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第2話

涙を必死で堪えるわたしの横に立ったのは、金髪の緩やかなウェーブが映える美男だ。


「あかねと言ったね。大丈夫、怖がらなくていいんだよ」


そう言いながら、優しく微笑んで人差し指で涙をそっと拭ってくれた。その瞬間、頭の中に一気に情報が流れ込んでくる。彼はルドヴィーゴ第二王子。王太子ジルベルトを追い落とそうと、あれこれ良からぬ策を練っている。今の本音は


「ちっ。冴えねえ女だな。まあ召喚者のスキルは有望だから、一応手なづけておくか。一度抱いてやれば、俺の美貌に夢中になるだろう。たまにはこんな田舎くさい娘も気分転換にいいか」


おええ。なんだこのナルシスト!お前となんか、そんなことするわけないだろ!ペッペッペッ!でも、スキルの使い方は分かった。その…()()()()じゃなくて良かったんだ。


「バカね。あなたにそんなことさせるわけがないでしょう。()()()()()()は見てて飽きないわね。ふふふ」


管理者さんの、そんな笑い声が聞こえた気がした。


思い出したら恥ずかしくて、思わず赤くなってしまったわたしを見て、ルドヴィーゴ王子は落ちたと思ったようだ。ほくそ笑んで、肩に手を回そうとする。わたしは肩に伸びる腕の気配を感じて、逃げるように一歩進み出る。よし、もうやるしかない!


「あの、まずは皆さまにごあいさつさせてください。わたしの世界での方法ですみませんが、皆さんお手を失礼します」


そう言って、わたしは一人ひとり手の甲にキスを落としていく。はあ、これ本当なら女性がキスをされる立場なのに。


次々に頭に流れ込む情報に翻弄されながら、頭の中を整理していく。派閥や足の引っ張り合い。他の国と戦争の最中だっていうのに、一つになれない大人たち。そんなだから勝てないんだよ!と頭の中で毒づく。


ちょっと奥まった壇上の皆さんにもご挨拶。あ、この人たちは王族なのね。王様はニッコロさん、お妃はミカエラさん、その隣の熊みたいな青年がジルベルト王太子ね。で、隣の男の子…


か、かわいい!


お妃様譲りの栗色のサラサラヘアに、長いまつ毛と賢そうなエメラルド色の瞳が印象的。手の甲にそっとキスを落とすと…エルネスト第三王子ね。情報と思考が流れ込んでくる。


(わわ、召喚者のお姉さんにキスされちゃった。黒い瞳と黒い髪ってなんだか神秘的できれいだな。このあとフォンターナ大臣にもキスするんだろうか。嫌だけど、あいさつって言ってるから仕方ないか…)


まあわたしのこと心配してくれてるの?もうこの子連れて帰ってもいいですか?いいよね?わたしの中の新しい(性癖)が開かれる音が聞こえた気がする。


王族エリアのあいさつを終えて、残りのグループも回って手を取り、キスを落としていく。正直、知らないおじさんの手を取ってキスするなんて嫌で仕方がないけど、始めてしまったものは仕方がない。しっとりというかびっちょりとした手を取ると、毛むくじゃらの手の甲に尻込みする。


目をギュッと瞑って、息を止めて口びるを掠める。お前がフォンターナか!


その場にいる全員の手にキスして回ったわたしは、二の腕でグイッと唇を拭った。保湿のリップしか塗ってなかったくちびるは、みんなの手の甲に油分を取られてもうカサカサだ。


興味深げにわたしの()()()()を見守っていたニッコロ王が口を開く。


「それで、あかねと申したな。鑑定のスキルは見せてもらえそうだろうか?」


これって、直接お返事していいんだっけ?下を向いて迷っていると、宰相のラウロさんが


「直答を許す」


と言ってくれたので、わたしは一礼をして鑑定の演技をはじめる。


「はい、それでは。ムムム、えーい!ニッコロ王様、何からお伝えいたしましょうか」


「おお、確かに王の名を言い当てたぞ!」


一同がどよめく。

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