友好の歌
「その代わり、うさぎ様と亀様押さえておいて下さい、山百合の場所を案内してくれるかもしれない。では、村の者に歌わせましょう」
木の鍵盤のようなものと歌い手さんが来た。木の跳ね返る音にこれから始まるワクワク感が止まらない。明るく楽しい競走の歌。縄張り争いが始まって、どんぐりを並べて数を競う。亀は、数多くの亀で協力して甲羅から甲羅へどんぐりを転がして運ぶ。うさぎはピョーンと飛び、行ったり来たりの大忙し。途中の休憩場所の亀池は、赤紫に咲く蓮の花と真っ白な山百合の花の場所、亀とうさぎは、お互いに花を交換して友達だ。仲良くなったうさぎと亀は、一緒に山を走っているという歌。
「だからフラニカ共和国では、花を交換することが友好の証なんだな。この国にくるといつも花を交換していたからな」
「そうなんですね、と、ちょっとだけ失礼します」
と言って席を立つ。
木の鍵盤のようなものを見せてもらう。
見せてもらうとそれは、美しい木の配列。
「これは何という楽器ですか?」
「木響です。この棒で木響を順に叩いていくと音階になるんです」
「少し試させて貰っても良いですか?」
「はい、どうぞ」
「ここからドが始まるのね。やっぱり何度も弾いている星の歌を弾かせてもらうわ」
跳ねるような音に子守唄は、合わないがこの木霊の音は、心地よい。
「この木響は、元気な歌はもちろん合いますが、ゆったりとした曲も木霊が響いて味のある曲になるわ。ちゃんと音階があるからメインをはれるし音の響きが残るから情緒が生まれるのかも」
流れるようには弾けないが、子供の演奏みたいに可愛いものになった。
「ふふっ楽しいわ」
とはしゃいでいる姿をレオルド王子に見られてしまった。なんとも恥ずかしい。
「ありがとうございます」
「お上手でしたよ」
と村の方が言ってくれたが、
「いや、とんでもない」
演奏をしてくれた方に比べて全然なのは、わかっているのでこれも恥ずかしい。レオルド王子がいつの間にか、うさぎを放していた。
「レオルド王子、うさぎが」
と声をかけた時には、もう遅い、ピョーンと部屋から、次に家から飛び出した。
呆然としている村人達を、他所にレオルド王子に
「追いかけますよ」
と声をかけた。レオルド王子から
「レオでいいと言っただろ」
とこんな時にと驚きながらも、ぶつぶつ何やら一人言のようだ。
チラッと振り返るうさぎに、
「俺達が着いてきてるか確認しているようだ」
「は、はい、レオ様」
と言った私は真っ赤になったかもしれない、ドッドッドッと鼓動が早くなったのは、走っているから?なんだか猛烈に恥ずかしいから、もう呼ぶのは、やめたいわ。
真っ直ぐに走っている私の横でレオルド王子もまた耳まで真っ赤に片手で顔を隠して走っていた。
『なんだよ、呼んでいいとは、言ったが不意打ち過ぎるだろう。準備もしてなかったから、焦るじゃないか。なんて返すべきか。呼んでくれてありがとうなんておかしいよな。どうしよ、イリーサが可愛い過ぎる、一生懸命に木響を叩いているのも、可愛いかった、そのせいで、うさぎを放したなんて言えないし。ルーフとハイリにアドバイスもらわないと会話が出来ない』
亀は、イリーサのスカートに貼り付き、ジッと王子を見て、すぐにプイっとスカートに顔をつけた。
うさぎに案内された?場所は、少し森が崩れていた。
「これは危ないな。地滑りが起きている」
「確かに木がミシッミシッって泣いているみたいですね」
まだらに生えてる木が元気がない。随分切り株の多さが目立つ。村長に、
「植林は、しているのですか?」
と聞くと、ここは、国の公共作業場で木材を大量に切って何処かに運んでいるとのこと、レオ様が考えこんでいるので、黙ってその場を離れる。よその国の林業に口出す話でもない。ただ木響が作れなくなるのは、嫌だなとは思う。
うさぎが草むらに隠れたと思ったが、その場を見てみるといない。辺りを見ると岩陰がある。白い耳が見えた気がして近づくとそれは、一本の凛とした山百合。辺りには、他は、見えない。真っ白ななにも混ざりのない白の美しさに目を奪われていると、隣に立つ王子。
「美しいな」
「はい」
「周りに生えてない、最後の一本か?伝え歌のような亀池は無いし、蓮の花もないな」
「もしかしてあのうさぎさん、最後の山百合を地滑りする場所から移して欲しかったのかしら?」
「えっ、まさか」
二人で顔を合わせる、さっきまで緊張していたのが嘘のように笑った。村長を呼んだら、
「これだ」
と大喜びした。
「村長さん、山百合とても美しいですね。これを品評会に出されるのですか?」
と聞くと
「いえ、こちらは、まだ小さい。大きく育てたい」
と言った。すぐに山百合の植え替え作業が村人で行われた。
しかしこれからが大変だ。最後の一本を守り増やしていく任命をうさぎさんにされたんだから。ってレオ様に言ったら、笑って、
「確かにその方が夢があるな」
と言った。気づいたら、うさぎはいなくなってた。野生なので留まる理由はない。いつのまにかラックがスカートにくっついていたのでポシェットに入れ、どうしようかと見ると、レオ様と目があった。
「君は、いやイリーサは、不思議だ。何かに呼ばれている気がするし、風も操っている気がする」
と言われた。
『どうしよう』
黙っているとレオ様が、
「ごめん、何か一瞬でいろんな事があり過ぎて変なこと口走った、フラニカ共和国に地滑りの事も報告しなければいけないし、とりあえず、連絡を取る為に町に行くか」
と言った。
「では、ヨットは、片付けていかなければ」
と言い、先程の場所に行くと、地面に着地していたヨットが岩陰に倒れていた。誰かが動かしたかと二人で心配したが、近くに人はいない。二人で倒れたヨットを起こすとまるでそれが合図のように風が吹いた。この風は、澄んでいて、冷たい湖の水のように流れている。この風を私は知っている。風が乗れと言うように私達の周りを煽る。
「レオ様乗って、風が吹いている」
と言いレオルドの手を引く。
レオルドは、驚きと何が起こっているのか理解するまで静止していた。




