4:魔法との出会い
この世界に来て早くも1ヶ月が経った。
「よしよし。しかし、この子全然泣かないわね」
母が言う。
「明後日訪れる医者に見て貰えばいいではないか」
父が言う。
まず、今現在のところ分かっていることを整理しよう。
1:私の名はノワール。ノワール・フォン・アルカマリー。
2:私は王族であると言うこと。
3:国の名前はアルカマリー王国だそうだ。
4:母の名はセシリー・ヴァン・アルカマリー。王妃。父の名はエンダリール・ウィン・アルカマリー。アルカマリー王国第23代国王。兄の名はウリプ・リーン・アルカマリー。第一王子。
私は何より王族であったことに驚いた。何処かに連れて行かれたと思ったらそこは玉座の間で、貴族達が「第一王女殿下生誕のお祝いを申し上げに参りました」と言い出したのだ。
自我のある赤ん坊も楽ではないな。適度に泣かなければならないし、意思疎通もまともにできない。
取り敢えず当分は情報収集に勤むとしよう。
「最近はかなり寒くなってきたわね」
「そうですね。母様」
「ウリプ。暖炉に火を付けてくれる?」
「はい。母様」
え。子供にそんな危ないことさせていいの!?
しかし、マッチに火を付けて木を燃やす訳ではなかった。
「炎よ。荒れ狂う赤きものよ。燃やせ、お前の目の前に立つものを!」
そう言った瞬間。魔法陣が現れ、木に火が付いた。
まさか。この世界には魔法が存在するのか!?
良いことを知った。これからは魔法の習得と情報収集を当分の目標としよう。