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研究員VSカリバニストVS宇宙人  作者: 山田太郎
9/27

研究員3

私が目覚めて少しすると改札からの事情聴取があった。

とは言っても事情聴取といった形で、あの場で何が起こったかの確認の様であった。

和達しは何も隠さずに合ったことをありのままに語った。

包み隠さず話したつもりであったが警察も突拍子が無い話にあまり信用していないようだった。

俄かには信じる事のできない話である。

私でも同じような反応をするだろう。

警察が帰った後一人の来客があった。

痩身の男性で、耳が隠れる髪型、浅黒い肌で猛禽類のような鋭い目に鳥肌が立った。

彼は黒いスーツの胸から手帳を取り出した物を私に見せた。

「初めまして唐澤さん。私は警察庁から伺った安田と申します。」

彼に見せられた手帳は警察手帳だった。

先程帰った警察とはまた別なのだろうか?

不思議に思っていると安田が説明を始めた。

「あぁ、先程伺ったのは県警の生活科の刑事です。私は警察庁検事局の組織犯罪対策課に所属しています。そうですね、マル暴と言った方が分かりやすいでしょうか?」

安田はにこやかな笑顔で対応してくれた。

日々凶悪な犯罪と関わっているであろう安田はの笑顔は、底知れない冷たさに包まれたような笑みであった。

警察庁検事局と言っただろうか、県警より上の組織だ。

組織犯罪化と言うと外国人犯罪や暴力団などの犯罪組織の取り締まりを行う部署である。

生れてこの方犯罪と無縁だった自分にはかかわりが無いと思っていた。

町のおまわりさん意外とあったのも初めてである。

「私共も二三お伺いしたい事がありまして伺った次第です。」

「私には心当たりが無いのですが、組織犯罪対策課の刑事さんが私に何の用でしょうか?」

これは本当の事である。

今回の実験には何のかかあ割りも無いように思える。

彼は表情を変えずに話をつづけた。

「まず伺いたいのは亀山教授についてですが、最近不審な点はありませんでしたか?」

「いえ、特に変わった事はありませんでしたが。」

亀山教授は私の研究室のトップを務める教授だ。

80歳という高齢にもかかわらず趣味はフィールドワークで、長期休暇の度に海外でフィールドワークを楽しむ健脚だ。

特に欧州史が特に気に入っており、私もヨーロッパの土産をよく貰っていた。

快活な性格で人当たりも良く、専門以外にも様々な分野の人間と親交を持っていた。

変わった事と言われても、最近も変わらずに研究に邁進していたように感じる。

「そうですか、研究室単位で変わった事でも良いのですが・・・何か小さな変化でも構いません。」

事故の前に研究室で変わったことなどあっただろうか?

