく」
ミレニアは、最後にそう言った。
「この学園、“目立った神名持ち”は長生きしない。
実力があっても、単独だと潰される」
「つまり?」
「私を使いなさい。盾にも、伝令にも、囮にもなる」
……囮。
【自己犠牲提案、異常と判断】
(いや、普通に怖い)
でも……、一応、、、。
「考えとく」
そう答えると、ミレニアは満足そうに笑った。
「それでいいわ。じゃあ放課後ね」
その言葉と同時に、昼の鐘が鳴った。
─────────────
昼食中。
サブがこんな話を持ちかけてきた。
【ところで、カイン様】
(んん?)
此処で、サブは人形の状態になって出てきた。
……例の形で。
………………。
…………。
(ちょっとちょっと、ここは不味いって!)
【見られませんのでご安心を!】
……心配だなぁ。
【先ず、結論から申し上げましょう】
……なんか嫌な予感が……。
まぁ、聞いてみよう。
【ラーファ様から着信が来ております】
──ッッ!
あまりの唐突さにビックリしてしまった。
周りの人達にはサブが見えていないので、その冷たい目線が刺さる。ここはもう、諦めよう。
(で、内容は?)
【カイン様とお喋りしたいそうです】
……くだらねぇ〜〜。
でもなー、「私は干渉したくなってしまいます」とか言ってたしな。とはいえ、“着信”と表現しますか。
もしや、サブは現代地球のオレの記憶を知っている?
この疑問に関しては後で問い詰めるとして、、、。
(断ったらダメだよね〜)
【そうですね〜】
ちょっと、サブ君? 目が笑ってないよ?
(ハイ、じゃ、繋いじゃって下さい)
─────────────
【カインー、聞こえますか?】
…………エッ。サブと同じ感じで来るか。
これは想定外だったな。またあちらの世界に連れられるのかとてっきり思ってたよ。
(はい。聞こえますが……)
【何かネタは無いんですか? ミレーユが覚醒したとかそういう系の】
物騒なことを……。
(そんな物無いですよ。逆にそんなことが起きていたら結構ヤバいのでは?)
【あー…ていうか、カイン。君ってそんな口調だったけ?】
話を逸らされた。
今こんな口調なのはなぜかって? 前はもっと軽い感じだっただろう、と。
この間の夜の会話の時の圧に押されたからというのが、オレの用意する解だ。
と、心のなかで思った。
【もしもーし】
(…………あっ、はい)
【で、なんで、そんな口調なの?】
(いやー、こないだの口調がそんな感じだったので……。なんとなく)
【貴方は、私の直系でもあるの。だからいつもの感じでいいのよ?】
(……今、なんていいました? “直系”っていいました?)
もし、本当にそうなのだったら、ある意味オレは神様の分類になるってことだよね、、、。
【いいましたけど?】
(それって、オレも神様みたいな存在ってこと?)
確認は大事、確認は大事、、、。
【言い方次第では、私の部下的扱いですから、そうともいえますね。一時的に地上に送って調査させているという設定ですし】
(あのー、なんてことしてくれるんですか)
そう。そうなのだ。
これはつまり、アクロス教徒にもう狙われているっていうことになる。
だって、ラーファが現世に顕現した時必ず、アクロス教徒がちょっかいを掛ける程には敵対しているから、その直属となれば殺されるに決まっている。
【えっ、なんで? 私の部下だよ? 超人気の職場だけど?】
ああー、聞きたくなかった。
(駄女神認定かぁ……)
【んん? カイン今なんて?(圧)】
間髪無く入るその声に感情は無かった。
どうにも、心の声が漏れてしまった。いや、漏らされてしまった、が正しいか。
オイッ、コラ、サブ、なんてことをするんだ。
と思ったが、何故だろう。怒る気力すらない。
こうしてオレは、神とAIと学園派閥に同時に絡め取られた。
平穏な学園生活?──最初から無理だったらしい。




