第十五話 護衛兼世話役 決定
青いフィルムをディスプレイに変更しました。
応接間で面談を終えてすぐオレは駆け込んだ。
そう、見慣れた自分の部屋に。
唯一、周囲からの視線が刺さらない、この安息地に。
あぁぁ〜、なんと素晴らしいことか。
とはいえ、あの5人から選ぶのか。
あの“完璧主義人フェリス”は何故あんなに個性豊かな人達を護衛候補に揃えたのだろうか。
単純に経済的な理由なのか、あるいは何か他の思惑があるのか……。
まぁ、考えても始まらないので、一旦置いておくとしよう。
(サブ! 護衛候補をディスプレイに映して)
【了解です!】
部屋の中央に淡い光のパネルが浮かび上がり、5人の候補者が順番に表示される。
【候補者1:剣士上がりの女傭兵】
特性:武力特化、防御優先、思考はシンプル
潜在能力:前線の突撃・防御役として優秀。融通は利きにくい。
【候補者2:にこやかな魔導師】
特性:生活支援・補助特化、性格温厚
潜在能力:後衛の支えとして有用。戦闘能力は中程度。
【候補者3:巨体の斧戦士】
特性:力任せ、熱血、単純
潜在能力:攻守ともに安定。命令次第では制御困難の恐れあり。
【候補者4:影の薄い青年(潜入者)】
特性:隠密行動、観察力高い、感情薄い
潜在能力:奇襲・偵察に特化。誤解されやすい危険も。
【候補者5:無表情の修道女】
特性:治癒祈祷、冷静
潜在能力:味方の支援・回復に最適。ただし範囲魔法誤発動に注意。
(なるほど……って、サブ、何か青い人形の何かがいるんだけど)
【あっ、それ私です!】
淡い光の中で、青白い人型に近い輪郭がふわりと浮かび上がっていた。
サブは青白いシルエットとして、カインにだけ見える姿をとっていた。
サロ◯パスのCMみたいなやつだ。
【ご安心ください。これは“可視化モード”です。魂名を持つ者にカイン様が触れると、その相手にも可視化出来るようになります。つまり、今はカイン様にしか見えません。】
「おぉ……。やっと声だけじゃなく顔も見えるようになったのか」
【顔……? ふむ、これは顔と呼べる構造でしょうか?】
「うるさい」
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カインは光のディスプレイを見つめ、長く息を吐いた。
(前衛と支援……この二つは必須だ)
「決めた。──斧戦士と魔導師。この二人だ」
あっさり決めることが出来た。
【前衛と後衛&生活支援、鉄板の組み合わせですね】
「残り三人も捨てがたいが、俺の立場じゃ多人数を抱える余裕はない。少数精鋭で行く」
【合理的かつ冷徹な選択……フェリスなら喜ぶでしょう】
「うるさい。俺だって悩んだんだよ。
フェリスは「片方は武力に秀でた者、もう片方は生活支援に優れた者を選ぶ」と言ってたから、もとより魔導師は決定してたんだ。しかも、あのフェリスを圧倒していたしな。
あと、扱いやすそうな斧戦士。これしかないだろ。」
椅子にもたれたオレは、残光の中で二人の名前が浮かぶのを見届けた。
──護衛は決まった。
しかし、あのサロ◯パス人間(仮)と一緒にいると、胃に穴が空く未来しか見えないのは………気のせいだろうか。