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神ラーファのミスから始まるファンタジー  作者: XX
第二章

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第十九話 入学式

ありがうございます。700PV突破です!

 

 ──帝国学園・大講堂。


 重厚な扉が開き、オレは他の新入生と一緒に中へ足を踏み入れた。


 高い天井には壮麗なシャンデリア。

 壁一面には帝国の歴代皇帝と英雄の肖像画。

 床には真紅の絨毯が敷かれ、中央の壇上には巨大な水晶球が鎮座していた。


(……すげぇ。場違い感ハンパないんだけど)


【カイン様、落ち着いてください。心拍数が上昇しています】


(落ち着けるかよ! これ完全に“ラスボス部屋”だぞ!?)


 オレの愚痴をよそに、式は厳かに始まった。


 ─────────────


 壇上の老司教は、白金の法衣を翻し、聖典を高々と掲げた。

 蝋燭の炎がゆらぎ、天井の影が波のように揺れる。


 低く、しかし遠雷のような声が講堂を満たす。


「天にしますはことわりなり。

 理は光を生み、光は名を定め、名は魂を結ぶ。


 されば──魂なきは影に等し。

 名なきは虚に等し。

 記録なきは、永劫のなり。


 嗚呼ああ、ここに集いし若き魂よ、

 忘るるなかれ、忘るるなかれ、忘るるなかれ。


 名を授かりしは喜びにあらず。

 名を戴きしは枷にして責め、理にして審なり。


 裁かれん、汝らは。

 測られん、汝らは。

 書き留められん、汝らは。

 されど──欠けし者は塵となり、

 記されぬ者は闇に沈まん」




 司教は杖を一度、石床に叩きつける。

 乾いた音が、静まり返った講堂に突き刺さる。



「かつて、炎は地を焼き、

 かつて、闇は空を覆い、

 かつて、人は名を持たず、理を知らず。


 獣に敗れ、星を恐れ、己を見失いし。


 されど、大理(たいり) ── 大いなる理は言えり。


 “汝らに名を与えん。

 名こそ秩序、名こそ光、名こそ責務”と。


 名なき者は倒れ、

 名ある者は選ばれ、

 選ばれし者もまた淘汰されん。


 淘汰こそは祝福、敗北こそは供物。

 敗者の屍の上に勝者は立ち、

 勝者もまた次の屍となる。


 輪は廻り、時は巡り、名は連なり、

 理は書を綴り続けん」




 御経は終わる気配を見せない。

 新入生たちは膝を震わせ、互いに顔を見合わせるが、誰も声を上げられない。


 司教はなおも続ける。




「魂名を戴きし者よ、忘るるな。

 それは冠にあらず。

 それは重石なり。


 魔を学びし者は、魔に試されん。

 剣を学びし者は、剣に裁かれん。

 知を積みし者は、知に呑まれん。


 逃れ得ぬは理。

 抗い得ぬは記録。

 覆せぬは選定。


 されば誓え。

 ここに膝を折り、頭を垂れ、声を合わせよ。


 強き者は残れ。

 弱き者は消えよ。

 名を辱める者は滅びよ。

 選ばれし者は、最後まで戦い抜け」




 司教は聖典を閉じ、長い息を吐いた。

 そして両腕を大きく広げ、雷鳴のような声で叫ぶ。




「──天に在す理よ、見届け給え!

 ここに集いし数百の若き魂を!

