魔術師の遺産(5/5)
シチューは旨かったか?
そうか、良かった。
それから俺たちがどうなったかって?
俺とカールは、冒険者を続けたさ。お互い別の面子と組むことも多かったが、あいつが一番呼吸が合ったな。今は引退して、故郷の村に帰ったと聞いたよ。
アリウスは、重傷を負ってはいたけど、すぐに傷も癒えたさ。若かったしな。
あいつは有言実行、冒険者を引退して、禁断の塔を引き継いだ。
村人たちは文句たらたらだったけど、連中が乱獲したせいでマンドラゴラは絶滅一歩手前だった。どのみち、あれを食料として食いつなげる時期はそんなに長くなかったのさ。
そのことをアリウスが説明したら、村長も納得してくれたらしい。
今は普通の村になってるという。まぁ、俺はあれから行ったことはないんだけどな。全部、アリウスからの手紙で知ったことさ。
マンドラゴラの栽培は、なんとか軌道に乗ったとさ。
俺は、冒険者家業の末に、膝に矢を受けてな。
ちょうど、この飯屋の前の主人が引退したいって言ってたんで、貯めた金で建物ごと買い取らせてもらった。今は俺がここの主だ。
俺の特製シチューは冒険者どもには好評さ。近頃はペタの街の名物になってる。他の街から流れてきた冒険者たちも、ここには必ず立ち寄って食っていくんだぜ。
なに? 見たことのない野菜が入ってた?
ああ、それはカブだよ。ただのカブ。味も滋養も素晴らしいんだ。
えっ? カブの歯ざわりと違う、だって?
おいおい、何を言ってるんだ。
カブじゃなかったとしたら、一体、何を食べさせられたっていうんだ?
お疲れ様でした。
あなたの人生を20分ほど無駄にさせていただきました。
犬に噛まれたと思って許してください。




