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近衛騎士 ハイリッヒ

起きるとすぐにピアノを弾きにいきたい。

目覚めると同時に下の階に行こうとしたら、リリアンに肩を掴まれた。

「顔を洗いましょう、お嬢様。身だしなみ」

少し怒ってるリリアンの方にゆっくり、振り返る。引き攣る笑顔が怖い。

髪を今日は、ハーフアップにして、動きやすい。

さ、いくぞと下の食堂では、宿泊者が朝食を食べてる。またいい匂いがして、私達も先に朝食を頂く。昨日の鶏肉のトマト煮も良かったけど朝の豆と野菜のスープも優しい味で最高。ここの宿、嬉しいのがなんと白いパンで柔らかい。はぁ、これがタダになるのよ。幸せ。

リリアンが咳払いをする。スプーンを口に入れたまま、呆けてしまった。令嬢にあるまじき姿、と怒られるといない筈のルイを探した。リリアンが、

「ルイさん達大丈夫ですかね?」

と心配していた。

「大丈夫よ、ジェフリー様だっていたんだから」

「はい」

食べたら、ピアノを借りてと思うと、私の手をとるリリアン。

「お嬢様、この町の警務隊に事情を話し保護をしてもらう事。少し町の見学をしますよ。水龍様の導きの可能性がありますから」

「え〜、リリアン一人でいったら?」

と言うと、リリアンの眉と目が一気に吊り上がる。あ、っと言う前に部屋に連れて行かれた。

そこからお説教が1時間以上に及んだ。

カラクリ時計が有名な国だから、この国に入ってリリアンのどこかにスイッチがあるのではないかと疑ったら、更にお説教が長引いてしまった。余計なこと言わなければ良かった。


まず町の警務隊の建物を尋ねた。

少し古びた建物に8人ぐらいの大柄な男性達と一人だけもっと高級な生地の服を着た細身の男性がいた。

リリアンが

「すみません」

と声を掛けて、話し始めた。私達が隣の国カルビニア王国の人間で手紙を出したのでいずれは、迎えにくるが、出来れば保護していただきたい、少しお金を借りたいことをリリアンは伝える。難しい顔した細身の男性は、私に名乗るよう促す。

「ご挨拶遅れまして申し訳ございません、私、イリーサ・ダルリルと申します。先程メイドが言いました通り、ダルリル領に向かう途中盗賊に襲われて、コロイド領の滝裏から続く道を歩き、水龍の村に着きました」

「そもそも何で狙われた?」

リリアンを見て、首を横に振るリリアンに手で静止してから話す。狙われるような怪しい奴を保護は出来ないよな、と思う。

「私、カルビニア王国のリチャード王子の五人の婚約者候補の一人だったんですが、令嬢同士の争いが激しくなりまして。私、階段から他の令嬢に突き落とされました。それが発端となりまして、五人の候補者全員破棄されました。コロイド領のイザベル様も一人で、大変我が家を恨んで」

話しの途中なのに、ゲラゲラ笑う男。とうとう指まで差してゲラゲラゲラゲラ笑う。

気分が悪くなるわね、さすがに。

「あのですね」

と言うと、

「いくら婚約者争いって言っても命に関わるのは犯罪だろう。裁判とかは?」

「喧嘩両成敗みたいな感じですかね?」

「じゃあ、貴女のやられ損じゃないか?」

「いやぁ〜、そんなことはないようで、私、過去の記憶が今ないのです。でも話を聞く限り中々の悪役令嬢だったようで殴り合いやドレスの破きあい、陰口、やってたみたいですね」

リリアンが咳払いしてる、この男性また笑ってる。

「とにかく、お金が尽きましたら貸してください。必ず返しますから、お願いしますよ。全くいつまで笑ってるのかしら。笑い上戸すぎよ」

ぷりぷり怒り始めた私に、

「宿は、どちらですか?」

すかさず、リリアンが、 

「クルトン亭です」

と言う。男は、頷き、私達は警務隊の建物を、後にする。


一方、この警務隊の中で、一人違う制服を着ている男は、まだ笑っていた。

「カルビニア王国ね。コロイド領とコルトの町は、確かに山を挟んで隣だが、女性二人で山越えしたとは思えない。どうやってこの国入ってきた?イリーサ・ダルリルね。調べる必要があるね」

と笑いながら言っている男、アクアティル王国の近衛騎士だった。

「ハイリッヒ様、クルトン亭見張りますか?」

「保護を求めてきているしね、お金もないみたいだし、巡回でいいよ」

と笑顔で言う。それよりも女性二人で簡単に国に入って来れてしまう事の方が問題だ。軍で攻める道が出来てる?協定を結んでいるからっていつ戦争が起こるかなんてわからない。

「すぐ王子に報告だな」


「最悪だったわね、リリアン」

「私は、話さない方がいいと合図したはずですが、お嬢様」

「そうね、私の判断ミスかな、でも正直に言わないと信用されないでしょう。お金借りないと私達宿無しになっちゃうわ」

「そうでしょうけどですよ。令嬢として悪い噂がますます立ち上りどこにも嫁入り出来なかったら」

「大丈夫よ。ジェフリー様だって騎士や事務官の採用しているって。いざの時には事務官」

「またなんてことを」

「そう言えば、私って学校はどうしてたの?」

「学園ですか?お嬢様は、そもそもあまり通ってないので、大怪我の際お辞めになったかと思います。領地に行くっていうのもありますが」

学校通ってなかったのイリーサ、事務官も怪しいかも。学校退学か、ロックかも。

と一人ニタニタしていると、リリアンから

「顔にしまりがありません。ちゃんとして下さい。他所の国ですよ。名前まで教えているんですから、どんな風に噂が広がるか、隣の国にまで恥を曝け出しては駄目です」


そうかもしれないが、再び会う人じゃないから、そこまで気にする必要はないと思うイリーサだった。





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