おちつけるのは野暮ですね
「夢か……懐かしい夢、見ちゃったな」
ユミナはベッドから起きてつぶやいた。
(プーカロウ、今どうしてるのかな)
「おはよう。ユミナさん」
「おはよう。ヤスタカさん」
ユミナは着替え、階段を下りて、キッチンにいた、ヤスタカに挨拶を交わす。
「ピクニック用のお弁当、サンドイッチは作ったよ。あとなに作る?」
ヤスタカは動物のイラストが描かれた弁当箱にサンドイッチを詰めていく。
「そうねえ、あとはサラダとウサギさんのリンゴと……」
エプロンをしながらヤスタカと会話するユミナ。
「おとーさんおかーさん、準備できたよ」
「おはよう、カスミさん。もうちょっと待っててね。すぐお弁当できるから」
ユミナはキッチンに顔をのぞかせたカスミに挨拶して、頭をなでる。
「行きは私が運転するね」
「よろしく、ユミナさん」
ヤスタカの返事を受け、ユミナはカバンからキーを取り出す。
後部座席で駄々をこねるカスミをなだめ、ヤスタカはチャイルドシートをつける。
そのあと、ランチボックスとピクニックシートをもって助手席に座るヤスタカ。
「準備できたよ」
「それじゃあピクニックに出発」
ユミナは車のエンジンをかけ、家を出発する。
「わーい」
目的地に到着すると、車から降りたカスミは一目散に駆け出し、転ぶ。
転んで土まみれになったカスミを抱き上げ、あやすヤスタカ。
ユミナはランチボックスと水筒、ピクニックシートを持って車を降りる。
泣き止んでヤスタカから下ろされたカスミに、ユミナは声をかけた。
「どこから行こうか?」
ユミナはカスミに決定権を委ねる。かつて親にしてもらったように。
「えーとね、えーとね。ハイキングコース」
ユミナとヤスタカとカスミは三人で歩き出す。
ハイキングコースにたどり着くころ、霧が発生する。
「なあにこれ?」
びっくりした顔のカスミに、ユミナは説明する。
(あれから霧が出ても、それっきりか。やっぱ忙しいのかな)
教え終えたユミナは心の中でつぶやく。
(家族の時間も友達の時間も大切にしたよ。大人になったよ。子ども連れてきたよ)
伝えたいことを話せるように、霧を見るたびに考える癖がユミナはついていた。
(逢いたいな、プーカロウ)
ユミナが遠い目をしていると、カスミの姿が消えていた。
「あれ?いつの間に」
急に消えた我が子が心配になるユミナ。
父も母もこんな思いをしていたのだろうか。
(妖精の世界に行ってるとしても、大丈夫かなって思っちゃうよこれ)
ヤスタカも同じ気持ちなのか、ユミナは手分けしてカスミを捜す。
「おとーさんおかーさん。あのね妖精さんに会ったよ」
霧が晴れだしたころ、カスミの声がどこからか聞こえる。
「フュルギャって子でね。今そばにいるけど、見える?」