 汝らの筆にて書き記し、

 残す者と、消ゆる者を、分け隔て給え!」




 長々と続いた御経がようやく終わる。

 講堂の空気は凍り付き、誰もが膝を突き、青ざめていた。


 そして鐘が鳴る。

 ようやく次の儀式──校長の挨拶が始まる。


 ─────────────


 黒衣の老人──学園長は、壇上から大講堂を睥睨した。

 瞳は氷のように冷たく、声は澄んでいながらも無慈悲に響く。


「──新入生諸君。ここに立つこと、それ自体は誉れである。だが勘違いするな。

 この学園は“未来を約束された楽園”ではない。

 むしろ逆。“選別の場”だ」


 彼の言葉は、千余名の胸に杭のように突き刺さった。


「私は数十年、この学園を見守ってきた。

 その間に何百、何千もの若者が門をくぐった。

 だが──最後まで辿り着いた者は一握りに過ぎぬ」


 杖の先が壇を叩き、重々しい音が鳴る。


「三年前、最下位の少年は課題を果たせず、夜明けとともに首を吊った。

 五年前、剣術で劣った貴族子弟は仲間に庇われて恥を晒し、家から追放された。

 十年前、魔力の制御を誤った少女は実験棟を吹き飛ばし、同輩に切り捨てられた。

 彼女は退学後、名も無き奉公人として市場に沈んでいる」


 老人は一拍の沈黙を置き──口元を吊り上げて笑った。


「……面白いと思わぬか?

 これらは全て、己が弱さゆえの結末だ。

 だが、誰もそれを“不幸”とは呼ばぬ。

 “当然”だからだ。

 強き者は生き、弱き者は淘汰される。自然の理に従っただけの話よ」


 その笑みは悪役そのものだった。だが語られる内容は、紛れもなく揺るぎない現実。


「私は忠告する。

 ──この学園で“仲間に縋るな”。

 “情け”を乞うな。

 “甘え”た瞬間、最も残酷に裏切られる。


 己の力のみを信じ、磨き続けよ。

 それができぬ者は、ただ落ちろ。

 去ることもできぬなら──死ぬまで競え」


 言葉が大講堂を貫いた瞬間。


 前列の新入生の肩が震え、奥で息を呑む声が漏れる。

「……うそだろ……」「死ぬまで……?」と小声が走り、顔色を失った者がいくつもいた。


 だが、壇の左右に並ぶ教員や上級生たちは表情一つ動かさない。

 むしろ、その光景を当然のように受け止めている。


 ──大人たちは平然としている。

 揺らいでいるのは、新入生たちだけだった。


 老人はその光景を満足げに眺めると、低く笑いを残して壇を降りた。


 ─────────────


 やがて司会役の教師が名前を読み上げた。


「──新入生代表、アルベルト=フォーラ=レーンハルト」


 壇上に現れたのは、金髪碧眼の少年。

 貴族風の整った制服を着こなし、堂々と歩を進める。


「新入生代表として、我らは誓います。

 この学び舎において、己を磨き、仲間を尊び、帝国の礎たらんことを」


 模範的で立派な答辞だった。

 だが、さきほどの校長の演説で心を折られていた新入生たちには、その声は届いていない。


(……すげぇなあの人。絶対ただ者じゃない)


【要注意人物リストに追加しておきます】


 ─────────────


 ついに、オレの番が来た。


「──特別紹介、新入生。カイン=アストレイア=フォルシオン」


 壇上に上げられ、オレは全校生徒の視線に晒された。


(や、やべぇ……心臓が飛び出そう)


 教師が延々と経歴を読み上げる。


「神名持ちとして誕生──幼少期より観測者の才覚を示し──帝都学園に飛び級入学──」


 次々と誇張混じりの肩書が並べられる。


(いやいやいや、話盛りすぎだろ!)


【公的文書ですので“盛られている”のではなく“美化”されています】


(どっちでも同じだろ!? 恥ずかしいんだよ!)


 視線の嵐に晒され、汗が背中を伝う。

 足は震え、頭はクラクラ。


 ようやく紹介が終わったとき、オレの体力は半分以上削れていた。


 ─────────────


 校長が最後に言い放つ。


「──以上だ。生き残りたければ、己を鍛えろ」


 そう言い残し、黒いローブを翻して去っていった。


 残された新入生たちは、誰もが不安と恐怖に顔を曇らせていた。

 心を折られたように、声を失っている。


(……マジで戦場の始まりって感じだな)


【はい。ここからが本当の“帝国学園編”です】


 オレは深く息をつき、握りしめた拳を見つめた。


 ──観測者としての旅路は、今、始まった。


司教の御経は、二時間くらいだと思って下さい。

本文は、かなり略されています。


─────────────


次回更新予定日、11月1日。


理由:体調不良が続いているから。


申し訳ありません。10月末日まで休ませて頂きます。

でも、今後も執筆を続けていく所存です。

次回更新をお楽しみに!


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