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3/5

元魔王と引きこもりエルフの食卓


(さて、と……)


 飯にすると言ったものの、グインドールは調理器具も、食材も持ち歩いていない。

 聞けばプリシィも、弁当などはないらしい。

 ゲームでは空腹ステータスなどなかったのもあり、対処法が分からない。


(食えそうなモンスターを焼いたらいけるか……?)


 そう考えたグインドールは、スキル『気配探知』で近くのモンスターの位置を確認。

 狙いを絞って、重力魔法を発動する。


「重力よ、反転しろ―――ー『アンチ・グラビティ』」

「ブヒッ!?」

「ワウッ!? キャンキャン……ッ!」

「ブモォォォォォ!」


 少し離れた場所にいた猪型のワイルドボアや、犬型のヘルハウンド、牛型のマッドブルが空中へ浮上する。

 一番小さいヘルハウンドでも、体長は4メートル以上。

 レベルでいえば40近い屈強な怪物たちだったが、元魔王の魔法からは逃れられない。


「わわっ!? わぁぁーーーーー、すごいっ!」


 また強力な魔法が見れて興奮したらしく、プリシィが目を輝かせている。

 そんな中、グインドールは重力を操作して、モンスターを空中の一ヶ所へと集める。

 

「『魔炎柱』……『ビルドストーン』」


 初級の深淵魔法で、地獄の炎の柱を生み出し、モンスターたちをまとめて焼却。

 土魔法で造った石の土台に、丸焼きの魔物たちを落下させて並べる。


 所要時間10秒足らずで、調理は完了した。

 そう、完了したのだが……。

 

(……ないな)


 丸焼きのイノシシ型や犬型のモンスターが並ぶ光景は、不気味でしかない。

 内臓も取っていないし、地獄の炎じゃ火力が強すぎてムチャクチャ焦げてるし……。

 とんでもない失敗作だが、プリシィは無邪気に感心しているようだった。


「すごいです! 外の人は、こんな風に料理するんですね……!」

「……外の人? どういう意味だ?」

「この森の奥の家に、お父さんと住んでるんですけど……。わたし、家を出たことがなかったんです」

「ずっと家に引きこもってた、ってことか?」


 尋ねると、こくりとプリシィは頷いた。

 どうも世間知らずに見えるのは、外部との交流が一切なかったからか。


「外は危ないから、結界で守られてる家を出ちゃダメだって……。お父さんはそう言ってました」


 ここはマスナ樹海。

 ゲームと同じ設定なら、北海道ほどの面積がある広大な森で、多くの凶暴な魔物が住み着いている。

 ゲームで来た時も低レベルの頃は、何度か全滅したし……それなりに危険な場所だ。

 

 そういう意味では、引きこもるのは正しい判断かも知れない。

 だがそもそも、そんな危ない場所に住まなければいいし、他にも疑問がある。

 

「じゃあ今、家の外に出ているのはなんでだ?」

「お父さんが出掛けたきり、もう10日も帰ってこないんです。だから……」


 心配になって、探そうとしたというわけか。

 プリシィの話を聞きつつも、グインドールはスキルを発動する。


(『偵察眼』)


 直後、頭の中に少女のステータス表が浮かんだ。



-------


プリシィ・ケレブレス 女

種族:ハイエルフ

LV:1

HP:13/13

MP:90/90

SP:20/20

筋力:6

敏捷:10

魔力:80

魔耐:20

スキル:風魔法LV1 回復魔法LV1 魔力回復LV1

    神霊魔法LV0


-------



(……うん。死ぬわ、この子)


 家に引きこもってただけあって、レベルは当然1。

 HPもわずか13……スライムに数回体当たりされただけで終わりだ。

 結界の外に出るな、と父親が命じるのも仕方ないだろう。


 エルフだけあって魔法関係の素質は感じるし、『神霊魔法』という見覚えのないスキルもあるが……。

 この森を一人で生き延びるのは無理だ。

 ならば、グインドールがやるべきことは決まっている。


「……親御さん探し、手伝おうか?」

「え……!? いいんですか……?」

「ああ。ついでだしな」


 ここがゲームの世界であろうとも。

 眼前の少女は感情豊かで、リアルな生きている存在にしか見えない。。

 だったら、なるべく助けたい。

 ……童貞的には、可愛い女の子を助けるっていうシチュエーションにも憧れるし。


「ありがとうございます! グイドさん……悪魔でもやっぱりいい人ですっ」


 プリシィはあっさり提案を受け入れ、素直に喜んでくれた。

 こうして元社畜で元魔王のグインドールは、迷子のエルフの親探しをすることになった。

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