始まり
名門校。それは学力、スポーツ、芸術、音楽などの実績で
秀でていると世間から認知され、ある分野において卓越した才能を持つものが入ることを許される由緒ある教育機関である。
この国にも将来が約束された才ある者のみが通う高等学校が2つ
存在した。世間からは、「東の青銅、西の翔星」と呼ばれ、ここに入学するために多くの者が他の人との入学争いを勝ち抜き、地獄の苦しみを味わい、才能を開花させていく。
だが、しかし!!この2校は建校当時から仲が悪く、度々争っていたのであった。そしてこの2つの高校には暗黙のルールが存在する。それはお互いの学校の間での恋愛禁止というもの。これはとある青年が高校3年間で体験する甘酸っぱくも儚い青春の物語である!!!
--朝
俺、青木アヤトは目覚ましのアラームで目が覚めた。いつもは
アラームなんて掛けずに昼までゆっくり寝ている自堕落な生活を送っていたのに今日は高校の入学式ということもあって珍しく朝に起床した。起きたと同時に扉が開き、
「お兄ちゃん!早く起きないと遅刻しちゃうよ!!」と
俺の妹であるスズカが部屋に入ってきた。
「もう起きてるよ。あと部屋にはノックしてから入ってこい」
「おはよー!お兄ちゃん!」と俺の言葉にはガン無視して俺に飛びつくスズカ。スズカは俺の2つ下の妹で天真爛漫でいつも元気いっぱい。容姿もいいので学校では結構モテていて、告白も何回かされているらしい。
「今日から高校生だね!お兄ちゃん、高校生になって更にカッコよくなって見えるよ!」
そう、この妹は少しブラコンなのである。それもあってか一度も彼氏ができていない。正直、兄離れして彼氏の1人や2人作って欲しいものだ。
「なぁスズカ。俺も今日から高校生なんだし一人でこれから起きる。だから明日から起こしにこなくていいぞ。」
俺はスズカに対して少し冷たい対応をするが、別に妹のことが嫌いというわけではない。時折面倒くさいと感じることもあるが、基本的に優しく誰に対しても笑顔を絶やさない妹には尊敬している。
「お兄ちゃんを起こすのは妹の役目だもん。この仕事は誰にも譲らないよ。」という感じで返してくる。ここで何度言ってもスズカは自分で言ったこと変えない。俺はこれ以上言うのは無駄だと判断し、朝食を摂るために起き上がり、リビングに向かう。
朝食を摂って、新しい高校の制服に袖を通し、準備を終えて出発しようとしていた。
「お兄ちゃん!いってらっしゃい!!」
と元気に手を振っているスズカ。
「行ってくる」と短く応える俺。家から高校までは自転車で行ける距離だが、入学式ということもあって今日は自転車での通学が禁止されており、電車に乗っていくために駅に向かう。
駅に向かうまでの道には桜が沢山咲いていて、道路は桜の花びらに覆われている。久しぶりに見たこともあってか桜の花に魅了されていると、桜の木の下に黒髪ロングの女の子がいることに気がついた。年齢は俺と同じくらいで、違う高校の制服を着ている。
彼女を見た瞬間俺は不覚にも綺麗だなと思ってしまった。
桜の花びらと一緒に舞う彼女の姿に一目惚れし、彼女から目が離せなくなってしまった。
「ねぇ君。今私のこと見てたよね?」と急に話しかけられ図星だったため何も返せない俺に彼女は
「君、もしかして青銅高校の人じゃないよね?」と突然、俺がこれから通う学校の名前を出してきて驚いた。
「これから青銅に通う一年だが?」
「そっか。じゃあここまでだね」と言って彼女はそれ以上何も言わずに去っていった。
ん?どういうことだ?(心の声
彼女が言ったことがよく分からず、彼女について知っていることが星の中に翔という文字が書かれた校章の制服を着ていることのみだった。また彼女に会いたい。そう願って駅へと足を進める。
だが、俺は気づいていなかった。彼女が翔星学園の生徒であることに。