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私=イリーサ

私がこの部屋にきてから、いえ、イリーサと呼ばれるようになってから、8日目。

背中や腕の痛みが引いてきた、まだ捻りは出来ないが動かすぐらいは、出来る、痛いけど。口の中も随分良くなり、流動食のようなものをリリアンに食べさせてもらってる。

じつは、昨日あたりから掠れるが声が出る。

しかしまだ言うのが怖い。やはりこの世界の知識もないし、実際に元に戻れる保証もない時どうすべきか?


私の今後の行き先にも不安がある。

『保護施設的なところに行けばいいかしら?こういう世界って修道院?って以前ダニエルさんが、言っていたはずだ』

などと先行きを考えていたところ、イケ外人ことダニエル父がやってきた。

凄く複雑な顔をしている。

「そのイリーサ、君は、記憶喪失になって気性というか気質まで変わって全くの別人のようになってしまった。家族の思い出もなくなった事に私は、勝手にショックを受けた。拒否しようとした。でも見た目は、イリーサだ。医者とも相談したが戻る可能性もあるそうだ。すまなかったイリーサ、君が一番つらいのに。君は、どんな姿になろうが娘であることに変わらない。君にとって残念だがリチャード王子との婚約は無くなったし、領地で大人しく過ごすのは、どうだろう?イリーサ以前は、つまらないと言っていたが、自然に触れてのんびりすることで思いだすかもしれない。実は怪我がなかったら、修道院に行ってもらう予定だった。あちらで父や母、君にとってはお爺様、お婆様と暮らしなさい」

と神妙な顔で言った。


私にとっては、このダニエルさんの話は、渡に船だ。なんと衣食住が保証される話だからだ。罪悪感はある。娘だと信じている者が中は、全く赤の他人なのだから。しかし放り出されるわけにはいかない。

大きく頷く。そして掠れる声で

「あり、が、とう、ござい、ます」

と言った。

凄く驚くダニエルさんとリリアンと執事。

『あ、やちゃったかな、ダニエルさんの娘っぽく振る舞うべきだった?』

きっとイリーサは、挨拶とか御礼とかする令嬢じゃなかったんだろう。私は、察しのいい方の人間では、なかったと思う。しかし、ここに来てから、随分と人の表情を見るようになった。暇という事もあるが。

ダニエルさんが、辛そうな顔をして部屋から出て行き、私は、少しイリーサに寄せるべきかと考えていた。

それがいけないかったのか、頭の中で繰り返していたはずの音楽が私の曲が突然止まった。

日が暮れても思い出せない。

まるで、この人生と引き換えに私は、自分の音楽を失ったようだ。ここに来て自分の名前も自分の事も思い出せないのに涙は出なかった。泣くものかと睨みつけていた。

最後の最高の思い出まで消えていく。頭の中で繰り返していた音が消えていった。


『私が消えるの?』


涙が出て止まらない。

『なんてことなんだ、イリーサになろうと思ったから、衣食住を願ったからこうなったのだろうか?ならいらないだから、私の音を返して』

涙と声が漏れ始めて嗚咽になる。

慌てて入ってきたリリアンが驚き、

「お嬢様どうされましたか?お嬢様」

と耳元で言う。

『何故こんな』

誰に言ったらいいかわからない気持ちをただ布団の中で泣いた。たぶん今までの人生の中で一番だと思う。

ギャーギャー泣くものだから、ダニエルさんも医者も来てしまい。私は、薬を飲まされた。きっと精神安定剤のようなものだろう。

次第に眠くなり気付けば瞼が重く開けれない。ダニエルさんに何か言われた気がしたが、もう意識はなかった。


「ルイ、君はこの娘を赤の他人だと言ったが、やっぱりこの娘は、イリーサだよ。マリーが亡くなった時もこんな風に泣いていた。やっぱりイリーサだ。そうだろリリアン?」


「はい、旦那様。この泣き方は、お嬢様です」

と辛そうに言うリリアン。


眠っているお嬢様を見た。この二人は、リチャード王子との婚約者候補から外された事を泣いていると思っているが、本当にそうだろうか?王子が帰った直後ならわかるが、大分経ってから泣くだろうか?

やはり、イリーサ様だとは思えないが、記憶喪失という点も怪しいが、アリーナ医師の幼児逆行などあると言う。中身だけが変わるなどありえるのか?世にも無い話を信じるものはいない。

「はい、旦那様申し訳ございません。記憶がなくなって気性気質なども変わることはあるのですね。私も疑り深くなり申し訳ありませんでした」

と旦那様には、反省した風で伝えたが、疑うことには変わりない。調べるつもりだ。どこかの文献で魔法による入れ替わりという禁書を目にしたことがあったからだ。

「しかし魔法などないし」

と呟いたのをしっかりリリアンに聞かれ、後でとても怒られてしまった。

しかし、人の良い旦那様の足を引っ張てばかりいる娘イリーサに、注意は、必要だと考えている。俺は、このイリーサお嬢様が嫌いだ。この家の役に立つことはないと思っている。

だからこそ、修道院行きを進言したが、旦那様は、こんな怪我までしているのに可哀想だと取りやめてしまった。領主館で大旦那様と大奥様の元なので、今と同じ甘やかされるのではないかと考えてる。

「唯一、ジョッセル様がいるが、まぁ、領地から出ないようにすれば良いことか」

とルイッセンは、呟いた。





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