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領地に向けて出発

朝が来た。日が昇る前に旅立ちです。

何が起きるかで時刻が読めないから。

やはり野宿はかなり危険らしい。それを避けるためにも早めの出発です。

こちらの移動手段は馬車です。

なんか想像以上に不安がある。ダニエル父めちゃくちゃ笑っているけど、あなた乗らないから。

安心点も一つ、昨日のジェフリーさん、いやジェフリー伯爵様は、国軍で隊長を務めるほど優秀な武人で、途中まで護衛として行動を共にしてくれる。

きっとダニエル父が頼んでくれたのだろう。心強い味方だ。


出発組、私、ルイ、リリアンが並ぶ。朝早くから昨日騒いだみんなが、見送りに並んでいる。イリーサになって記憶も思い出もない私に声を掛けてくれる。

「ご無事に領地に着くように」

「早くお怪我が治りますように」

みんな様々な声を掛けてくれた。だから私は、それに答える。満面な笑顔をつくって元気よく

「行ってきます」

と伝えた。感謝の気持ちは、昨日の演奏で伝えたと思っているから。シンプルに

「みんな、お元気で」

馬車は走る。ガタゴトガタゴト

かなりゆっくりしたペースで、ガタゴト響くリズムが意外に規則正しくて御者が私達に考慮してくれているのだなぁと感じた。

私の様子を見て、ジェフリー伯爵様が

「イリーサ嬢、どうかしたか?」

と聞かれ、先程思ったことを話す。

「ガタゴト響くリズムが一定で私達を考慮してくれているのかなと思いまして」

ジェフリー伯爵様が言う。

「噂と全然違うじゃないか。驚いた、昨日の演奏も驚いたが深く考える御令嬢じゃないか」


『これって褒められてる?』


ここで執事のルイがしっかり否定する。

「ジェフリー伯爵様誤解なさらないでください。お嬢様は、ガタゴトのリズムが一定と申しましたとおり、リズム、音しか考えていないのです。ましてや人の気持ちなど考えるわけありません」

「ルイ、失礼ね。リズムを考えていたのは認めるわ。でもわざわざ否定しなくてもいいでしょう」

「そう言うとこです。深窓の令嬢というのは、決して出しゃ張らない。そう言う令嬢に良縁が舞い込むのです」

「ルイ、あなたその考え古いわ。今は、女性だって強いのよ」

というとジェフリー様が、

「その通りです。今は女性騎士の登用も積極的に行っております。よく勉強しておりますね。イリーサ嬢騎士だけでなく事務官も登用していますので考えてみて下さい」

と言われる。リリアンは、

「お嬢様凄いです」

と褒めてくれる。

『ルイよまだ主が誰だかわかって居らぬな』

勝ち誇ったように笑うと、ルイ以外みんなで笑った。


王都から出る大きな門の前で馬車が止まり、ジェフリー様が降りた。お父様が雇ってくれた護衛とここで待ち合わせていたらしく

ジェフリー様が対応してくれている。

「本来ルイの仕事でしょう。しっかりして」

と悪役令嬢ぽい台詞を言うと、すぐに

「極悪令嬢だ」

と言う。

馬車のドアが開き、護衛さん3名と挨拶を交わした。

「初めまして、イリーサ・ダルリルです。ダルリル領までよろしくお願いします」

「こちらこそ宜しくお願いします。左手から、ジョン、アーサー、そして私ソランと申します」


挨拶も終わり、馬に騎乗して三方向に対応してくれている。馬のカッポカッポのリズムもまた旅を感じる音でいい。

「また音のこと考えてる」

とルイに言われても、この可愛い音色に惹かれるのは音楽好きとしては仕方のないこと。

「イリーサ嬢順調に進めば、三日後の午後には領地に入ります。私は、三日目の朝にお別れになります」

「承知致しました」

「今から四つの領地を通過する。一番安全な道を選んでるから安心してね」

とおじさんウインクだ。うわー可愛い。

イケ外人は、何をしても許される。そうこうしているうちに、一日目の宿場町に到着した。

王都からそれほど離れていないので賑やかな町だ。ジェフリー様からここの名物は、シチューや煮込み料理と教わり、みんなでジェフリー様おすすめのレストランに行く。その途中の店を見たり、わくわくする。初めての町で、知らない世界にいる私も旅行気分になっていた。左を見たり、右を見たり、忙しい。リリアンもルイもそんな私を気にしてくれる。

「キャ、痛い」

子供の一人とリリアンがぶつかった。リリアンは、よろけたところを護衛のアーサーさんが支えた。

「気を付けて」

など言われて赤らむリリアンも可愛い。

さぁ、歩こうとすると、リリアンが、顔色をなくし

「お財布がありません」

と言う。

ジェフリー様がこの町の警務隊のところに話に言ってくださり、私達は、そのままレストランへ行く事になった。またしても、ルイに

「お嬢様が左やら右やらを見て危なかっしいから、我々も注意力が散漫になるのです。踏み台棒をまだ使っているのですから、前に集中して下さい」

と叱られた。確かになぁと言う反省があったので、

「リリアン、ごめんなさい」

と伝えたら、周りの護衛さん達が驚いていた。

「いいえ、ルイさんの言う事を気にしないで下さい。私の不注意ですし、私のお小遣いが取られただけです。気にしないで、お嬢様」

とリリアンが言った。私は、違う箇所が気になった。

『お小遣い?』

などと考えているとレストランに着いた。

とても雰囲気が良いシックなレストランで煮込み料理が美味しかった。

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