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第4話

お城の迎賓館で一晩過ごした翌日、朝ごはんを食べ終わるとまたお城に呼ばれた。

エミーリアにステキなドレスを着付けてもらって、謁見の間に連れていかれる。エミーリアの真似をして礼をすると、宰相さんから楽にするよう言われた。


「昨日の鑑定、見事であった。外務大臣の内通の証拠が鑑定のとおり見つかった。あかねよ、他に逆心のあるもの、謀反を考えているものなど鑑定することはできるか?」


「わかりました。ムムム、えーい!あの、ミネリ伯爵とランディーニ子爵が財産を処分して亡命しようとしています。あとは、えーっと…」


新たな背信が明らかになり、謁見室がざわつく。


「どうしたんだい?言いにくいことでもあるのかな?」


もじもじする私を見かねてラウロ宰相さんが優しく聞いてくれるけど、他の人がいる前で言っていいのかしら…


「あの、これは王様にだけ直接お伝えしたいんですけど、それでもいいですか?」


宰相さんが王様を見ると、ニッコロ王は重々しく頷いてみせた。


わたしは小走りで王様に近づくと、耳元で


「あの…怒らないで聞いてくださいね、第二王子のルドヴィーゴさんは、ニッコロ王様の本当の子供じゃないんです。前の戦争で王都から避難していた先で、ニッコロ王の弟さんのジャンパオロさんに無理やり…お(きさき)さまのミカエラさんは王様に言いたかったんだけど、ジャンパオロさんに脅されて言えなかったの。あの、ミカエラさんはあなたの名誉のために黙って傷ついてるから、ひどくしないであげてほしいの」


ニッコロ王は、カッと目を開いてわたしの肩を掴んだ。


「よく教えてくれた!ミカエラも私の名誉など気にせずに言ってくれれば…いや、それは私の我がままだな。とにかくありがとう。あかねよ、我が国と我が家族を救ってくれたこと、感謝の言葉だけでは表しきれない。今日はひとまずこれまでとするが、いつでも私を訪ねてくれ。皆、あらためて彼女は私の賓客だ。あかねへの礼を欠くことのないよう!」


こうしてわたしは、お城の中で自由に過ごせるように取りはかってもらえた。主に図書館で歴史を調べたり、厨房で日本風の料理を作ってみたり、メイドさんにまぎれて好きな衣装を縫って遊んだりした。時々は王様に頼まれて鑑定もしたよ。でも一番好きなのは、中庭のお散歩だ。


今日もお昼の2時、中庭をそっとのぞいてみる。うん、エルネストくんがガゼボでお茶を飲んでいる。わたしはエルネストくんに気づかないふりをして、散歩をはじめる。


「あっ!あかねさん、今日もお散歩ですね。よろしかったらご一緒にお茶をしませんか?」


わたしの下心を知ってか知らずか、エルネストくんがいつものようにお茶に誘ってくれる。


「あっ、こんにちは。ありがとう!うん、ちょうど喉が渇いたと思っていたの。お隣に失礼しますね」


しらじらしい返事に、エミーリアからは白い目で見られているけれど、そんなことよりわたしは心の癒しを楽しまなくっちゃ!


「次兄が急に外国へ留学が決まってしまって、相手をしてくれる人が減ってしまったんです。長兄に対しては、ライバル心からいじわるだったけど、僕には優しくていい兄だったのに」


そうなんだ。きっと王様が、ルドヴィーゴ王子を見てミカエラさんが気に病まないように手配してあげたのかな。アイツ、腹黒王子だったから、わたしにとってはいなくなってよかった。


「それなら、これからはわたしがいつだって代わりにお話相手になるよ。今度わたしが焼いたクッキーをお茶菓子に持ってくるね」


「わあ、嬉しいな。あかねさんの手作りクッキー、楽しみです」


「そうだ、いつもお茶に誘ってくれるお礼を渡そうと思ってたの。これ、どうぞ」


わたしはポケットから、エミーリアと一緒に刺した刺繍のハンカチを取り出す。小花にハチドリをあしらった、細かい柄がかわいい自信作なのだ。


「ありがとう!大事にします」


エルネストくんがそっとハチドリの柄を撫でて、大事そうにポケットにしまった。


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