表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/21

第十二話 入学準備 1 「フェリス」

 

「……で、話って何?」


 俺オレの部屋、カーペットの上に座ったフェリスは、カインを一瞥し、手に持っていた羊皮紙を指で叩いた。


「お前は、自分で───己の意思で“行く”と言った。間違いないな。」


「……言ったよ。」


「それでは、改めて聞こう。お前は何故、何の為に、学園に行きたい?」


 正面からの問いだった。

 曖昧な逃げ道も、用意してくれはしなかった。


(サブ、フォロー頼む。)


【“自分の言葉”で言わないと、信用されませんよ?】


(鬼かっ!!)


【いえいえ、フェリスに比べれば……】


(まぁいいや、ちょっと、黙ってて。)



 カインは、一呼吸置いてから正々堂々返す。


「兄さんは今、母上の手伝いで商会を動かすことが出来てるよね。オレもそんなふうになりたいんだ」


「ふむ……」


 フェリスは少しだけ目を細めた。


「それだけでは足りんな。」


「えっ?」


「帝国学園は、国の上層部の箱庭だ。そんな危険地帯に神名持ちのお前がそんな理由で行くと、間違いなくオモチャにされる。

 もっと正当な理由を出せ。いいか、これはお前の為であり、家の益にも影響することだ。

 何よりも、普通は学力試験を八歳と九歳でそれぞれ受けた上で、面接。それでやっと入学出来る。つまり、周りは全員十歳だ。

 お前の今の考え方では、私が迷惑を被る。学園は、ただの学び舎ではない」


 フェリスは自分のこれまでを語ってきたかのようだった。


(サブ、帝国学園の風景とか景色とかってフェリスから読み取れる?)


【読み取り開始。本日の夜、就寝時にお知らせします。】


 これで、一安心。


【ただし、夢にうなされる覚悟はしておいて下さい。】


(おい待て、どんな場所なんだよ?!!)



「……まぁいい。理由は追々固めろ。母上には私からも話しておく。」


 フェリスは羊皮紙を畳み、立ち上がる。

 その背中は、兄というよりも家の代表者のそれだった。


「お前が学園で何を得るかは、家の未来にも関わる。遊び半分で足を踏み入れるな。」


 そう言い残し、扉を開けて去っていく。

 廊下の足音が遠ざかるにつれ、部屋の空気が軽くなる。


(なんとか終わった……か?)


【いえ、これからが本番になります。】


(何が……?)


【学園入学の準備です。書類、推薦状、入学直後のクラス分け試験……あっ、あと新しい衣服も】


(服?)


【はい。帝国学園は制服のようなものがありません。つまり、第一印象は“服装”で決まります。フェリスよりかっこよくするチャンスです。】


(…余計な火種を持ち込むな!!)


【冗談です。フェリスの黒歴史を避けるためにも慎重に選びましょう】


(黒歴史……??)


【おっ、ログを確認しますか?】


(いやヤメロ。絶対にろくなことじゃないだろ!)


 そんなやり取りをしているうちに、胸の奥の緊張が少しずつ解けていった。

 だが、帝国学園への道は、思った以上に険しいらしい。

 そしてその険しさを、このあとの夢で知ることになるとは、この時はまだ知らなかった。



次回へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