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研究員VSカリバニストVS宇宙人  作者: 山田太郎
2/27

研究員1

結果を見た両親は「頑張ったら大抵の事はどうにかなるんだよ」と言った。

その通りだと思い、高校時代はわき目も降らずに勉強をした。

親の言いつけに従って勉強を続けた結果良い大学に入る事が出来た。

努力は裏切らないと身をもって感じる事が出来た。

大学への入学後も努力を怠らなかった結果、私の学内評価は驚くほど良くなった。

大学での生活を続けていると目的とする研究も見つかった。

「この研究を行いたい」そう思える研究だった。

所属を目指し努力を続けると2年目から研究室に所属する事が出来た。

スカウトしてくれた教授曰く「研究室に入る為に努力をして、結果を残しているなら拒絶する理由が無い。」との事だ。

やはり努力すれば結果はついてくる。

勉強に関しては「全力を出して学んでいる時間=成果」が成り立つ。

多くの事は一定量の努力が目を出したらやっとスタート地点に立つ事が出来る。

しかし、勉強に関しては少しの努力が結果として帰ってくる。

これほどコストパフォーマンスが良い努力も無いだろう。

私も努力の結果として研究室に所属する事が出来た。

何より、これまで親に言われるがままの努力しか行わず、人間関係の結び方すら知らなかった私であるが、そんな私を人間として扱い、快く迎え入れてくれた研究室の方々には感謝している。

教育とは人格の完成を目的としているが、私は彼らの関わりやっと人格の形成をする事が出来たと感じている。

つまり、一個人としての独立した思考が出来るようになったのだ。

大学という最高学府まで進学した甲斐と言う物もあるものである。

それらを糧に日々活力にあふれる学生生活は順調に進んだ。

研究室に所属し、1年も経つ頃には様々な実験に参加する事が出来た。

新しい経験は私にとって多くの刺激と知識を与えてくれた。

私の持っていなかった物、そして私が欲していたものがすべてここにあった。

やはり努力は素晴らしい、そう思えた。

さて、3回生に入った時、私が持っても充実していた頃の話をしよう。

2年間の一般教養課程が終わり、とうとう専攻過程に入って今までの努力の成果を発揮する場がやってきた。

これまでは先輩たちの後を追い、研究に参加させてもらう事で知識を磨く期間だった。

しかし、これからは違う。

私が主導となって新しい研究を始める事が出来る。

1年間温めてきたアイディアを形にして独自の研究を進める事が出来る。

2回生の時から研究室に所属していた私はチームのエースとして期待されていた。

それは学生だけではなく教授を始めとする大学からでもあった。

1年間という大きなアドバンテージを持ち、周りより一歩先に進んでいる。

この1年間の経験は大きな差となり、先輩方を差し置き研究室のリーダーになる事が出来たのだ。

当時私の所属する研究室では超電導を用いた強力な電磁石の開発に力を入れていた。

超電導磁石と言われイメージしやすいのはリニアモーターカーであるが、一般的な物だとMRIにも使われており、小型化による恩恵が高く将来も安心な研究分野だ。

さて、ここからが本題だ。

専攻に進んだ私の実験は上手く行っていた。

「更に低温でより小型化に」と研究を続け革新的な技法を考案した。

それは眠っている時に夢に見た発想なのだが、何故か起きた時にもはっきりと覚えていた。

今までとは全く異なる技法ではあるが、なぜ誰もその発想には至らなかったのかは不思議だ。

私は早速研究室の教授や仲間たちにこの構想を話した。

夢であったにもかかわらず何故かはっきりと覚えており、研究室の皆にきちんと説明する事が出来た。

研究室の仲間たちや教授は快く協力をしてくれた。

これは天啓と思い、私は仲間たちとそれらの機構を論文にまとめ新たな技法として発表を行った。

この理論に世界は驚愕し、私たちの研究室は学内でも破格の待遇を受けた。

興味があると研究室を訪れた美人と話す事が出来てとても嬉しかったことを覚えている。

これまでの人生で女性から話しかけられることなどなかったから、あの時は大学入試を超えるほど緊張したものだ。

彼女とはその後も連絡を続けている。

ある意味人生で初の快挙かもしれない。

また、様々な機関から寄付としての研究費も集まり、画して実験装置は完成し、私たちのチームがとうとう世界に名を遺す時が来た。

チーム一丸となり結果を出す。

研究者として、一人の人間として最高の瞬間だろう。

この実験が成功し、チームが認められれば私たちはもう一つ先の世界に進む事が出来る。

研究者としての人生へ一歩踏み出す事が出来るのだ。

明るい人生と共に新たな理論としての超電導が幕を開ける筈だった。

だが、私の人生は明るい物にはならなかった。

何を間違えたのか問題が起こったのはここからだった。

システムを稼働させ数秒経つと機械上部にモヤがかかった。

メンバーの一人が電源を切ろうとしたが電源を切る事が出来ない。

私は急いで非常停止ボタンを押した。

電源装置からはビープ音がけたたましく鳴り響いたが電源は切れない。

メーターは狂ったように最大値を指し続け、銅線は赤熱化し被膜が溶けだした。

稼働時間の経過とともにモヤは泡となり、ブツブツと爆ぜ膨らみを繰り返す。

目に見えてわかる程の異常であるにも関わらず、その余りに冒涜的な光景を前に、その場にいた人間は誰も動けずに居た。

動けないというのは比喩的な表現ではなく、ねっとりと押し着けるような重い圧力を全身に感じていたのだ。

奇妙な圧迫感と共に私たちは油汗を流し、呼吸が浅くなる。

ベタベタとした気持ち悪い汗を拭おうとするも、重油の中を泳ぐように体が重く上手くぬぐう事も出来ない。

酸欠になりそうな圧迫感を感じ、意識がもうろうとした頃に、「それ」は急激に膨らみ爆ぜ成長し、2m程度の大きさになった。

「それ」は形を持った不快感だった。

見た者全てが気が狂うほどの嫌悪に襲われるであろうそれは、常に流動する何かであった。

不安を表情に出す私たちの前で「それ」は流体を流れる泡が破裂を繰り返しきめ細やかになっていく。

最終的に常に流動する光沢の有る滑らかな不定形の虹色の塊となった。

まるで虹色の水飴の様な「それ」が圧縮し人の姿になった時、「それ」と私は目が合った。

「それ」は青く澄み渡った美しい目をしていた。

恥ずかしながら私はそれを美しいと感じてしまった。

瞬間、強い光を感じ私の目の前は真っ白になった。

日曜までに更新したいです

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