第二十七話 授業頓挫、サブの自信
クラス分け後、授業は開始早々、オレが野次馬二人を倒した事で、完全に頓挫してしまった。
教室が、張り詰めた緊張に包まれる。
「ところで、そこに寝転んでいる二人はどうしたのじゃ?」
白髪の混じった髪を纏め、杖で床を軽く叩きながら問う。
「かっ、彼が……何かしらの術で倒しました」
傍らの女子生徒が震える口で答えた。
すると老人教師の視線がこっちを向く。
「ふむ、お主は神名持ちじゃったか」
(いや、待て。“神名持ち”ってだけで、アストレイアと特定できないか?)
もちろん、サブに問う。
【確かにそうですね。ですがそこまで有名では無いでしょう】
(それは助かる)
そんな会話をしながらも、覚悟を決めて答える。
「はい」
そう答えた瞬間、老人教師の空気に変化を感じた。
怒られるものかと思った。
しかし、老人教師の口から出た言葉は違った。
「よいよい。この学園は弱肉強食、実力主義。身の程を弁えない愚者どもは朽ち果てるだけじゃ。そこの馬鹿二人は教室の奥に放置しておけ。」
……理不尽ではあるが、納得は出来る。
この国は、そういった理不尽の上に成り立っている。
だからこそ、不思議と納得が出来た。
その時、教室の空気は一変した。
他のクラスメイトはオレを恐怖や好奇心、そして少しの尊敬が入り混じった視線を向ける。
……オレってこんな扱いになるんだな。
その目線に、ふと苦笑してしまった。
【神名持ちとしての存在感は既に出せています。次は、人格や素質や判断力も見せる必要があります】
そうして、教師は満足気に頷くと、授業再開の合図が出た。
しかし、授業は無かった。
「今日の授業は、中止じゃな。代わりに“学ぶ”とはどういうことかについて考えるとしようか」
なんだかんだいい教師だ。
サブも同意してくれた。
そうして、オレは席に着き、深呼吸をする。
馬鹿野次馬二人のせいで授業は潰れたが、代わりにここがどんな場所かが分かった。
これの先、サブに頼らずとも色々出来るよう、強くなろう。
そう決意して“学ぶ”についてのディスカッションに参加したのだった。
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昼の鐘が鳴ると、授業は終わる。
通常授業も午前で終わるそう。
ただ、ここは異世界。時計などの文明の利器が存在しない。
一応、世界計測系魔法で時間が分かるらしいが、魔法適性ゼロのオレには使えない。
そして恐らく、この世界には転生者が幾ばくかの確率で存在している。その例が、オレやミレーユだ。
しかしながら、その持っている知識や技術を周囲に伝え広めることはしない。
何故か。
簡単だ。
この世界には著作権なる権利の保障制度が無い。
更には、貴族制度のある国では全て王の財産になり得る。
また、その技術を真似た偽造品は、高確率で人の命を奪う、危険物に成りかねない。
ましてや、魔法がある。
例えば、火をつけるのもそうだ。
マッチを使わなくても魔法回路と魔力があれば、誰でも火が起こせるのだ。
その様な理由で、エスカレーターやエレベーター、照明器具も無い。
つまり、オレの元いた世界の製品を作れば生活はより良いものになる。その前に、学園長にこの法律案を提出する。死亡事故は起こしたくないし。
でも、その前にオレの実力を示さねばならない。
そうでもないと、学園長に会う事すら出来ない。
はてさて、どうしたものか。
このような事を考えながら、カインは帰途を辿ったのだった。
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初めての授業──ディスカッションを終えて、寮の自室に戻った。
「おかえりなさい! カイン様!
今日の晩ごはんは、“安心”がテーマです!」
「おう、坊主。何も問題は無かったか?」
護衛二人が出迎えてくれる。
あの喧騒からいつもに帰ってきたんだな、と思ってしまう。
……いや、それでいいんだな。
「ああ、野次馬二人をやっつけてきた」
「……はぁぁぁぁああ!?」
「……はわわ、大丈夫でしたか?」
この後、今日の事の顛末を一から十まで聞かれた。
その説明を終えた後、晩ごはんを食べて、翌日に備える。
ベットに寝転がろうと思ったら、サブがいきなり話し掛けてきた。
【カイン様! 準備は出来ていますか?】
(んん? 何の?)
……話によると、どうやら、護衛と一緒に反省した時から、メンテナンスと新機能の構成をしていたらしい。
……ってかやってた。
【今回のは、自信があります!】
そう意気込むサブは、擬人化して、オレの真正面に立つ。
……。
「よし、サブ。先ずはその青い人形から、普通の人間のような見た目にしようか」
【…………】
二度振り返られた。
サブもどうやら、そこに突っ込まれるとは思っていなかったらしく、仰天していた。
【こんな感じですか?】
今度は、身長を少し縮めて、マトリョーシカ見たいな見た目になった。
……うん。チェンジ。
何度も繰り返して……って面倒なので、オレの伝えた形になってもらった。
どんな形かって?
……オレが地球にいた頃に好きだった人の形。
……恥ずかしいから、この話はおしまい。
そして、気になることを聞いておく。
「ところで、防音とかしなくて大丈夫?」
【抜かりなく】
おぉ、流石。
分かっているねぇ~。
【どうも、この東棟は壁が薄くてプライバシーがないですからね。
監視しやすい構造というよりか、そうなってしまいやすい、が正しいですね】
すると、オレの目の前にお馴染みのディスプレイが出現した。




