6、精霊は悪役令嬢キャラだった
今私の前には水の雫のような形のモノがフワフワ浮いている。
『何よぉ。見つめてないで早く水出して!』
ここが蛇口を捻れば水が出てくる豊富な場所であれば
もっと差し上げますよ?。ええ。
でもここは差し上げた水で全部なんですぅ〜。
更に言えば私ならその水で2週間は保ちますぅ。
ってじと目で見てやる。
『早く魔法使いなさいよぉ。そんだけ魔力あるんだから
“ウォーター”くらい使えるでしょ?』
へぇ。私の魔力ってけっこうあるんだなぁ。
どんだけあるのか知らんが、宝の持ち腐れなのだよ。
あのウィルオウィスプもどきに魔法は使えないって言われてるからね。
……いや、待てよ?“ウォーター”って言ってみるくらいタダだよね。
一丁やってみますかぁ。両手を前に出してぇ〜
「……ウォーター‼︎……」
し〜〜〜ん。…………ほらね。どうしてくれるこの空気。
魔法は使えません‼︎
『何よ使えないわねぇ。人間にとっては生活魔法の基本でしょう?
魔法使えないならその魔力を寄こしなさいよぉ』
なんだか理不尽に責められてる気がしてきた。
助けて欲しいって言ってきたのはそっちでしょうが。
なんだその上から目線での物言いは!
「見返りは?対価といいますか。…例えば主従関係を結ぶとか?」
『寝言は寝て言って頂戴。
私は精霊王様以外主とは認めないわ!
しかも貴女みたいな人間を主にしたら
他の精霊達にバカにされるじゃない』
………。精霊ってこんな悪役令嬢キャラなのか。
この分だと他にいるかもしれない精霊も
人間には傲慢な態度で接してくるのか?
うん。時間の無駄だ。改めて水探そう。無視だ無視。
今は危機的状況を脱する方法を考えねば。
こんなのに構ってる余裕はない。
無言のままクルっと振り返って梯子を登っていく。
『ちょっと待ちなさいよ!』
セリフがテンプレすぎて笑えてくる。
私の顔今絶対ニヤけてるに違いない。
ちょっとハイになってないか?私のメンタル大丈夫か?
梯子を登り切って出てきた時には、夕焼けが見えていた。
今日はもう探索しないで休める所を探そう。
振り返り付いてきた精霊に目を向けると様子がおかしい。
ぷるぷる震えている?
『何よここぉ。精霊の声が全くしないわ。
いくら人間の住む世界でも声は聞こえるはずですのに。
他の精霊達は何処に行ってしまったの?』
泣きたいのはこっちだ。
異世界がこんな状況なら[創作]なんていらんから
もっと生存率高くなるチートくれよぉ〜。
某TV番組の期間限定無人島生活でさえ
私には無理って思っていたのにぃ〜!
ここまで読んで頂きありがとうございましたm(_ _)m