カルビニア王国に到着
何回か休憩は取ったが、昼飯をもらったことで国境近くの町に一泊する予定をやめて、ジェフリー様の領地メル領に入ることになった。メル領もアクアティル王国そしてもう一つフラニカ共和国と領境を持つ。国軍の隊長としてだけでなく、メル領も守る、優秀な武人だとダニエル父が言った。
そんな優秀な方を迎えに来させる私は、何者?になってしまう。
メル領に着いた頃は、夜になっていた。領主の館に泊めてもらい、旅の疲れを癒す。
「あ、そう言えば、踏み台棒忘れた」
と言うと、サッとリリアンが差し出した。コルトの町から荷物を積んでくれたのね。
「ありがとう、リリアン。私、お別れの挨拶ばかり考えていたわ、すっかり荷物忘れていたわ」
「はい、そうですね。お嬢様。水龍様のネックレスが外れなくて本当に良かった。お嬢様ならどこに置いていくかわかりません」
と言った。
「ネックレスってリリアン、水龍様のネックレス頂いてから、私、自分の楽しい事、好きな事やっているだけなのに、よく感謝される事増えてない?不思議なのよね。悪役令嬢みたいなこと言われてたけど実は、巫女様になったから。自分勝手も巫女様目線で感謝されるのかしら?」
と言うと、リリアンは深い溜息をついて、
「調子に乗ると大変な目に遭いますよ」
と予知、予言とも言える一言を残して部屋から出た。
翌朝、ダニエル父から私達一行は、ダルリル領ではなく、王都に戻ると告げられた。
まさか、リリアンの予言か、とリリアンを見ると手を振っていた。
あんなに旅立ちの会まで開いたのに、領地にもたどり着かないで戻るタウンハウスに少々恥ずかしい。この十日近くの冒険は、ただ周りを騒がせただけのようなものだろう。
「王宮に事情説明だの大きな事になりました」
と呟く。するとジェフリー様が、
「水龍のネックレスはどうする?」
と言った。ダニエル父が、
「この話をして過激派が、コロイド領からアクアティル王国を攻める為に利用しようなんて考えを持たれるのが一番怖い。過激派は、リチャード王子派だ。彼処とはもう関わりたくない。」
と言うと、ジェフリー様は、
「気持ちはわかるが、説明でバレるだろう。ネックレスだけ伏せよう。調べに行くと思うから水龍の祭壇までは、いい。あとはやはり、風に乗ったと正直に言えばいい。見に行って馬鹿を見ればいい、戦なんて馬鹿な事言えなくなるだろう」
王宮に行くのが憂鬱になる、戦なんて過激すぎる。リチャード王子を思い出した。確かにあいつは、過激派かもしれない。婚約者候補者が争っているのを楽しむなんて、二度と会いたくない奴だ。心配もされなかったし。細心の注意を払わなくてはいけない。
今回、コロイド領は、素通りする予定だったがさすがに、ルイを置いていくのは、忍びないと一泊するのは、ルイかいる宿場町になった。
ルイに会うのが久しぶりに感じる。少しドキドキするわね。なんて話していましたリリアンと、ルイの第一声が、
「隠れろと言いましたが逃げろなんて私言いましたか?お嬢様、まさか隣国まで逃げるなんてありえない。馬鹿ですか?貴方様は」
怒りの執事モードになってる。逃げろって言われた気がするけど黙っている。ダニエル父は、ルイに休んでていいと言ったが、私の踏み台棒があることを知ると自ら私も行きます、と有無も言わせず馬車に乗り、王都に戻ることになった。
王都のタウンハウスに戻ると庭師のアレクを先頭に働いてくれているみんなの出迎えを受けた。出戻りみたいで恥ずかしかったが、みんなが心配してくれていて、温かい気持ちになる。
「みんなありがとう」
と言って手を振る。何かに似ている。
今日は、こちらでゆっくり出来る。めまぐるしい毎日を駆け抜けてきた気がする。窓の外から見る景色が少し離れただけで、変わった?窓に石?葉っぱ?が張り付いている。何これ、リリアンを呼んで、掃除を、動いた?黒茶色の何かが動いた?ジッと見る。動かない。入ってはこれない。窓は開けてないのだから。
「リリアン…動いた、…リリアン?」
「なんですか?お嬢様」
「窓を見て、気持ち悪いの、動くの」
「葉っぱですか?掃除してなかったんですかね」
ガチャ、スサササ。
「うわー、動きました。なんか黒物体。いやだ〜アレクさん呼んで来ます。お嬢様も部屋から出て」
スサササスサササ、私のスカートにくっついた。
「うわぁ」
「お嬢様から離れろ」
とリリアンがスカートをはたく。
ん、泣き声?
「リリアン待って」
その黒物体を手に取る。
「お嬢様、いけません」
石のように固い殻を持った何か臭うその黒物体は、温かかった。
「桶に水を持ってきて、リリアン」
ゆっくり水で洗い流すと緑色した掌サイズの亀でした。騒いで亀だったか、とリリアンと笑った。
さすがに今日は、ピアノは、夕食後に数曲だけ弾いて、寝る。やっぱり自分のベッドが一番であっと言う間に瞼は、閉じた。
こんな穏やかな夜を過ごしたのは、いつぶり?
「お嬢様、起きてください、今日は、王宮に行かなければいけません。早く準備をしなければ、恥をかくのはお嬢様ですよ」
「リリアン、もう少しだけ寝かして」
「駄目です」
「バコーン」
「痛い」
「お嬢様、ダラダラしない、はやく顔を洗ってしゃんとして下さい」
鬼の形相のルイが冊子のようなもので頭を叩いた。
「酷いわ、ルイ、私、水龍の巫女様よ。呪い殺されるかもよ」
「リリアンからも確かに聞きましたが、信じられません。私は、自分の目で見たものを信じますから、そのネックレスを突き出すように見せられても、龍の鱗とは、信じられません」
「全く、ルイは、信じられない病にかかったのね。何回同じ事言ってんだか」
「顔を洗いなさい、お嬢様」
全くぷりぷりして過激派がここにもいるわ。
ダニエル父と王宮に行く馬車で、
「一件別件が入ったけど、案内された場所で待ってるんだよ。ルイも絶対行くと聞かないから馬車に乗せたけど、二人とも騒ぎを起こさないようにね」
「大丈夫です旦那様」
「わかりました。お父様」
ザお城、高い塔の上部分が下から見て見えない。少しばかりキョロキョロしていると、踏み台棒で突く執事。
「わかりました」
と一言言うと、前から、口元を扇子で隠して近づく令嬢が二人。まるで獲物を見つけた目をしている。会いたくない人達だ、絶対に。記憶がなくても顔つきでわかる元婚約者候補の人達だ。




