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異界神記  作者: さばみそ
死者蘇生
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依頼

調査依頼の手紙が届いた。神絡みでトラブルがあると。こうして手紙が届くことがある。神への正しい願い方、最近はその噂が広まっているおかげで、実はトラブル自体はそれほど多くはない。

「意外っす。もっと頻繁に来るのかと思ってたんで」

実際、彼が来てから今まで、神のトラブルでの依頼は一件もなかったのだ。

「触らぬ神に、というやつだね。変な願いで祟りが起こることを恐れている。もしくは、神の居場所がわからない、神自体が失われた、ということもある」

「神様がいなくなるんすか!?」

三日月が驚いて大きな声を出す。

「そうだね。神といえども力を使いすぎれば、ね」

くだんの天変地異の後、復興のために神に願った者は多かっただろう。しかし、世界の現状を見れば、その願いのほとんどは叶わなかった、もしくはより酷い結果になってしまったのだろう。


今回の依頼の主は、町から南西にある東雲しののめという隣町の町長からだ。隣といっても数キロ先。だが、この町よりも大きく二階の窓からも町の全容を確認出来る。電車が通っているので今までで一番楽な旅路だ。電車はもはやこの路線しかなく、数台しか残っていないそうだ。エネルギー節約が叫ばれる昨今、贅沢な旅である。車内で三日月が持たせてくれた弁当を食べる。その旨さに元気が出るが、再び依頼の手紙に目を通すと溜め息が出る。


「神に願い、死者を蘇生させた者がいる可能性有り。至急、調査願う」


命の道理をねじ曲げる行為。自分の過去を思い出して胸が苦しくなる。水を張ったばかりの田んぼに反射した太陽の光が目に刺さる。行楽日和の天気にはしゃぐ家族連れ。不謹慎なことまで頭に思い浮かぶ。よこしまな考えを、頭を振って払い捨てる。よくよく考えると、この数日間の三日月の存在は自分の心にとって、実に有難いものだったのだと思う。呆れる程の明るさと前向きさ。実際に呆れることも多かったが、不快さはなく、むしろ見ていて気持ちがよいとさえ思っていたと気づく。

(彼には感謝しないとですね。しゃくなので、心の中でこっそりと。まぁ、お土産くらいは買って行きましょうか)

帰りを待つ家族を思い、胸の奥の苦しみを忘れようとするのであった。警笛が鳴り響く。間も無く到着する。

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