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兄夫妻が領地に戻って行った。ネリー義姉様が、小さい身体で本を何冊も運ぶ姿が可愛らしかった。大きく手を振るネリー義姉様に優しく肩を抱く兄に夫婦ってあんな感じなのねとリリアンと理想を語った。


また、登城しなければならない。ダニエル父から、聞いた話だと、滝裏の道が途中壁が崩れていて進めなくなったそう。だから、龍の像も祭壇も見つからなかった。知っている、いえ、見たのは私とリリアンだけ。夢物語になると思うとダニエル父が言う。

「でも私は、信じているよ、イリーサ」

とウインクする、イケ外人。

「お父様、新しい方を迎えなくて良いのですか?」

「私は、マリー一筋さ」

と言う。最近、父の縁談話が多いのだ。悪名高い私ではなく、リチャード王子とも切れた我が家は、中立派や温厚派には、引き入れたい駒だとルイ(自称事情通)が言っていた。

「本来は、お嬢様がそういった橋渡しをする役目なんですよ。ご自分の悪名の高さに驚きましたか?まず反省、そしてイメージアップをはからなければなりません」

と鼻高々で話す執事。

「私は、フェスティバルを開くのよ」

と言うと、

「は?」

と驚いた顔をルイはした。

「あれ、言ってなかったっけ?水龍の信託が降りたと言っていいわね。雨が降ったの、そこで私は、歓喜を見て感じた。私の目標は、それを村だけでなく、雨とか関係なく音楽で現したい。みんなが喜び歌い踊る、それが、フェスティバルよ」

と言うと、リリアンが

「お嬢様、また口元がだらしないですよ。扇子で隠して下さい。興奮されると令嬢らしからぬお姿になるのが困ったものです」

と、ちゃんとしたメイドのリリアンは、言った。また唾を飛ばしていたのね。さすがにそれは、令嬢云々ではなくて恥ずかしいわね。

「リリアン、知っているのか?そのフェスティバルのこと」

「もちろんです。私は、常にお嬢様とご一緒におりましたから、村のみなさんが雨が降ったことに感謝しているのに、お嬢様は、雨に感謝なんてしない、村人の歓喜する様を見れた事を水龍様に感謝したんですもの。それに水龍様の信託ならやるべきことだと思います」

「ピチャ」水が跳ねる音、これは亀のラックの仕業だ。あれから私の部屋で飼っている。

「どうなっているんだ?」

と頭を抱えるルイを横目に、本日登城のドレスを選ぶ。


高い位置に結ってもらった髪型は、最近と言ってもコルトの町からだか、お気に入りだ。少し吊り目になるが、私の捩りが私から見えないのがいい。

青色ドレスを身にまとい、いざ王宮です。

「お父様、なんの御用件でしょうね?もうコロイド領の出来事は、話しましたし、あと残すは、ネックレスのみ、でも持っていて何も今のところありませんし」

と言うと、ダニエル父は、

「私はね、リリアンの言った龍に乗ったって説を信じているよ。水龍様の加護とも言うのかな。もう水龍の祭壇にも辿り着く事は出来ないし、リリアンの言う通り、イリーサには、何かやるべき事があるのだと思う。だから少し身を流されるままにしてみたらどうだい。きっと水龍様が連れて行ってくれるよ」

「なんか素敵ね。水龍様に流されていくなんて、浪漫を感じるわ。えぇ、風に乗った時も身を委ねたら地面に着いたわ。私、流されます」


王様との謁見は、王太子様もいらして、またアクアティル王国のハイリッヒ様も通路の脇にいた。

「失礼します。ダニエル・ダルリルの娘イリーサでございます。本日登城しました」

と礼をする。横から吹き出す声がしたが気にしない。

「どのような御用件でしょうか?」

「それがアクアティル王国からイリーサ嬢のピアノに深く興味があるので、王国に演奏会に来てくれないか?という誘いだな、ハイリッヒ?」

「はい、コルトの町で聴いたイリーサ嬢のピアノと我が国の管弦楽団を合わせた演奏を王妃様が所望でして、いきなり合わせるのは、面白くないので少し前に来て頂き、共に練習して、演奏会を開いて欲しいという願いです」

ダニエル父と顔を見合わせた。これが、水龍様の流れに任せるということ?

「もちろん、お預かりするわけですし、滞在費や演奏にかかる費用は、全てこちらで、持ちます。いかがですか、イリーサ嬢?」

とハイリッヒ様がいうと、レヒト王太子様が

「何故イリーサ嬢を囲うように動いているんだい、アクアティルは?」

「囲うとはどのような、まだ何もないですよ。野暮な話は、やめてください」

王太子様と王様は、ふぅ〜と息を吐いて、私に聞いた。だから私は、

「ピアノの勉強をしたいです。管弦楽団とも演奏会をしてみたいです」

と言った。

「まぁ、リチャードとは、婚約者候補でもないし、拘束するものは何も無い。息子が迷惑をかけた詫びもある。イリーサ嬢の好きにしなさい」

と王様が言った。


こうして私のアクアティル王国の演奏会行きは、決まった。何故か帰りの馬車にハイリッヒ様が乗っていた。






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