めぐる季節のその果てに
それからまた季節はめぐり、成長したユミナはコンクールで賞を取る。
賞状を持ってプーカロウに会いに行くユミナ。
いつものように霧が立ち込める。
「あれ?」
普段ならこの後プーカロウが来る。そう思っていたユミナは驚きの声を上げた。
視界が白く覆われてもユミナは一人立っているだけだった。
「プーカロウ、どうしたんだろう。風邪でも引いたのかな?」
ひょっこり現れてびっくりさせるつもりだろうかと、ユミナは周囲を警戒する。
「どうしたの、ユミナちゃん」
代わりに聞こえてくるのは、母の声。
「あ、うん。プーカロウがね……」
霧が晴れた後、ユミナは母に理由を話す。
母は話を聞いてほんの少しだけ顔を曇らせた。
「そっか。なら今日はお母さんたちと一緒にいようか」
その理由をユミナが聞こうとする前に、母は提案してきた。
「うん、そうする」
母の誘いを受け、ユミナはハイキングコースを歩き、池の上でボートに乗る。
「ここっていろいろ遊べるんだね」
「そうよ、あっちにはアスレチックコースもあるのよ」
母の指さす先には、入り口がありその奥には地図と遊具が見えた。
「今度行ってみるね」
母と歩いていた時も、ボートに乗っているときもたまに霧は立ち込めた。
けれども、立ち込めるだけで、ユミナはわだかまりを抱いた。
家に帰ると、ユミナは日記を開く。
「えーと、どれだったかな」
机の本棚に並べられた絵日記を、ユミナは手当たり次第に探る。
昨日、先月、去年、一昨年、ユミナはページと共に記憶の扉も開き、遡る。
過去に戻るにつれ色鉛筆がクレヨンになり、絵日記の隅には落書きも増える。
「あった!」
ユミナは最初に書いた日記を見る。
懐かしい絵と母の文字があり、ユミナは文を読んでいく。
『ここに来れるのは、子どものころだけ』
ユミナは日記帳を持ってバタバタと階段を下りる。
「あら、どうしたの」
母は父とリビングでくつろいでいた。
「お母さん、これって」
「お茶、淹れてくるよ」
ユミナの様子を見て、父はダイニングに向かう。
「私も昔、あそこで妖精さんに会ったわ」
「お母さんもプーカロウに会ったの?」
「私が出会ったのはクーシールっていう犬に似た妖精さんよ」
母と会話していると、父がお茶を淹れて帰ってきた。
「僕もルサルルカって水の妖精さんに会ったよ」
父はお茶のコップを母とユミナに渡す。
父も母も懐かしそうに出会った妖精のことをユミナに話しだした。
「お父さんお母さん、私、一人でプーカロウに会いに行ってくる」
父と母の話を聞いて、ユミナは決心した眼差しで二人を見つめる。
「明日、明るくなってからにしようね」
「気をつけていくのよ」