第二十六話 初めてのクラス
こうして略式クラス選別試験は終わり、オレは、寮の自室へとトボトボと戻った。
疲労困憊。
魂も、胃も、限界間近。
だが──疲れ果てたオレを労ってくれる者は、誰一人としていなかった。
うちの護衛達は最初はオレを気にしていた。
少し歩いたくらいのところで、寮の料理人が突入してきて三人でどんちゃん騒ぎ。
「胃に優しいスープの改良版が出来ました!炙った魚で出汁を……この方法はどうですか!」
「オレの肉……は?」
「ゴルド君。後でね」
「あああぁぁぁぁああ!!」
相棒である筈のサブはドS発言という銃弾を撃ち付けて来る。
【カイン様、このままだと胃より先に精神が崩壊しますよ?
あと、魂波乱れてますよー】
うん、シカト。
オレは悪くない。
こんな感じで────一体オレの周囲はどうなっているのか。
そんな状況にこれから置かれるのかと思うと、自然と表情は曇り、目の前が溢れる液体で少しずつぼやけていく。
「……少し、静かにしてて」
そうして、オレはベットに沈んだ。
─────────────
翌日。
昨日はぐっすり寝る事が出来たから、朝はスッキリしていた。
鏡の前に立つと頬にかけて涙の痕があった。
洗面所で顔を洗い、リビングに向かう。
そこにはエリアールとゴルドが横に並んでいた。
何でも、昨日オレが疲れていたのに、余計に疲れさせてしまった事を詫びたいとのことだった。
「昨日は、お疲れでしたのにサポートが出来ず、申し訳ありませんでした」
ゴルドも続く。
「俺も、坊主より肉を優先しちまった。すまん」
オレは、朝から神妙な空気を吸いたくはない。
こんな奴等だけど、魂名まで晒して、オレを信用してくれた奴等だから許そうと思った。
「お前等が、反省しているんだったらよし。」
エリアールとゴルドは“パァァ”っと明るくなる。
「じゃぁ、朝ごはんの準備をしますね」
「俺も、坊主を守る為の筋肉を鍛えてくる」
──そうして、ようやく、いつもの朝が訪れた。
カインは、リビングの椅子に腰を下ろし、深く息を吐いた。
(……やっと、落ち着いた)
【カイン様の魂波安定。胃の緊張も緩和傾向です】
(……サブ、お前も少しは空気読めるじゃん)
【たまには!?】
キッチンからは、エリアールが軽やかに鍋を振る音が聞こえる。
香ばしい香草と、優しい出汁の香りが部屋に広がっていく。
「今日は、昨日の反省を活かして“静かに沁みる朝ごはん”をテーマにしてみました」
「……テーマ料理って、なんだよ」
「心のテーマです!」
(……まぁ、うまけりゃいいか)
一方、ゴルドはというと──
「筋肉は裏切らねぇ。だが、坊主はもっと裏切らねぇ」
そう言って、ダンベルを持ち上げながら、なぜか感動していた。
(……何があったんだ)
【カイン様、そろそろ本棟に向かう時間です】
(ああ、そうだった。クラス分けの発表か)
スープを飲み干し、立ち上がる。
「行ってくる」
「いってらっしゃいませ、カイン様」
「坊主、何かあったら合図をな。すぐ駆けつける」
【機能の整理をしておきます!】
そうして、学園本棟に出発したのだった。
─────────────
一学年千名余りが居住しているこの学園は、とんでもなく広い。東京ドーム何個分なんだろう?ってぐらいには。
それ故に、教室一つ一つが、講義室レベルで広い。
ただし、学年上位が位置するクラスは少人数制。
すなわち、教室は豪華だ。
オレの案内された教室は、質素な講義室。
オレは上位に位置していない。
それはつまり、神名持ちだろうが、実力を見るということ。
そして、何より、最底辺クラス。
周囲からの視線が刺さる。
「おいおい、神名持ちさんが、下のクラスかよ」
「仕方ないよな、そんなチビじゃなぁ」
(……チビは余計だろ)
【カイン様、コイツ等殺っちゃって良いですか?
こんなゴミクズがラーファ様の管理する世界存在することが許せません。さぁ、命じてください!】
(……サブ、落ち着け。てか、オレじゃなくて、ラーファなのな)
【私の優先順位はラーファ様が一番でカイン様はその次です】
(サブがラーファを慕っているのはよーく分かった。とりあえず、殺っちゃうのはだめだけど静かにさせるくないなら、いいよ)
【慕って、ではなく尊敬です。ついでに、黙らせておきます】
サブがそう言い放った瞬間、いつもの結界が展開された。
そして、野次馬二人はその場に倒れる。
……ついで、なのな。コイツ等は。
【カイン様、ここで、「オレの実力なめんな」と】
(なんでそんなに厨二なの?)
【……かっこいいから?】
(その間はなんだよ、間は)
【じゃあ、「この学園は、実力主義なんだろ?」と】
(それで行こう!)
「この学園は、実力主義なんだろ? 格下は黙っとけ」
【いいですね、そのままカースト上位に立ちましょう】
(いや、そういうのいいから)
そうこうしていると、教師らしき老人が入ってきた。
教壇の上に立ち、いきなり喋りだす。
「貴様らは、この学園でのある意味、問題児の寄せ集めじゃ。じゃから、成績優秀、態度完璧の者から、Cクラスに栄転することが出来るのじゃ。つまりのう、励むが良い。」
老人の言葉はまだ続く。
「儂は、第三クラスの主任じゃった。老いと共に“扱いやすい場所”へと左遷された。だが、儂は諦めておらん。お前らが這い上がるなら、わしも這い上がる。共に、上へ行こうではないか」
その言葉で、教室の空気が少しだけ変わった。
(……この人、嫌いじゃないかも)
【カイン様、精神が安定しました。好感度上昇です】
(ゲームじゃないんだから)
教師は、最後にこう言った。
「名乗るほどの者ではないが──儂の名は、グラウス = バルド。このクラスの担任じゃ。よろしく頼むぞ、問題児ども」
こうして、これからの日常がスタートを切ったのだった。
稀に見ぬ他の問題児と共に。
この学園の成績順のクラス構成です。
わかりにくかったらすいません。
Sクラス……極稀に編成されるクラス。
各国の要人が在席する。
Aクラス……トップ(25人編成)
Bクラス……2番目 (25人編成)
:
:
Fクラス……ここまでが豪華な教室
Gクラス……講義室(80人編成)
Hクラス……上記に同じ
:
:
Nクラス……アルファベットクラス終了
第1クラス……(35人編成)(別名:αクラス)
第2クラス……上記に同じ (別名:βクラス)
:
:
第7クラス……一番下のクラス(別名:ηクラス)




