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第5話

第三王子のエルネストくんとすっかり仲良くなったころ、戦況が明るくなったと聞こえてきた。


フォンターナ大臣からの情報が敵に届かなくなったことで、作戦が成功するようになったみたい。相手も情報だよりだったから、まともに当たればこっちの方が強いんだそうだ。


今日は王様に呼ばれて、お城の奥の牢屋の前に来ている。攻めてきた敵の将軍を捕まえたので、鑑定して情報を引き出して欲しいんだって。問題は、どうやって粘膜接触するか。敵の将軍の手にキスなんかしたら、仲間だと思われるかもしれないじゃない!


敵の将軍は、牢の中であっちを向いて寝ている。両腕はしっかりと後ろ手に鎖でつながれ、破れたシャツの下にあちこちアザが見える。


寝てるんだったら、様子を見るふりをしてどこかにくちびるを当てようと決めた。看守さんに頷いてカギを開けてもらう。


牢に入り、傷だらけの背中を撫でる。自分の背中を盾にして、今のうちにくちびるを当てようとした瞬間、将軍がガバッと身を起こした。素早くわたしの後ろに回り込むと、足でわたしを抱え込む。


「うおぉ!」

わたしは驚いて、およそ乙女らしくない、野太い声をあげてしまった。


「これはよいみやげをありがとう。この女の動脈を食いちぎられたくなければ、鎖を解いて牢から出すんだ」


そう言って、首すじに犬歯を突きつけられる。その瞬間、彼の情報が流れ込んでくる。


「あなたは、戦を終わらせるための犠牲になりにきたのですね、リナルディ将軍。軍にはもう戦う力が残っていないのに、仕掛けた戦争の賠償金を恐れて、偉い人たちは戦争を止めると言い出せない。そうでしょ?」


将軍はしばらく黙っていたけれど、ふっと抱え込まれていた足の拘束が緩んだ。


「こんな小娘にまで、我々の内情は筒抜けなのか。まいった、降参だ。そのとおり、大部分のものはこの戦争が間違っていると考えているし、勝てないとも分かっている。分かっていないのは、ほんのひと握りの上層部の人間だけだ」


わたしは立ち上がって王様を見る。

「王様、すべて見えました。わたしはリナルディ将軍を応援します。人質にされた家族のために、仕方なく戦いに来たけれど、この人はずっと戦争に反対してたんです。将軍になら、ついてくる人がたくさんいるわ」


「リナルディ将軍よ。そなたも辛い立場だったのだな。猛将の名は、ワシの耳にも届いておる。他ならぬあかねの提案じゃ。そなたが立つと言うならば、援助の手は惜しまぬぞ」


「あの、ご家族はわたしが助けに行きます。そうじゃないと将軍も心配でしょ?」


その時、エルネスト王子が石段を駆け下りてやってきた。エルきゅん、そんなに慌ててどうしたの?普段あまり見ない王子の慌てた様子に、心のシャッターを切りまくった。


「父上、いえ、ニッコロ王よ、あかねさんを1人で敵国へ送り込むわけにはまいりません。僕も行きます!」


まあ、エルきゅんたら、お姉さんのこと心配してくれてるの?嬉しくて思わずよだれが出そうになる。


「幸い、ご家族は国境のご自宅近くに幽閉されているので、別働隊を出せばすぐに助けられるでしょう。本隊の将軍は、まっすぐ本国の議事堂を制圧してください。将軍、できますね?」


将軍は頷くと、顔をくしゃくしゃにして、ありがとう、ありがとうと何度も言った。


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