記憶を呼び起こすと一つだけ違和感を思い出す事が出来た。

「そういえば教授が欧州土産で鎗を買ってましたね。」

教授は事故の一月前にもヨーロッパにフィールドワークに行っていた。

その時の土産が模造の槍を買ってきて驚いたものだ。

2m程度の物で、地元の祭りで使われる槍の模造品だと言っていた。

現地の土産屋で購入したと言っていたがよく税関が通したなと感心したものである。

「何処で買ったかはわかりませんが、2mくらいの大きなものです。」

「鎗ですか、こちらでも調べてみましょう。」

安田はそう言うと髪の左側をかき上げた。

そこには有る筈の耳が無かった。

私はヒッと声を漏らしてしまった。

「あぁ、これですか。この様な仕事をしているともめ事に巻き込まれることが多くて。驚かせてしまったなら申し訳ありません。」

愛おしそうに傷をなでる安田が非常に恐ろしく見えた。

感情の露出に気が付いた彼は真剣な面持ちに切り替わり話をつづける。

「それと貴方を助けた人物について話を伺いに来ました。」

そう言うと安田は一枚の写真を見せてくれた。

そこに映って居たのは喫煙所で田上先輩と話をする姿をよく見る青年だった。

たしか、田上先輩は浅上と言っていただろうか。

先輩と食事に行くと良く名前が出てくる。

「先輩の友人ですね。確か名前は浅上君でしたっけ。」

私がそう答えると、安田の口角が吊り上がった。

特に浅上という名前に少し反応したように感じたが、悪魔のような笑みである。

「彼の捜査をしているんですよ。彼の事で他に知っている事はありませんか、どんな些細なことで構いません。」

不気味な表情のまま安田は質問を続ける。

「いえ、先輩の友人である以上の事は知りません。」

「そうですか、残念です。」

「その、浅上君が何か関わっているのでしょうか?」

成果を得る事が出来ずに残念そうな表情の安田に尋ねると、予想外の答えが返ってきた。

「貴方も当事者ですし、知る権利はあるでしょう。唐澤さんは『息子たち』と呼ばれる宗教団体をご存じですか?」

初めて聞く名前だ。

どんな団体か名前からも一切想像が出来ない。

「いえ、初めて聞きました。」

そう答えると、安田は話をつづけた。

「『息子たち』は悪行を功徳とする秘密結社です。信者は世界中に100人程度と言われています。その信徒の一人が浅上組会長、浅上貞夫です。」

「それが浅上君とどうかかわるんですか?」

「浅上祐樹は浅上貞夫の義理の息子に当たりますね、私はその件を追って居まして今回名前が挙がったので調べに来たんですよ。」

宗教団体の皮をかぶった反社会勢力はよく聞く話だが、暴力団の皮をかぶった宗教団体があるとは予想外である。

「貞夫は狂信者ともいえる熱烈な信徒です。彼はあなた方の実験で崇拝する『何か』を呼び出したのです。それは頂上の力を持つ『何か』であなた方はその力の片りんに触れたのです。」

こいつは何を言っているのだろう。

それが私の感想だった。

安田は刑事であったはずだが、頭に悪い病気でもあるのだろうか。

とはいえ浅上組が暴力団なのはまだわかる。

浅上貞夫が宗教団体の幹部だというのも理解できた。

しかし、神を呼んだのが理解できない、安田は真剣に話しているように見える。

嘘をついているようには見えない澄んだ目だ。

「貴方が理解でき無いのはわかります。しかし、貴方も自分の身が人と異なる事に気が付いているでしょう。」

心当たりは大いにあった。

文字通り異常と言っていい回復力である。

どう考えてもおかしいが、信じる事が出来なくて無視していた。

「貴方の回復は呼び出された『何か』が呼ばれた時に関わった別の『何か』の力です。極論全身がバラバラになっても治りますが、怪我をする度に人としての理性をなくし、獣に近づきます。」

彼はなぜこんな事を知っているのだろうか、一般人とは異なる情報網を持っているにしても異常な話である。

私も世界的に認められた研究を行う学徒の端くれである。

人よりも多くの文献に目を通し、様々な知識を得てきた自負がある。

しかし、畑違いとはいえここまで狂気的な知識だ、一度でも聞いた事が無いとは思えなかった。。

「貴方は何故そんなことを知っているのですか?」

私は安田に尋ねた。

彼は答えた。

「刑事で有る事も大きいですが、私も別の神に仕えるものですから。」

より深く聞く事は控えた。

今までの話でも理解できたが、関わってはいけない世界に片足を踏み込んでいる。

更に踏み出すのならば私は二度と戻れなくなるだろう。

そこまで話すと、

「おっとこんな時間だ、話過ぎましたね。病み上がりに申し訳ありません。本日はありがとうございました。何か思い出したことがあったら連絡をください。」

そう言って名詞を渡すと安田は部屋から出て行った。

今日一日で多くの事が起こり過ぎた。

体はもう大丈夫だ、頭がおかしくなる前に明日の朝一で退院しよう。

頑張って週末までには次回投稿をします。

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