5、いきなりファンタジー?
ふと、ここが異世界だったことに気がつく。
生き抜くことに気を取られすぎて、
建物の感じから異世界というよりは、
過去にタイムスリップしてしまったかのように考えていた。
忘れてたけどここが異世界なら、
自分のスキルや体力などを数値や言葉で表せるんじゃね?
っていう好奇心から少し元気になることができた。
早速良く聞くあの言葉を言ってみよう!
「ステータス‼︎」
あれ?……し〜ん。としてしまった。
何も起こらない。別の言葉か?
「鑑定!コマンド!しらべる!データ……はぁ、はぁ」
あらゆる思いつく言葉を並べてみた。
でもスキルや体力などを表すものは出ない。
「なんだよぉ。もぉ〜」
ここはファンタジーの世界ではないということか?
魔法の世界だからと言っても
自分のステータスが目で見えるわけではないらしい。
現実を突きつけられて無駄に体力消耗したわぁ。
「確か村の中に井戸があった気が……。あ。あった。あった」
いやだから独りごちてないと気力が持たないんだって。
誰に言い訳してるのかもわからないが……
常に頭の中はいろんなことをごちゃ混ぜにして考えながら
言葉にも出ている。
なんだよ自分焦っているのか冷静なのかどっちだよ。
と1人ツッコミまで入れてみたり。
井戸はあった。が、底が見えない……。
「あ。そうだ。携帯のライトで照らして見るか」
携帯の充電は………57%か。当然圏外……だよね。
早速ライトを付けて井戸の底を照らすと、
何かがキラっと反応した。何かはあるようだ。
水かどうかはわからないけど。
RPGの井戸って入ろうとした時に、モンスターが出てくるとか
逆に入って降りたらイイ拾い物ができたりとかあったなぁ。
な〜んて考えたらフラグ立っちゃうかな。
さっき現実を突きつけられたし、ここはどっちもナシでしょう。
水があるかもしれないなら調べないと。命懸けだからね。
井戸の下に行くにしても……。
梯子なんて……と内側をよく見たら付いてるわ。
暗いから携帯のライト使いつつゆっくり降りてみるか。
変なガス溜まってませんように。祈るしかない。
やっとの思いで底まで着いた。
そこは少し広くなっていて、所々に少ないが水らしきものが見える。
ちょっとだけど地下水は残っていたようだ。
私1人分の水分としてなら2週間くらいはあるかなぁ。
お茶のペットボトルがあるからそれに入れて毎日取りに来るか。
「よしっ」
意を決して水に向かおうとしたその時
『た……た…すけ………て』
後ろから声が…。背中がむず痒い。
だから私ホラーは苦手なんだってばぁ〜。
青ざめた顔でギギギっと音が鳴りそうなほど
ゆっくりと上半身だけ後ろを向く。
「え。フワフワ光ってる?」
淡い青色の直径10cmくらいのぼんやりとした球体が
私の膝のあたりの高さでフワフワ浮いているけどすごく弱々しい。
近づいて掬って話しかける。
「どうしたらいいの?」
『水…に入れて………』
水ってあの水しかないよね。
掬った手の形を崩さないようにそ〜っと水の中に入れると、
なんともそこにあった全ての水を吸い込んでいくではないか。
「えええええぇ? マジでぇ?」
がっくりと膝を付け、私のみずぅ〜と
心の中で叫びながら右手を球体に伸ばしていた。
『これっぽっちじゃ力使えないじゃない。もっと水寄こしなさいよぉ』
あぁ。いきなりファンタジー。水返せぇ〜〜〜〜〜〜〜!
ここまで読んで頂きありがとうございましたm(_ _)m